開かないのかと思ったら一斉に咲きだして

咲き始めたと思ったら

春の嵐に一気に散ってしまった

今年のサクラは本当にあっという間に通り過ぎて行った

山を見渡せばすでに木々は萌黄色の芽を吹き

一年でいちばん気持ちの良い時期に入った



北海道へ行く準備をぼつぼつ始めようかと思うが

フェリーの予約をしてしまうと

もう他にあまりやることはない

大まかなルートは決めてみたけど

一日に300kmか400kmと考えると

なかなかにしっかりとした行程は組めないものだね

前にも書いたけど

野付半島の道道950号線と

神威岬には行きたい

あとタウシュベツの橋梁がもう崩れそうなので見ておきたい

そうだな、前に食い損ねた豚丼は帯広辺りで泊まれば食いに行くか

雨のことは考えても仕方ないけど(カッパを着るだけ)

時期的にまだ寒いんじゃないかという心配はある

まあ都市部にはイオンSCとかあるのでどうにもならなければ現地調達だ



SR400はというと

タイヤが少しあやうい

特にフロントにはヒビが見られる

間に合えばタイヤとチューブは交換しておこう

暇を見ては各部の締め付けをチェックしているけど

工具は持って行った方がいいな

チェーンオイルも持参だ

本当に荷物は最小限と思っているけど

やっぱり1週間、2000kmとなると

そうはいかない部分も出てくる

任意保険のロードサービスは100km無料

さらに修理後の搬送も全額無料

なんと帰宅旅費までもらえる

これはありがたいし頼りになる

もちろん本当にお世話にはなりたくないけど



国道でなく出来るだけ道道を走りたい

帯広から釧路そして別海、標津へ続くルートを見つけた

あと能取湖からサロマ湖、留辺蘂へ抜けて上士幌なんてのもある

どこを走っても北海道は平均速度50kmで予定が組めるから

見つけたルートをその日の感覚でつなげて走れる

その日毎の目的地(宿泊地)を決めれば

あとは10時間くらいで走れるルートを作る

途中2回くらいのんびりしても400㎞くらいは走れるかな

天気が悪いと逆に距離だけ伸びるけどね

そういう日は移動日と割り切って走ることにする



それにしてもフェリーで足掛け3日というのは何とも遠い

ちょっとした異国感覚だ

アイヌ語もじりの地名も雰囲気を盛り上げる

事故にだけは気を付けて

久しぶりのロングツーリングを楽しみたい



あんまり話題が無いので唐突だけどこのごろ気になる2題

とは云え批判的な悪態だけど



名古屋モーターサイクルショーに行ってきた

去年久しぶりに行って

もう次はないな、と思ったのにね

新車の展示会なので当然だけど

あまりオートバイの本質には出会えない所だ、あいかわらず

利益と妥協の狭間で生み出されるオートバイは

どんどんつまらない乗り物になっている

商品が顧客のニーズの反映であるならば

今のライダーはとってもつまらない楽しみ方をしているように見える

誰かが、どこかのメーカーが

「王様は裸だー!」と叫ばなくてはいけない所まで来ている

ボクにはそう見える

年寄りのボヤキではない

オーディオ、写真、と趣味を奪われた経験から云っている

物が売れるかどうかが頼りの資本主義経済の弊害

資本主義は間違いなく多様な人間性という部分でその本質を軽視する

多様性とは程遠い経済至上主義




キャブレターの外見に似せたインジェクター

エンジンフィンを持つ水冷エンジン

カウルの中のコストカットエンジン

ギアポジションインジケーターなんて素人臭い装備

燃料計?信じたことないね

そんなものいるか?

そしてその方がクールだ

人間の感性と適応力を活かした方が趣味にふさわしい

SR400のキックインジケーターなんて

仕組みがわかればもう見ない

因みにSR400のキックスタートに必要なのは

踏み抜くことではなくキックスピードだよ

まさにキックだ







ライテクの話

ライテクと云うとみんなちょっと身構える

おそらくどこまで行っても確信が持てないからだろうな

それがスポーツ性であり趣味性につながっている訳で

ボク自身はオートバイに乗る意味はここにしかないと思っている



最近ヤマハの元エンジニアとか元GPライダーとかが

プッシングステア(ステアトルク制御)とか非セルフステアとかいって

「逆操舵」を喧伝しているのをよく見るけど

あれ、やばいね

云ってることはもちろん間違っていないけど

ライテクを語る時にそれらしい造語を出すと誤解を与えることが多いと感じる

40年くらい前にオートバイ誌で盛んに云われた外足荷重とか

抜重、荷重もそうだね

逆操舵って雰囲気ではわかりづらい

でも、下りの小さなコーナーが続くワインディングでは

おそらく誰もがやっていることだ

多分あれのことだと思う

シケインの切り返しなんかで

GPライダーが素早く切り返すためにハンドルを抉ることはあるけど

あれとはちょっと違う(原理は同じか)

