大寒に、あまり寒くなかった、と書いたら

途端にものすごく寒くなった

気候・気象とはそもそもがそういうものだろう

だって大寒なのだから寒くて良いに決まっている

いや、恵方巻かぶりついたな

もう立春過ぎてるか

まあ良い

ボクの住む三河地方は気圧配置の微妙な加減で

風向きがわずかに西に寄ったため薄っすらとした積雪で済んだ

三重の北部なんかが大雪になるとこの三河もただでは済まないが

JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)のシッポの振り方次第で結果は多いに異なるのだ



冬になると停めておいたクルマやオートバイはそのすべてが外気温に等しく冷えていく

ガレージの中であってもビックリするほど冷たくなっていてちょっと驚くほどだ

車体だけでなくエンジンもオイルもみんなみんな冷たく凍えてしまう

そんな状態でエンジンを始動させると一気に機関の温度が上昇して

マフラーの中は云うに及ばずエンジン内にも水蒸気が発生して

テールエンドから盛大に水蒸気を吐きだすことになる

機関内の蒸気はオイルに混ざるがしっかり走ればそれほど問題にはならない

タンクに着いた水分はガソリンの中に落ちて底へ沈む

最近のポリ製タンクではあまり問題ないが従来の金属製はそれが内部に厄介な錆びを生む

冬はオートバイにとって劣化を進めるイヤな季節だ



これらはある程度しっかり乗ることでリスクを減らせるものなのだが

ボクらが乗るようなオートバイはほとんどが趣味の乗り物なので

多くの人は「週末アイドル」ならぬ「週末ライダー」だろう

だからみんな週末を心待ちにしているよね

それなのにせっかくの週末に天候が悪かったり

恐ろしいほどの暑さや寒さとなれば仕方なくキャンセルされることもあるだろう

走りに出たとしても冬は路面状況の関係で走る場所が限られ

夏のようにしっかりと距離を走れなかったりするので

いろんな意味で冬はやはりオートバイのコンディションが気になる季節だ

一般にクルマのメンテナンスで「シビアコンディション」と云えば

酷暑、極寒、過走行そして砂漠などの走行を指すが

意外にも日常的な短距離走行もそこに含まれている

これはさっき書いた機関内の「水分」が十分解消されないことと

摺動部分の潤滑性能が適切にならない状況が続いたりするからだ

非公式だとは思うがあるメーカーからは

短距離走行とはおよそ8km以下の走行とアナウンスされていた

だからたとえ毎日であってもその1回の距離が8km以下なら

クルマにとってはシビアなコンディションということになる

傷みが早くなる恐れがあるので早め早めのメンテナンスをした方が良いという訳だ

ましてや趣味のオートバイ

それも複数台所有していたり製造から何年も経つ旧車だったりすれば

乗る機会を意識的に持たないと走らないのに劣化が進むなんてことにもなりかねないのだ



そこで古いクルマやオートバイを所有する人たちの間で俗に云われる

「機関維持」という言葉がある

一般的な言葉ではないし

たぶん正式にはこんな言葉はないと思うけど

機関とは多分エンジンのことで

蒸気機関とか内燃機関とかまあそんなやつだろう

このエンジンの状態を維持するために動かしてやることを意味している

冬になるとまずはバッテリーが弱る

だからガレージの中で旧車たちは「充電器縛り」を受けることになる

これだって「機関維持」の一部だ

けれどやはり走らせることが何より大切

走らせるだけでなくすべての可動部が正しく潤滑され

機関内の水分をすっかり蒸発させるくらいは最低限必要なのだ

だから何の用事がなくても阿呆のようにオートバイを乗り回す

いくら家人から「こんな日にオートバイに乗るの?」と冷たくあしらわれようとも

「機関維持」は「義務」なのだよ

そもそも積雪があれば考えるが

気温が低い、風が強烈に強い、それくらい屁でもない

「海を眺めてコーヒーを飲んでくる」と云い残して玄関を出る



南向きのガレージのシャッターを押し上げると

冷たい空気を切り裂いてサッと一瞬にして中に陽が差し込んだ

カバーを外し無意味と思いながらもすっぽりと掛けている毛布をたたむ

タンクに触れるとやはり氷のように冷たい

寒かったね、クロ介(BMWエアーヘッドボクサーR100)

