そろそろフェネストラリアを手がけてみたいと考えている。なぜ今まで手を出さなかったのかというと、新たなメセン栽培法を導入してとりあえずうまくいっているとはいえ、フェネストラリアはメセンの中でも際だって特殊な環境に自生していることから、苦戦が予想されたからである。更には、もしうちで栽培するとしたら、自生地の状態に合わせて球体を埋めて育てているリトープスと同じく頂面だけ出して埋めてしまおうという、恐ろしいことを考えていたからでもある。フェネストラリアの自生地は海岸の砂地なので、もし埋めて栽培するなら根元を岩石化してから上部に粗めの砂を充填することになるだろう。しかし、リトープスならともかく、フェネストラリアのような気むずかしい植物を我が国の気候下でそのように植えて大丈夫なのかどうか、長らく確信が持てなかった。特にこの種類は多湿に弱いといわれてもいるからだ。そんなこんなで今まで手を出さずに来たのだが、とりあえずうちのメセンたちの栽培は軌道に乗ったように感じているので、最近ちょっと本腰を入れて調べてみた。すると、ネット上ではフェネストラリアを埋めて育てている先人が何人もおられる様子。なので今回、とりあえずは栽培方針を決定しておき、入手の機会に備えることにしたのである。

ところで、この「埋めて育てたい」というのは、単に自生状態へのロマンから言っているのではない。何度も書いていることだが、うちでは全てのリトープスを頂面だけ出して深植えにしている。何故かといえば、自生地での状態がリトープス本来のあるべき姿であると考えているからであり、それには理論的な理由付けがあるのだ。それは、自生地においてリトープスの側面は埋まることで保護されているのであり、強光線などにはむしろ弱い部分なのではないかという、ある先人の推論に基づくものである。自分の過去の失敗例を振り返っても、側面からダメージが入っておかしくなった事例が多々あった。このような経緯でリトープスを深植えにして栽培してきたのだが、それによって不具合が生じたことはなく、むしろ安定して生育しているように感じている。だとすれば、である。同様に頂面だけ出して埋もれているフェネストラリアの側面…側面といっても頂面以外の大部分になるが…この部分もむき出しにして強光線に当てたりしない方がいいのではないかと考えられる。なので、栽培方針として、植え方は頂面だけ出しての深植えで決定。高温多湿への対策として、なるべく白っぽくて粗めの砂を入手して岩石鉢の上層に充填する。次に日照であるが、ネットの栽培例を見渡した限りでは、マニュアル通りに遮光・断水して夏季休眠させたとしても栽培成績がはかばかしくないという例がままあるように見受けられる。また、フェネストラリアは冬季降雨地帯産であるといっても、自生地は降水量が年間を通して少なめなのであって、季節毎の降水量に顕著なメリハリがあるわけではない。また、最高気温はむしろ他地域よりも低いので、その点からも夏季休眠と呼べるような状態になるとは考えにくい。以上の理由から、我が国での栽培において夏季休眠はさせるべきでなく、夏場でも遮光せず直射光栽培をすることとする。無論、夏場の暑さ対策は必要だろうが、それには別の手段を講ずる。具体的には、神風玉などでも採用している二重鉢による冷却と、昨夏からスタートした水上栽培を組み合わせることだ。これでダメになるようであれば、我が家の環境では栽培は無理だと判断すべきだろう。次に、灌水に関していえることは、通常のやり方での灌水はすべきでないということだ。普通にドボドボ灌水すると簡単に徒長しておかしなことになるということは、ネット上の失敗例を見ても明らかである。何故かといえば理由は単純で、そのような形で水分が供給されるような場所には生えていないからである。一年を通じてほとんど降水がないといってもいいような環境で、もっぱら海からの朝霧による水分補給で生きているような植物なのだ。サボテンでいえば、ちょうどチリのアタカマ砂漠に生えているコピアポア属に近い生態なので、普通の灌水をしてはいけないというのも同様であると思う。したがって、灌水はシリンジのみによって行う。場合によっては腰水も考慮すべきかもしれないが、基本はシリンジだけでやっていくつもりである。もし入手する機会に恵まれたら、以上の栽培指針に従ってチャレンジしてみたいと考えている。