この顔で墜ちない奴はいない。
愛想よく微笑めば、女も男も俺に夢中になって近づいてくる。
やがて手に入らないのだと知ると絶望する。
今回もそうだと思った。
[ I don't know … ] side L
レッスン後はいつものメンバーでフットサルをやるのだけれど、一人、家の事情で行けなくなってしまった。
「これじゃあ、人数合わなくなるな。」
「だれか連れてこいよ。サッカーできる奴他にいないか?」
「俺は知らねー。セフン、だれかいないか?」
ったく、使えねー奴らだな。
なんて、悪態つく俺もわかんないけど。
態度には出さずに心のなかで文句を言いながらマンネのセフンに目をやる。
セフンは少し考えてから、なにか思い出したように「そういえば、」と口を開いた。
「噂だからほんとかはわかんないけど、サッカーできる子がいるって聞いたことはある。」
「マジ?そいつでいいから連れてこいよ!」
「顔は知ってんのか?」
「一応。僕たちとずっと一緒に練習してる人だから、みんなも顔は見たことあると思う。」
へぇ~?じゃあ、俺も見たことあるのか。
でも、こいつら以外でサッカーできる子なんて知らないけどな。
「じゃあ、セフナ、連れてきてよ。」
にっこり笑って頼むとセフンは「わかりました。」と噂の子を呼びに練習室に走って行った。
ストレッチをしながら待っていると、セフンが戻ってきた。
後ろからひょっこりと小さな青年が顔を出すと、俺の顔を見て驚いていた。
ああ、またか。
小さい頃から可愛い可愛いと言われ続けて、初対面の人には驚かれてはすぐに好かれる。だけど、それはすべて下心からだ。
「ああ、ミンソクか!」
「あいつ、サッカーできたんだな。」
横で彼を知ってる面子が話すことを聞きながら、近づいてくる彼をじっと見た。
ミンソクと呼ばれる彼はパーツがすべて小さかった。真ん丸とした目以外は。
俺たちの前まで来ると、セフンがざっと俺たちを紹介した。
「こんにちは。ミンソクって言います。」
すぐ近くにいた俺に小さな手を差し出して微笑む彼に、俺もお得意の愛想で微笑み手を握った。
小っっさ!!
握った手は俺よりも小さくて、すっぽりと俺の手に包まれてしまっていた。
「よろしく、ミンソクさん。」
これで彼も俺に墜ちるだろう。
そう思った。
だけど、彼は俺に「よろしく!」とまた微笑むとさっさと手を離して他の奴にも俺と同様に握手を交わしていった。
それから軽くアップをしている間も俺には目もくれず、他の面子と普通に話していた。
なんで?
さっき、俺を見て驚いてたじゃん。
なんとも思わなかったらそんなに驚かないよね?
疑問に思いながらも、試合は始まった。
彼は噂以上に上手くてほんとにサッカーが好きなんだと知った。
シュートといった目立つプレーはなかったけど、周りをよく見て絶妙なパスでアシストをする。
試合が進むに連れて全員がそう感じて、彼との距離がすぐさま縮んだ。
「ルーハン!」
あと1秒というところで彼からパスを受けとり、そのままロングシュートをうつ。
ガッ
ボスン
ボールはキーパーの手を弾いて中の網に直撃した。
「ィよっしゃあああっ!」
「ナイスショット!ナイスパス!」
俺たちのチームが勝って、メンバーが次から次へと俺と彼に寄って誉めてくれる。
「ルーハン!」
「イエーイ!ミーちゃんナイスパス!」
嬉しくて無邪気に笑う彼をばっと抱き上げてぐるぐると回った。
彼は驚いてジタバタと暴れだした。
「おいっ!バカ!離せ!」
「?!」
なかなか離さない俺に耳を詰まんで引っ張り「降ろせー!」と喚いた。
真面目そうな見た目とは違う彼に驚いて慌てて降ろすと手を離してくれた。
「公衆の面前でやるな、アホ!」
呆れたように笑いながら俺の額をコツンと軽く叩くと、みんなのもとに行ってしまいハイタッチなどをしていた。
「………え?」
彼の行動についていけなくて、驚くばかりだった。