実はこの日お約束の充電器縛りをしていなかったのがちょっと不安だった

ゆっくりと引っ張り出してスタンドを立てる

左右の燃料コックを開けチョークを一杯に引き

なぜかここでボクの方が深呼吸

「クロ介頼む」

そう祈りながら勇を鼓したような面持ちでセルボタンを押し込む

―――果たしてセルは虚しく空回りしタコメーターの針が躍る!

バッテリーを休ませながら3度試すが状況は悪化する

スターターリレーが悲鳴を上げる前に諦めた

なんで充電器に繋げておかなかったのか、と自分を責める

ガレージの中で一部始終を見ていたSRがニヤリとして囁く

「今日はわたしと行くのね」

クロ介をガレージに戻して充電器に縛る

今日はオマエは寝ておれ

SR400はキック一発始動

「機関維持」は置き去りで真冬に海へただコーヒーを飲みに出かけることになった





最近は若いうちから電熱電熱とオートバイ乗りも裕福になったもんだと思うが

陽が差して気温が0℃以上ならせいぜいカイロで十分だ(貼ってないけど)

スキーウエアのような不細工なライディングウエアも

いくら高性能でもカッコ悪すぎて御免だ

おまけにライダー以外には全く分からないブランドのロゴがでっかくプリント

そいつが数万もするとなればもはや存在価値を疑う

ほんと裕福だよ

まあなんでも経験してみることは必要だから出来るんならやってみればいいけど

そこからいつかは抜け出してきて欲しいと思う

せっかくこんなにも寒い事の辛さを体験できる乗り物なのに

同じ経験ならそういう風な経験の方がきっと長い人生の足しになる

多分オートバイ趣味は苦痛の上にあるものだ

山登りやスポーツ全般と同じ類のもの

苦痛を上回る快感を見つけて欲しい

ぜんぜんできるよ

ボクらの若い頃はカネなんてオートバイを買うのが精一杯で

ウエアやアクセサリーにまで手が出せなかったから

手元は軍手とかせいぜいスキーグローブ

足元はオールシーズンコンバースとかで乗ってた

真冬の夜中でもジーパンで走ったし

スーパーで売ってる安っすい革ジャンの中にセーター着込んだくらいかな

キレるような冷気の中を走り回って指先や太ももが凍りつき

それを帰ってすぐ熱い湯の中につけた時の激しい痛みがわかりますか

そんなことを毎日続けながら指やモモが壊れちゃうんじゃないのかなんて考えてた

もちろん壊れなかったけど

我慢自慢したい訳じゃない

けどこっちの方が人間らしいとボクは思う

何でもカネで解決する生き方はつまらなさすぎる

いまこんなに満たされて生きながら

寒くて震える経験が懐かしいのはなぜなんだろうと

そんな思いにたびたび襲われるのだ



三河湾は強い風に海面がざわざわとしていた

オートバイを停めてはみたもののとても降りてのんびりできる感じではなかった

ヘルメットも取らず放置されている椅子に腰を下ろして海を眺める

下ろしたままのシールドに砂浜から飛ばされてきた砂粒が当たってパチパチと音を立てた

指先は冷え切って買ったばかりのホットの缶コーヒーを握り締めても感覚が戻らない

弱弱しく呼吸しながらそれでもやっぱり薄笑いを浮かべている自分に気付く

いつもそうなのだ

つらいなーと思う向こう側で笑いをこらえた阿呆がこっちを見ている

ふとすぐ目の前の海面に小さなカモが一羽

強い西風に逆らいながら海面を風上に向かって泳いでいるのを見つけた

よく見ると確実にヤツは進んでいた

おそらく水中では必死に足を泳がしているのだろうが如何せん風が強すぎる

なのにそのカモはゆっくりゆっくり確実に進んでいく

どこへ行こうとしているのかとその進行方向の先を見ると

50mほど先に海へ突き出した突堤があって

その陰で波を避けて休む20羽ほどのカモの群れがいた

「あそまで行くの?」

いつもそうだけどボクはそれが動物相手でも植物相手でも声にして聞いたりしてしまう

すると大抵返事が聞こえるのだ

「うっさいはボケ、ほっとけや」と

いやいやそれにしてもそんなカモの日常の光景にも「すごいな」と感じる

それほどヒトは自然からかけ離れてしまったのか

凍えた指先は缶コーヒーでは温まらないけど

手首をまくってそこを掴むとすぐに回復するって、経験あります?