下りコーナーで意識すればわかるけど

逆操舵というよりIN側の保舵に近い

肩と肘を畳んでIN側のグリップをホールドする

逆操舵のタイミングでフロントの接地点がIN側へ移動すると

キャンバースラストが生じてオートバイがリーンするというけど

リーンしただけではオートバイは曲がらない

車体がリーンしたことで遠心力が発生するが

それとタイヤのグリップによる反力がバランスする

このリアの内向きのタイヤのグリップ力とキャンバースラストに

フロントがセルフステアすることで曲がっていくのだ

舵が切れないと曲がらない

極端な例を挙げれば極低速なら左にリーンしながら右へ曲がることが出来る

これは舵が切れているからだ

リーンはコーナリングで発生する遠心力に効率よくバランスするためで

遠心力を受けた車体がタイヤのグリップという反力を受けて曲がっていく

キャンバースラストよりこちらがメインだろう

そして車体の行き先はフロントの舵が決める(スリップアングルが付くけど)

とはいうもののコーナリングはそんなに単純ではない

スピードやコーナーの曲率

重心位置や車体の姿勢などすべてが常に異なっている

IN側への体重移動の準備をしながらブレーキングし

IN側のグリップを保舵すると

ジャイロモーメントによるバランス状態が一瞬破綻して

車体がリーンを始める

(これを逆操舵と云っているようだ)

リーンと同時に車体には遠心力がかかるので

それと同時にOUT側の踏ん張りを解いて

IN側へ圧し掛かるように体重移動するとグッと旋回を強める

スロットルとリアブレーキで加速力を調整しながらトラクションを高め

さらに内向力を高めるため頭を低くして加勢してもいい

エンジニアの人もリーンを終えたらセルフステアに移行すると云われている

けれどそのあとリーンアングルをさらにプッシングステアで調整するとも説明されているけど

それって単に話を複雑にしていないですか

結果的にはそうであっても意識をそこへ持って行くのは

実際のコーナリング状態では危険だと思う

やってみればわかるがプッシングに気を取られすぎると

スピードコントロールが後手後手になる

スロットルでトラクションと遠心力を探りながら旋回していけば

無意識下でもステアリングの保舵力は調整されている

この「無意識」こそが真の意味でのライテクであって

身体の動きや操作をすべて分解して名前を付けるのがライテクではないと思うが

どうですかい



けれど「逆操舵」とか「プッシングステア」の言葉はどうかと思うけど

プッシングステアは皆が大抵やっていることだ

だから理論的には絶対に正解で間違えではない

ただ単に逆操舵だけを意識的にするのは結構危険だと思う

逆操舵は結果であって反対側にハンドル切るっていうニュアンスとはかなり違う

オートバイはあくまでリアタイヤを主に考えるべきで

フロントを何とかして、はやはり危うい

同じ2輪の乗り物「自転車」みんな乗れると思うけど

初めて補助輪を外した日に

何かすごい理論を理解した訳じゃあない

「バランスをとるとは」を身体が理解したのだ

今それを乗れない人に説明しろと云われてもできない

「右に倒れそうになったら左へ逆操舵するんだよ」

これでは絶対に理解できない

名前を付けて理論ぽくしたいのはわかるけど

(カッコいいからね)

頭で考えるより身体で感じる方が大切

Don’t think.Feel.(by ブルースリー)

余談だけど

縦置きクランクのフラットツインは

スロットルの抜き差しでこのジャイロモーメントの抜き差しが出来るよ



はー、熱くなりすぎたよ



朝、外へ出てみると

ゼンマイをギリリッと巻くような特徴的な鳴き声が聞こえた

反射的に空を見上げるとはたしてそれは南国から帰ってきたツバメたちだった

まだ冷たい早春の空気を切り裂いて

3羽のツバメが滑るように飛び回っていた

いよいよ、春だ

さーて、今年はどこへ走りに行こうかな?



