あれから必死で探して、やっと見つけた。
主にボーカルレッスンで練習してる君。
もう一度声をかけたくても、緊張しちゃってなかなかできない。
俺もダンスの練習があるから長居はできなくて、いつも外から窓越しに君を見るだけで終わってしまう。
「どうしたら話しかけられるかな?」
もっと君に近づきたい。
[ Hello ] side K
「はぁ……今日も無理だった……。」
今日も窓越しで彼を眺めるだけだった。
だけど、すごい唄が上手い子だとわかった。
それに、歌うのが楽しいように見えた。
曲と歌詞を一通り目を通しただけで感情移入して歌い、聞いてる側まで同じ感情になって感動させられる。
歌い終わったときの嬉しそうな笑顔を思い出して、つい顔が緩んでしまう。
笑うとハート形みたいになる唇が印象的な笑顔。
あ~ヤバい。
ほんと、可愛すぎる!
浮かれながら休憩室に入って、何か飲もうと自販機の前に立つと、そのなかに並べられている商品のひとつに目がいく。
あ、これ。
あの時、あの子が落とした缶コーヒーだ。
俺もよく飲む缶コーヒー。
同じものが好きなのかもとなんだか嬉しくなってその缶コーヒーを選ぶ。
ガコン
取り出して振り返ると、目に前に大きな目玉がふたつ、俺をじっと見ていて驚いて後ろに後ずさった。
吃驚し過ぎて声も出なくて、反射的に体を強張らせた。
その俺に吃驚してる彼は大きな瞳を更に見開いて、慌てて俺に謝った。
「ごめんなさい!驚かすつもりじゃ……。」
「あ、イヤ。大丈夫。」
ほんとは心臓が口から飛び出してくるんじゃないかってくらいの勢いで吃驚したから、心臓が痛いけど。
俺はただ浮かれすぎてて後ろに人が居ることに気づけなくて驚いたわけじゃない。
「ほんとに、ごめんなさい。」
考えていた君が俺の目の前に居ることに驚いたんだ。
夢でも見てるみたいだ。
ほんとに、現実?
なんで君がここに居るの?
「あ。それ、」
俺が持っている缶コーヒーに気づいた彼はそれを指差して微笑んだ。
「ああ。好きなんだ。」
「そうなの?僕もだよ。」
そう満面な笑顔を向ける彼に心臓が羽上がる。
教会の鐘が頭のなかで鳴り響く。
その笑顔は反則でしょ?
どうしてこんなに可愛いんだろ?
「ねぇ!名前、なんて言うの?俺はキム ジョンイン。」
「僕はド ギョンス。」
ギョンス。
頭が何度もリピートする。
首を傾げて笑うかけてくれる君の笑顔が離れなくて、話ができた嬉しさで、その日の夜はなかなか眠れなかった。