ヒトの身体は一日に1500kcalも消費して熱を生み出している

これは理論上1.5Lの水を100℃に出来る程の熱量ってことだ

だから自分の熱に頼る方が暖かい

ヒトはまだまだ自然に近い生き物だ

カモが冬の海面を風に逆らって進むような力がまだまだボク等にもあると信じている



夕方ガレージにクロ介の様子を見に行くと

すでにトリクル充電に変わっていた

試しにエンジンをかけてみようとキーを捻ると

スパーーーーンと激しいアフターファイヤーをかまされ心臓が止まりかけた

ツインプラグ化のために「エキスパンダー」とか云うなぞの回路が挟まっているけど

そいつがなぜかキーをONした瞬間に一発自爆(点火)かますのだ

シリンダ内やエキパイ内に生ガスが残っていると確実に破裂する

キャブ側に回るバックファイヤーだとキャブが外れることもあるらしい

朝、セルを回しすぎたようだ

煽る心臓を押さえながらセルを回すと

クロ介は何事もなく

しかも一瞬のたじろぎもなく始動した

充電器縛りは必須だ

まあバッテリーも4年も使っているのでそろそろ交換か

機関維持のため翌日クロ介に乗って

海を見ながらコーヒーを飲みに出かけたのは云うまでもない

「エっ、今日もオートバイに乗るの?」

「仕方ないさ、機関維持だよ」



昨年の長い夏のあとやっと訪れた遅い秋

そして暮れから年明けにかけてのちょっと早くて強い寒波

予報によると今年の寒さは大寒を前にもう底を打ったと云う

寒い時には寒さを感じたい、と思うが

大抵のひとは寒いのは嫌いであろう

これはこのごろさらに拍車の掛かる天邪鬼のせいか

つまりは所詮世捨て人の楽しみでしかなくあまり理解されない

とは云うものの寄る年波には逆らえず

寒風に晒されるとお腹が冷えて途端にくだるのだ

何ともカッコ悪い話でもある



日の出の前に庭に出たら野天晒しのクルマのガラスがびっしりと凍っていた

雲ひとつない空は放射冷却がきびしかったようだ

昨夜、明日はちょっと(オートバイで)走ろうかな、なんて考えながら床に就いたが

こんな寒さ具合では腰が引ける

まあ9時にもなれば状況も変わるだろうと

のんびり朝食を取りテレビでどうでも良いプログラムを見てやり過ごす

コーヒーを淹れようか

でもコーヒーを淹れてしまうとさらに腰が重くなりそうで

暖房で結露した窓を指で拭って外の様子を見やる

風はなさそうだ

この分なら気温は上がるだろう

意味もなく頷いていそいそと支度を始める

クローゼットからウェアを引っ張り出し

クロ介のエンジンに火が入るまでそれから5分と掛からなかった



クロ介(BMWエアヘッドフラットツイン)はイグナイター交換で復活

夏場より2秒だけ多くクランキングして盛大に目覚める

マフラーから白い蒸気を吹き出し

センタースタンドで上がった後輪がゆっくりと回る

ハーフチョークへ戻してさらに暖機運転する

リアホイールの回転が止んだのを見てスタンドから降ろし漸くシートに跨る

チョークをすべて戻して

その代わりに少しだけスロットルにテンションをかけ回転を維持する

コンピュータが全部やってくれる今のオートバイと違って

真冬のエンジン始動にも個体ごとの違いがあってとてもおもしろい

こういうところに趣味性があるのだ

インジェクション仕様のSR400のキックスタートなんて

