チランジアのこと | 岩石翁の多肉ブログⅡ

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メセン栽培を主軸として、多肉植物の「岩石栽培」という新手法を実験中。その記録です。

 ちょっと長くなるが、チランジア(いわゆるエアープランツ)の栽培について書いておきたい。実を言うと私はチランジア歴も長かったりするのだが、恥ずかしながら、多肉同様その歴史は敗北の連続であった(大汗)。最初に入手したのは、まだ我が国に入ってきて間がない頃のことだったと思う。当時はまだ「エアープランツ」なる、よろしくないキャッチフレーズによる誤解が世間に蔓延していて、「空中湿度だけで育つ」などと喧伝されていたのを若気の至りで鵜呑みにしたため、ものの見事にミイラ化させてダメにしてしまった。現在そういう誤解をしている方のために老婆心ながら申し上げておくが、チランジアは室内に放置して時々霧吹きをするくらいで長期栽培できるような植物ではない。空中湿度だけで育つというとらえ方ができるのは、あくまでも自生地の環境での話である。さて、その後ある程度チランジアが世の中に普及した結果、栽培指南書が本屋に並んでいるのを見つけたので買ってみた。するとそこには、時々チランジアを丸ごとバケツの水に数時間から一晩漬け込んでしまう「ソーキング」というものを時々やればマトモに育つのだと書いてあった。そうか、これが足りなかったのかと膝を叩いた私は、早速これを実行に移した。確かにこれである程度はチランジアたちを維持できた。しかし、年数が経つ内に私のチランジアは何故か徐々に減っていき、最後には全てを失うことになってしまった。カプトメドゥーサもイオナンタもセルリアナもシュードベイレイもブルボーサもブッツィーもプルイノーサも(←しつこいってば!)全部ダメになった。高価な(それでも今より入手しやすかった)キセログラフィカやテクトルムの大株も持っていたが、全部失った。今にして思えば、なんとも勿体ないことをしたものである。こうして見事に全部失った私はさすがに目が覚めて(苦笑)、チランジアからは手を引くことにした。それ以降、長いブランクがあったのだが、数年前にネットでメセンの新しい栽培方法に出会った頃、チランジアに関しても新たな知見による興味深い取り組みをしておられる先人たちを見つけた。その先人たちの栽培理念は理にかなっていたし、栽培の実証実験としても説得力を持っていた。そこで私は2年前から新しい方法でチランジア栽培を再開することにしたのだが、どうにか軌道に乗ってきて人様にお伝えできる状態になってきたと判断して、今回、記事にすることにしたのである。

 さて、その栽培法のキモに入る前に、先人たちの栽培方法の中で個人的に納得した部分を私なりにまとめておくと以下の通りである。ちなみに( )内は私の個人的理解。①ソーキングは、やってはいけない。水没中は呼吸ができないわけだし、通常なら入り込まないような株の深部にまで水が浸入して腐敗につながる。(考えてもみれば、自生地では何時間もチランジアが丸ごと「水没」するような異常な状況は起こり得ない)②とはいえ温暖期の水やりは、時々の霧吹き程度では足りない。(夕方か夜に)毎日ホースで水をジャージャーかけるくらいがいい。(うちも冬場以外はそうしている。こうした事情も含めて温暖期は屋外栽培が適している)③冬場以外は、通風を考慮して屋外で育てるべきである。室内のみでの長期栽培は不可能と認識するべき。生育上、もちろん湿度は必要なのだが、ずっとジメジメしているのはダメ。かといって、乾き過ぎてももちろんダメ。要点を簡潔にいうと、自生地と同じように夜間に濡れて昼間にカラッとする環境がいいらしい。(風通しのよい樹上に自生している植物なのだから、これは当然のことである。ましてや室内にはエアコンという、悪魔の乾燥装置(苦笑)もある。したがって、ガラス瓶に入れてオブジェにしたいとかインテリアとしてずっと室内に置いて育てたいとかいうようなオサレな夢は捨てるべし。私も既に捨てた(苦笑))④冬場は取り込んで、できるだけ加温する。チランジアの自生地は、日本の冬ほどの低温にはならない。(ネットを見回してみても、大量にチランジアを栽培している人は、大抵しっかりした温室を持っている)

 以上が大前提となるポイントであるが、更にもう一つ、キモとなる(と私が思う)重要なポイントがある。それは、「ただ置いておくよりも、何かに着生させた方がよい」ということだ。言うまでもなくチランジアは、自然状態では木に根を張って着生している。とはいえ、チランジアの根はほとんど樹皮に貼り付くためにあるようなものらしく、水分のほとんどは体表面にある「トリコーム」と呼ばれるウロコ状の組織から吸収しているらしいのだが、それでは栽培上は着生させなくてもいいのかというと、どうやらそうでもないらしいのだ。思うに、根を張らずに(=どこにも固定されずに)コロコロ転がりながら生きているような陸上植物はない(多分)。というか、そんな不安定な状態は、かなりのストレスになることだろう。そしてチランジアの場合も、何かに着生して固定されていた方が安心して(?)元気に育つらしいのだ。どうしてそんなことが分かるのかというと、ありがたいことに、前述の先人たちのブログの一つに着生・非着生の比較実験の結果が掲載されているのを目の当たりにしたからである。それを見れば一目瞭然で、着生させて固定してある株の方が明らかに旺盛に成長していた。これを見て間違いないと思った私は、早速その手法を取り入れさせてもらって現在に至っているのである。

 ついでに我が家のチランジア(といっても3種類5株しかないが)を紹介しておく。

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 カプトメドゥーサ。チランジアの中では一番のお気に入り品種で、基部のボリュームといいウネウネした葉といい、個人的にはチランジアを代表する品種だと思っている。あまりにお気に入りなので2株あるのだが、なにしろ屋外栽培の場合は強風などで仮固定用のワイヤーがずれたりすることがあるため、まだ一株(上の写真の株)しかコルクに着生していない。とはいえ、生育状態は良好で、それぞれずいぶん大きくなった。

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 ハリシー。写真がボケていて申し訳ない。これらはいずれも百均から救出してきたもので、多分、両方ともハリシーだと思う。まだ左の株しか着生に成功していないが、着生できていない右の株はなぜか分頭して増え始めている(もしかして種類が違ってたりして…)。カプトメドゥーサとは対照的な、凜とした姿が気に入っている。

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 イオナンタ。これまた百均物なので、細かく言うとイオナンタの何なのかは不明である。色合いからしてルブラとかでないことだけは確かなのだが…(苦笑)。導入した時点ではとても小さかったのだが、それなりに成長してここまでになった。着生には成功しており、しっかり貼り付いている。聞くところによると、百均チランジアは分頭したものを早い段階で無理に株分けして一株ずつに仕立てたものが多いため小苗が多く、そのために購入後の生育が思わしくない場合が多いという。よくないことだ。