人が持つモノには思いが込められる
その思いが強ければ強いほど
そのモノには命が宿りやすく
僕らは引き込まれてしまう
見えるのは大きな白い家
出迎えてくれたのは可愛らしい女の子
けれどなんだか違和感がある
少女が腕を引いて案内してくれたのは自分の部屋
ピンク色で可愛く飾られているのになんだか冷たい雰囲気の部屋
ベッド脇のドレッサーの上にはメイク道具に混じって人形の首がいくつも置いてある
そのドレッサーに近づくと突然隣の部屋から鋭い音がして、少女は窓側に逃げると蹲り耳を塞いでいる
すると場面は代わり、どうやら隣の部屋に来たようだ
この部屋は真っ青で寒くてなんだか重い空気が流れている
カーテンは締め切られあちこちにあってはならない植物が育てられていた
そしてベッドに座る大人しそうな青年は静かにぼーっとしているが、突然暴れだし狂気を発して壁を叩く
物をひっくり返して何かを見つけると部屋に煙が充満し、青年は気持ちよさそうに満足して落ち着いた
いつの間にか少女に手を引かれてやって来たのはキッチンルーム
後から入ってきた母親はお酒に塗れて涙でお化粧が崩れている
ふと見えたある部屋には、女を連れ込む父親の姿があり、子どもには見せられない
けれど、少女はすべて知っているようだ
それでも写真の中の家族写真には笑顔を見せる女の子
それはなんだか哀しそうで
少女に声をかけようとすると、足音が近づいてくる音がする
女の子は慌てて部屋に戻ると最初の顔に戻ってしまった
青年も大人しくベッドに座り、母親はキッチンで座り、父親は自室で新聞を読む姿になってしまった
まさか、、ここは、、、
「ギョンス!」
「!」
呼ばれて目を覚ますと心配そうに自分を覗く今まで眠っていた愛しい人
「・・・ジョンイナ」
「おかえり、ヒョン」
そっと触れる手から伝わる暖かさに自身も腕を伸ばし青年の頬に触れる
「ジョンイナも、、おかえり」
「うん・・・ただいま」
お互いの存在を確かめるようにどちらかともなく抱きしめ合うふたり
「・・・ヒョンも、見たんだよね」
「うん・・・あそこはカイが僕らを連れてきた家だよね」
「うん・・・」
「スホヒョンが言ってたんだ。この街の人たちには僕らみんなの姿は見えなくて声も聞こえないし、触れることもできないって」
「え?俺たち幽霊なの?」
「ふふ、チャニョルと同じ事言ってる」
「・・・・嬉しくないな」
ホントに嫌そうな顔をするジョンインが余計可笑しくて笑うギョンス
「・・・よかった。ギョンスだ」
ほっと安心するジョンインの目にギョンスが眉を下げる
「"ディオ"は・・・嫌?」
「好きだよ。"ディオ"がいるから"ギョンス"がいるんだし。ただ、"俺"のときは"ギョンス"がいい。じゃないと"もうひとりの俺"が嫉妬する」
すぐにそう答えるジョンインに安心して「僕もだよ」とギョンスからジョンインに抱きつく
ギョンスから抱きついてくるなんて珍しいことでジョンインは驚くけど、腕は正直でぎゅっとギョンスを抱きしめる
「ジョンイナが寝てる時ほんとは寂しかったんだ。"カイ"が現れた時は安心したけどやっぱりどこか不安だった」
「・・・・俺たちは"それぞれ"お互いに惹かれ合う稀なケースだって前にクリスヒョンが言ってた」
「僕も前にスホヒョンから同じ事言われた」
ヒョンたちらしくてふたりで吹き出す
「こういうのをクリスヒョンならなんて言うのかな」
「あの人の事だから"運命"とでも言うんじゃないの」
「"運命"、かぁ・・・」
「そうは思ってないでしょ、ヒョン」
「うん・・・・なんていうか僕らの出会いは」
「「必然」」
ふたり重なる言葉にお互いに目線を交じわす
ひとりなのにふたりの気配がするひとり
彼らは"向こう"に近づきすぎると"もうひとりの自分"に引きずり込まれてしまう
「ジョンイナ。僕らが視ていたのは同じ?」
「うん。あの家にいる女の子を助けなきゃ」
「うん。そうだね。でも、危険すぎるよ」
「俺たちだけで行こう。みんなは連れていけない」
「・・・・・そうだね。何が起こるかわからないし、みんなは巻き込みたくない。行こう!」
どちらかともなく手を取り合い、みんなが眠っている間に教会を抜け出すふたり
けれど、彼らが視たのはほんの一部
それがわかるのは
彼らがあの家に入ってからのこと
……To be continued