簡単すぎて趣味性の欠片もない

キックスタートごときでノスタルジックなどと云う勿れ

そもそもノスタルジーなど趣味ではない



ボクの住まう愛知県は西の尾張と東の三河で成り立っている

どちら側も互いにあまりよく思っていないのは地方あるあるか

知多半島の付け根辺りで三河湾にそそぐ境川が文字通りの境界になる

三河はさらに東と西に分かれる

矢作川が作る平野部が西三河

豊川が穿つ山間部が東三河

夏の間はほとんど東三河の高原地帯を走っているが

冬になると西三河の海辺へ行くことが多い

岡崎平野の南東部には低い山が連なるがそこにはワインディングも多い

だから冬になるとワインディングを抜けて浜へ出て海を眺め

また別のワインディングで戻ってくる

そんな繰り返しだ

2月の下旬になればまた山へ行けるのでせいぜい2か月くらいだが

その間は幡豆や幸田の農道が主な生息場所になる

まるで冬の陽だまりにある川の淵をうろつく鮒みたいに…

それでもオートバイに乗って走ることは本当に楽しくて

帰ってからもしばらく思い出し笑いみたいにずーっとニソニソしている

夜、布団に入って眠りに就くまでずっと心が浮かれているのだ

まったく呑気なもんだ

そして御目出度くもある

いい歳をしてオートバイに乗られることがうれしくて仕方がない

それも若いころからもう何十年も乗り続けているのにだ



「大寒」だからと身構えて迎えた朝

そうでもない

庭に陽が当たりだしたら風もなくぽかぽかだ

ほんじゃー、と

伸ばし伸ばしにしていたSR400のオイルを換えてやることにする



ヤマハのオイルチェンジキット

割高なんだけど一度使ってそのラクさにやられてしまった

こんだけ全部そろってるから本当に楽ちんなのよ

いや贅沢か

  

ドライサンプのSRはフレームのダウンチューブがオイルタンクになっている

だからフレームのこの小っさなドレンプラグからまずオイルを抜く

プラグを抜いた途端にシャーっと飛び出すので養生が必要

(フロントタイヤがオイルまみれになっちゃう)



エンジンの下部にもドレンがあるのでその後ここからもオイルを抜く

ドレンのすぐ下にレギュレータがあるのでこれもテープで養生する

15分ぐらい放置したらドレンプラグのシールを交換して

規定トルクで締め付ける

ステアリングヘッドのすぐ後ろタンクのくぼみに顔を出している

レベルゲージ付きのキャップを開け

ヤマルーブ プレミアムシンセティックをまず1.8リットル注入

試走後にレベルを見たら下限の少し上だったので残りの200ccを継ぎ足す

ゲージは半分くらい

規定では2リットルちょうどだけど2リットルでは少ないのかな

まあ様子見だ

今回はオイルフィルターは交換しないのでこれで終了

暖かくて作業日和だった、大寒なのに



こんなに暖かいと山のワインディングへ行ってみたくなる

山中に植えられたスギやヒノキの林が遠目に茶色っぽく見えるけど

なんせ枝先には花がびっしり付いて花粉の噴射が準備完了

だからきっともう行けるのかもしれないけど

路面温度のことを考えると楽しくは走れないのかなとも思う



いまは海辺でのんびりコーヒーでも淹れて

もう少し春を待つことにしよう



新たな年が明けました

あけましておめでとうございます

なんですけど、この云いまわしちょっと違和感ないですか?

