遠くで俺を見る君。
何を気にしているのか。
話したいならこっちに来てよ。
もう、俺は我慢の限界なんだ。
side C
今日も横目で何度も俺を見るベク。
決心したようにこっちに一歩踏み出すと、タイミング悪くベクよりも先にメンバーとかが話しかけて、結局諦めてしまう。
ここ数日はその繰り返し。
俺から近づこうとすると、ベクは体を強張らせてギョンスの後ろに隠れてしまう。
逃げないで。
傍に来て。
今日も遠くから俺を見る君。
もっと近くに来てよ。
どうしたら俺の傍に居てくれる?
俺はもう、この想いを言わずにいるのは堪えられない。
「はぁ……。」
「チャニョルがタメ息つくなんて珍しいね。」
机に俯せになる俺にギョンスが水を手渡しながら隣に座る。
「その様子だとベッキョンとはまだ話せてないみたいだね。」
「もう、俺、ベク不足でどうにかなりそう。」
「………それはベッキョンも同じかもね。」
「え?」
どういうこと?
「ベッキョンも毎日お前のことばかり気にかけててさ。知ってる?ベッキョンって寝言でお前を呼ぶんだよ。」
ギョンスはにやりと笑うと俺のおでこを突っついた。
「お前も想われてるね。」
「それ本当?」
「僕は嘘は言わないよ。」
ウインクして笑うギョンスに吊られて顔が緩んでしまう。
ベクが俺を想ってくれてる。
それって、俺に近づかないんじゃなくて、近づけないってことだよね?
なら俺は、例えベクが逃げても君に近づくべきだよね?
もう一度ベクに視線を戻すと、すぐに視線がぶつかって固まるベク。
もう、逃がさないよ。
俺がベクを迎えに行くから。
狭い控え室のなか、メンバーの視線を浴びながらベクの前に立って見つめあう。
君はもう、俺から逃れられない。
「チャニョ、」
潤みだす瞳で俺を見据えて
「あの、、俺、」
必死に何か話そうとするベク。
「ッ、」
言葉が詰まってしまうのか、何も言えなくてもどかしそうに泣きそうになるベクに、俺はもう無理。
「ごめん。ベク。」
これ以上、俺の気持ちを締めつけないで。
それ以上にベクを求めてしまうから。
俺はここではなく、ふたりだけの場所に行きたくて、ベクの腕をとって控え室を出た。