俺は昔から
なんでも信じちゃうところがあるから、
噂で聞いていた彼に会っても
最初はなんとも思わなかった。
思わなかった……のに、
[ You are … ] side X
中国からこの世界でデビューするために来た天使みたいな子がいると、噂があった。
その子の噂はいろいろあって、(あまり覚えてないけど)笑うと可愛いとか、なんでも完璧にできちゃう美少年とか、ほんとにいろいろ……。
一度だけ、練習室に向かう途中で階段で擦れ違ったことがあったらしいが、一緒にいた友だちに言われるまで気づかなくてよく覚えていない。
いちばん覚えていることは大のサッカー好きというこだけ。
自分もサッカーは好きだから意外な共通点があって、それだけはなんとなく覚えていた。
「ヒョン、この後なにか予定とかありますか?これからサッカーやるんですけど、一緒にやりませんか?」
レッスンを終えて帰る支度をしていると、あまり話したことはないがよく練習室で見かけるセフンに話しかけられた。
とくに予定はなかったから、サッカーという誘惑に流されて二つ返事で了承した。
セフンに着いて行った所に噂のきみがいるとは思わなくて物凄く驚いた。
確かに目がくりくりとしていて可愛さもあるが男らしい雰囲気ももつ彼に、サッカーというキーワードが加わると意外性があってみんなが彼にハマるのがわかった。
第一印象だけでも個性豊かな子だな。そう思った。
試合が進むに連れてチームの息が自然と合ってきた。とくに、ルハンという彼とは前からコンビを組んでいたかのように息が合って、楽しかった。
最後にルハンがシュートを決めて、勝った喜びでみんなが俺たちに寄ってきて、小突いては誉めてくれた。
「ルーハン!」
「イエーイ!ミーちゃんナイスパス!」
彼はその細い腕で軽々と俺を抱き上げるとぐるぐると回りだした。
「おいっ!バカ!離せ!」
意外と力持ちなことと、突然の行動に動揺してはやく離してほしくてジタバタと暴れた。
耳を詰まんで引っ張るとようやく降ろしてくれた。彼の顔には驚きと戸惑いが表れてて焦る様子が可笑しかった。
「公衆の面前でやるな、アホ!」
言葉よりも先に体が動いてしまう彼に半分呆れながらも、噂とは違って素直な彼に可笑しくて笑ってしまう。
でもまさか、彼が自分を気にかけていたなんて思いもしなかった。