新年を迎えたことを寿ぐ訳だが

何がそれほどめでたいのか現代人には正直ピンとこないだろう

元旦から七日までを松の内として祝い

七日目の朝、七草がゆをもって日常へ戻る

それほどこの新年を大切にお祝いするにはもちろん訳があって

これは人がいつ命を落とすかわからなかった時代だからこその感覚であり

これだけ恵まれた環境境遇で生きていられる現代人には

もうすでに伝わらない価値観となっているからだろう

けれど21世紀を生きる我々でも

歳を重ねて少しでも身体に不調をきたしたりすれば

途端にこの「あけましておめでとう」が胸に沁みてくるはずだ

楽しみに待たれよ

いずれはだれの身にも訪れる境地なのだ



さて

世の中にはいろいろな人がいて

そして各々にそれぞれの考えがあるもの

だから最近では個人、個性を尊重しようという風潮が強い

しかし人間には、というか人間社会には同調行動を重んじる向きもあり

それが時に個人を無視して恐ろしいほどの潮流となることもある

個人個性の尊重は世間ではすでにガンジガラメと成り下がり

これは天邪鬼的にはとてもおもしろい状況で

「個性を大切に」という「同調行動」になってしまっているからだ

つまり社会に関わる時、人はみなその影響を受けざるをえないということで

周囲からの働きかけによって動き出す自我は

欲と欲のぶつかり合いという葛藤を経て

気付けば我利我利のこころにまで落ちていく

「意馬心猿」という言葉があるが欲に突き進む心はそれほど制御不能なのだ

自分のこれまでを顧みれば

その業の深さに情けなくなるほどの醜い生き様であったが

はたして、社会からドロップアウトした途端

うそみたいに憑き物はきれいさっぱり落ちて

生涯の中でこれほどピュアに生きていられる日々に

我が事ながら感謝しているほどだ

なにも「悪い事」を考えなくていいし、また考えることもない

善人振りながら醜い自分を横目に見て生きることの地獄から解放され

ゆったりと安心して日々を暮らせている

人と関わることで自分を汚く見失う性質の向には

早々隠居することをお勧めする



定年後の暮らしを退屈で無意味だと嘆く人がおられるが

それも価値観の物差しを自分の外に置いているからで

自分をいったいどれほどのものと認識してきたのだろうかと

哀れにも感じる

人間なんて所詮ゴミ屑みたいなもんだと理解すればいい

これは諦観だが

諦観とは諦め卑下することではもちろんない

出来ることと出来ないこと

なれるモノとなれないモノ

かなうこととかなわないこと

これをよく吟味して明らかにすることを諦観というのだ

「絶対に」「どうしても」という言葉が口から出るとき

人は原理主義に落ちている

原理主義の正義はとても不幸だ

晴れた朝、青空を見上げながら

熱いコーヒーを啜り

あー今日は晩酌の宛てに魚でも煮て食うか、と考える

それ以下でもなければそれ以上でもない

これが退屈か?

なら風の止み間に庭の落ち葉でも掃いて焚けばいい

縁側に座布団並べて昼寝しながら屁をこいてもいい

やっぱり無意味か?

それじゃあネコに聞いて回ればいい

「生きるとはいったい何なのでしょう?」

多分ネコはこう云う

「ニャーーーーーーー」とね

とにかくなんの悪い考えも浮かばないこの日々は最高だ

ボクもやっとネコの境地に辿り着いたのかな

いやピテカントロプスか



昨年末にちょっとトラブったクロ介(R100RSもどき)

寒い朝の始動に緊張する

が、そこは難なく1発で目覚めてくれた

どこへ行こうか、と考えながら

やはりここへ来ていた



ここ最近の冬は幡豆のこの海岸が定番だ

途中で形原の漁港を渡る大きな橋を渡り

わざとらしいパームツリーの海岸に出た

三河湾を渡る風が強くてクロ介がぐらぐらと揺れる



エンジンは相変わらず絶好調

イグニッションコントローラーの不調だったが

思い出してみると、謎のエンストにたまに見舞われていた気がする

あれは壊れる前兆なのかも

とにかく今年はクロ介に頑張ってもらわなくてはいけない

夏には北海道を走らせてやりたいのだ



そのあと久しぶりに広域農道幡岡線に入った

予想してはいたが昨日しっかり降った雨がまだ乾いておらず

落ち葉が路面に広がって全く楽しめなかった

それでも今年最初の散歩はやっぱり楽しかった

冬はあまり遠出もしないし山へも行けない

ヤマハのコミュニケーションプラザに行ってみようかなとか

雪をかぶった富士山見に行こうかなとか考えはするけど

どうかな

やっぱ行かないかも



ということで

今年もどうぞよろしくおねがいします



今年の冬は厳しそうな気配だ

いやいや天候、気候なんてものは気まぐれもいいところ

だからじきに調子っぱずれのような具合になるのかもしれないが

まあそれにしても年末に向けての今日この頃は

しっかりと寒い寒い日々が続いている



SR400が車検から帰ってきたと思ったら

クロ介(R100RS擬き)が壊れた

クリスマスに向けて冬型が強まり

次々と強い寒気が南下してくるようなので

風もなくよく晴れたその朝

クロ介を引っ張り出して今年最後の「巡回」に出掛けるつもりだった

毎年寒くなってくるとやや始動に危うさを感じるが

それでも少し長めにセルモーターを回すくらいで

「困難」と云うほどのものではなかった

この日は冷え込んで9時を過ぎてもまだ3℃程の気温だった

昨日一日充電器に繋いでおいたのでセルはグルングルン回った

なのにクロ介が始動する気配が無い

バッテリーを休ませながら5回繰り返すがダメ

マフラーから生ガスの匂いが強くなったので

チョークを閉じてスロットルを開けてみるがやはり無反応

流石にバッテリーは枯れてきてセルも怪しい

どうしたんだい?ヘヘイ、ベイビー

バッテリーはビンビン(だったのに)

こんな朝にお前に乗れないのかよ

と、余裕噛ましても掛からないものは動かない



仕方なくクロ介はガレージに戻して再び充電器に縛り付ける

今日はもうフラットツインの股ぐらになっちまってるもんで

ビッグシングルをキックしてもノリが悪い

頭の中でグルグルするのはクロ介のことばかり

だったんだけどそこは現金なもので

いつものコーナーですっとSRのスリムな車体をリーンさせると

途端に唇の端が歪む

よしよし今年最後はお前で締めくくるよ



寒さもそうだが今年は記録的にこの時期の降雨が少なくという

少なくというか、全く雨が降っていない

空気もバリンバリンに乾燥しているせいか

ちょっと前に比べて路面の湿りが少ないみたいだ

山からの水は凍るがその出方もかなり少ない

朝方の冷え込みの強さに比べて霜の付き方もなんだか薄いのだ

もちろんその分凍結の心配は少ないのだが

路面温度はさらに下がっているので

一旦停止からの左折なんかでリアがグリュっと来ることもある

調子に乗って夏みたいにバンクしてスロットルをぐりーなんてのは進められない



1週間前に来た時より確実に季節は進んで

色付いた葉が残っていた木々もすっかり丸裸になった

乾燥した初冬の空ははるか成層圏まで澄み渡り

その青さを一段深くした

さすがに椅子を広げてのんびりなんて気にはならない

涼風(の里)の軒先に出されたままの椅子をちょいと拝借

ゆるいけど吹き付ける冷たい冷たい北の風を避けて

ありがたくも差し込む冬の低い太陽に目を細め

日向ボッコとしゃれこむ



もういつから嵌めているか分からないJRPの冬用グローブ

ツヤなんて当に無くなってるだけでなく

革が毛羽立って表面はガサガサだ

エンジンに触って表面を火傷させたりした大きなキズもある

嵌め心地と操作性がボクの手にフィットしているせいか

他のメーカーのグローブも新調しているのに

こいつがなかなか手放せない

若いころはグリップヒーターだ、電熱ベストだ、とやってきたが

逆に歳を重ねて真冬の指の冷たさに冬を感じる喜びを知った

指先の冷たさには人一倍弱いはずの自分だけど

この凍える指先に冬のライディングのプレジャーがあるのだ

気温一桁の空気の中を走ると

30分くらいで指先は凍えてくる

でもここからさらに指先が痺れるまで行くにはかなり時間がかかるものだ

何をそんなに我慢してまで、とニヤニヤしながら走るのだ

そして自販機の缶コーヒーを握り締める

だからいつもボクのコーヒーはぬるい



翌日、クロ介に清掃済みの使い古しプラグを付け

慎重にセルを回してみた

結果はまあ予想どおり全くダメ

JAFを呼んでピックアップしてもらう

そのままテックMCに入院になった

イグナイターが死んだらしくて

テックにたまたまあったイグナイターを付けたら始動したらしい

純正の在庫が国内になく、しかも高額なので

ヤフオクでよく見るユーロモトエレクトリックスのイグニッションコントロールを入手

取り付けたらあっさりエンジンは始動した

やっぱりエンジンの電装系はパーツのストックが必要だな

見極めが難しいのでパーツ交換が一番わかりやすい

プラグのような部品とは違ってみな案外高額なのがネック

中古品も含め検討課題だ



それにしても今年はよく走った

2台持ちになったこともあるけど

久しぶりに走行距離が年間1万kmを越えた

出来れば来年も北海道へ渡りたいと考えているがどうだろうか

行けるかな



今年もより多くのPVをいただき本当に感謝しています

今どき、ブログなんていう文字ばかりの媒体を読んでいただける皆様に感謝しかない

いくら読者に主ねないで書いていこうと思っていても

やはりそこはちょっと気にしてはいます

だから気分だけで更新があったりなかったりってことだけは止めようと

月2回の更新を自分自身に課している訳で

これがボクの最低限かもしれないが皆さまに対しての誠意みたいなつもりでいます

そうしながら来年も無駄にながーいタイトルで

云わなくてもいい事ばかり書いていきたいと思います

いやほんと、申し訳ございません

皆様におかれましては何卒良い年をお迎えくださいますよう

遠き空の下よりお祈りしております

そして、いつかどこかの路上で・・・


 



ボクが住んでいるのは県内にあっては寒い方だけれど

所詮、太平洋側なので真冬でもまあそれほどでもない

雪も降るけど、積もっても夕方にはほとんど消えてしまうことが多い

いつもオートバイで散歩しに行くのはここよりもっと山の方で

15分も走れば標高も500mを越えてしまうので

冬には常に路面凍結の不安がある

12月はまだギリギリなんだけど

一日中陽の差さない山影や渓流沿いの道路

あとやっぱり橋の上はどこも危ない



いつもは作手(つくで)まで行って

そこから日によってさらに北の段戸山へ向かったり

三河湖の北側を山越えしたりするんだけど

もうそろそろ作手から先はかなり(路面状況が)怪しくなってきた

千万町(ぜまんぢょう)の先の峠道は一日中ずーっとウエットだし

峠付近の路面は乾いてるような体(てい)だが黒々と鈍く光ってかなり怪しげ

こんな状況で気温が氷点下に落ちれば間違いなく凍結するだろう

その先、国道301号線に合流してすぐの切通はもう警戒レベル

山から染み出したお漏らしのような水溜まりが凍っていた

もちろん凍結イコール転倒とはならないんだけど

操作によっては事故につながる状況であることに間違いない



この日は風がほぼ無くて

日向はホッとする暖かさではあった

いつもの「涼風(の里)」に乗り入れて自前カフェを開く

通常のOD缶やアルコール燃料はすでにちょっと効率が落ちている

プロイソブタンのOD缶が冬にはいいけど

急いでいるわけでもないので

のんびりとヤカンから湯気が上がるのを待つ



今年も例年のごとく意味もなく何度もここへ来た

オートバイ乗りも年季が進むと走るルートが決まってくるものだ

若いころは、それをツマらなくて退屈だと思ったりする

刺激は確かに少ないかもしれない

でもライディングの楽しみが詰まった良いルートがあるなら

何度走っても全く飽きないものだ

それに幸いにも日本には四季があって

同じ景色でも日々少しずつ変化していく季節を楽しむことも出来る

馴染みのサクラや馴染みの紅葉があり

山や田畑、鳥や空や雲や

川の流れに風の息吹に

四季それぞれの表情がある

飽きもせずに同じ散歩道を走られるのは偏(ひとえ)に彼らのおかげだ



先日車検を終えたばかりのクロ介くん(R100RS擬き)はといえば

オカメ(エンジンのフロントカバーのこと)の下からのオイル漏れを経過観察にしていたが

ガレージの中に染みを作るようになったのでやはり修理することにした




ボクサーツインのオカメからのオイル漏れは

ほとんどがジェネレーターのシャフトのシールの劣化だ

その他にその下にある茶筒(イグニッションパルスセンサー)のOリングの劣化

あとエアクリーナーのブリードから出るオイルが垂れることもあるそうだ

今回はシャフトのシールが劣化してオイル漏れしていたのだが

ついでなので茶筒のOリングもあわせて交換した

何度も云うことだけどこのクロ介

ボクが手に入れるまで15年くらい店頭で店番していた

走行距離は12000kmとまだ少なく

外観上はどこからもオイル漏れは見られなかったが

全く動かさずに15年

ゴムやプラスチックの劣化具合は正直よく分からない

分からないけど劣化しているには違いないので

納車の時にざっとリニューアルしたけど

走りながら、馴染ませながら出てくる不具合をひとつずつ潰してきた

フロントフォークのシールやリアショックのシール

シフトシャフトのシールやニュートラルスイッチ、オイルプレッシャースイッチ

プッシュロッドのシール

そして今回のジェネレーターシャフトシール

納車時にちょうどセルモーターが死んだのでそれも交換してくれている

つまりOHVボクサーの定番の劣化個所は一通り終わった感じだ

金属系の劣化は走行距離に左右されることが多いので

30000kmにようやく到達したクロ介にはまだ先の話かな

車検の時にスロットルワイヤーの同調を頼んでおいたんだけど

これ、やっぱりすごく重要で

アイドリングからの回転上昇がパーフェクト

この辺りが古いオートバイの真骨頂かと思う



アイドリングはいま750rpmくらいで安定する

そこからスロットルを開けると身震いすることなくスーッと回転を上げる

こういうのって自分でできるといいなと思うけど

やっぱりプロのメカニックにはかなわない

ネジの緩め方締め方だってレベルが違うと感じるし

音や手触りだけでそこからボクの何倍も何かを感じることが出来る

本当にすごいよね

とにかくエンジン絶好調で走るのが楽しい

ゴムパーツの劣化はほぼ潰せたので

あとは激しいオイル消費だけかな

来年はクロ介で北海道へ行こう

北海道のペースは正直SRではしんどい

いやまだわからんけど




12月の半ばなのに今年は木々の落葉が遅いね

むしろ紅葉真っ盛りといった感じで

まだまだお山は華やかに色づいて見せる




けれどここに来て寒気の流れ込みは本格化してきたのか

北海道や東北の日本海側はすっぽりと雪に覆われたみたいだ

そのうち南岸を低気圧がかすめればこの地方でも雪がちらつくだろう

もう山へ入るのはここまでかな

こんなに山は綺麗だけど

路面温度が低くてワインディングを楽しめない



今年も冬がやってきた

いつものように馴染みの景色たちにしばしの別れを告げて

春を待つ日々がまた始まる