それにしても3月の半ばを過ぎて思いの外寒い日が続いた

結局最近ではいちばん春がのんびりに見える

ふくらみ始めた桜のツボミも少しこれには様子見

一足先に咲き揃ったモクレンやコブシも

少し花付きが悪く見える

つまりはそういう年もあるということか

どんなに気象予報にスーパーコンピュータを用いようとも

「自然」は、当たり前だけどそれを顧みない

それが「自然」というものだ

もともとボクたち日本人はそのことをよく知っているはずの民族

だから古来から自然やその営みを畏れ崇めてきた

人間の想像を超えることなどきっとこの宇宙にはたやすいことだ

浅はかで傲慢なこの集団は少し謙虚に過ごすべきではないのだろうか

アタマを使いすぎていることに気付かない

自分とは誰のことなのか

自分とは何を指していうのか

ちっともわかってないのだ

自分とはこの天然の身体のことだ

だから自分のことはこの身体に任せておけばよい

この世界の美しさや不思議さを理解できるおそらく唯一の存在として

謙虚に生かしてもらうだけで良い



そして今日はついに激しい雨と雷の一日になった

冬と春の最後のせめぎ合い

そして春がその勝利を高らかに告げる

「春雷」はそんな春の勝利を告げる合図だ



まだ少し寒さが残るかもしれない

と思いながらも北海道へ行く5月のフェリーを押さえた

本当は行き当たりばったりがボクのスタイルだけど

「早割り」なるものの価格がメチャ安なのだよ

だから協議(ひとりですけどなにか?)の結果

雨でも寒くても何でもいいじゃないか、と主張するビンボー族に押し切られ

予約ボタンをクリックしておいた

安いからという理由で2か月も前に予定を立てるなんて

我ながらどうにかしてる



ついでに云うと

こいつもビンボー族案件なのだけど

400ccであるSRが使用機体に選出された

クロ介(980ccオートバイ)とのフェリー代差額がなんと7500円

これはとても看過できない金額だぜェ!と奴らが食い下がる

ビジホに1泊、往復分なら2泊分は浮いてくるんですぜェ!と

フルドレスのハーレー何某とかフルパニアのR-GSなんかと比べれば

クロ介なんぞ中型とさほど違わぬのに

乗船時に車検証まで見たがるなら重量で料金設定して欲しいね

まあここでグチっても詮無い事ではある



細かいルートや日程を決めるつもりはもちろんない

まだ行っていないニセコパノラマラインと野付半島の道道950号線は走りたい

そして今回はオロロンとエサヌカはあきらめておく

決まっているのはこれだけ

荷物も「寅次郎」に倣ってミニマムにしたい

下着、着替えは2着くらい

地図とipadと充電器

タオルとポリ袋くらいかな

あえてコーヒーセットは持って行こう、のんびりするために

イスはやめてピクニックシートだな

あれならどこでも寝ころべるし

北海道だからと云って特別に期待するものは何もない

十数年ぶりに北海道の道たちに会えることだけが

ただただ楽しみだよ

照るも良し、渋るも良し

それこそボクが望むオートバイの旅というものだ



春雷の一日が明けて

久しぶりに青空が広がった

激しい雨に空気中のチリが流されて視程が良い

高いところへ昇って行って景色を眺めるには最適な日だ

クロ介を引っ張り出してそそくさと支度する

暖機を始めるがやはり仕上がりが早い

寒いといってももうそこまでではないのだろう

迷ってライトダウンを羽織ったけどこれはもういらなかった

汗かくかな、と思いながら久しぶりに高速に乗る

縦置きクランクのフラットツインは今日も快調

春の空気を切り裂いて滑るように走る

何度も云うけど

一度この縦置きクランクは経験しておくべきと思う

それくらい独特な感覚がある

BMWかモトグッチ

ああホンダのゴールドウィングもあるか

グッチは90°V型だからちょっとフィーリングが違う

ドリュウウウウウウウーと軽やかに吹き上がる

でも気持ち良さは少し似ている



浜松SAのスマートICで下へ降りる

この辺り、引佐の山は硬い岩でごつごつして険しい

都田川にぶつかって風車が立ち並ぶ山へ登っていく

狭くて急な取り付け道路をゆっくり上ると展望台に着く



ここから遠州平野が一望

その向こうには遠州灘が広がり

東に目を凝らせば伊豆の山並みまで見渡せる

視程は約100km

夜景がきれいそうだけど

夜中にここへ来るのはちょっと大変かもしれない

本当にこの風景以外何もないところ

もちろんこの景色があればそれでよい



そのあと久しぶりにオレンジロードへ行ってみた

むかしはシュワンツとかドゥーハンが煙を吹いて走っていた

そういうボクもガードナーとか思っていた節がある

いまはむかし、だ

もちろんもう峠を攻めるなんてしないけど

あの頃より確実に上手くなっているとは感じる

滑らかでスムーズな走らせ方が出来る

そしておそらくマージンが増えた

ワインディングで大切なのはマージンだ

それが自分だけでなく周りの人の安全にもつながる

安全に走ることが何より最優先だ



やっぱり春は気持ちが良い

ベタな言い方だけど生まれ変わったような開放感がある

もうすぐ桜も咲くだろう




「春」と云ってももう良いのだろう

水面を渡ってくる風が緩やかに南から吹き付けるこの海岸

今日は波も穏やかで遠くまでふんわりと凪いでいた

アルコールストーブで沸かした湯でコーヒーを淹れると

少しコーヒーにアルコールの匂いが移ると思わない?

あ、思わないか

そんなもやもやとしたコーヒーを啜りながら

渚に打ち寄せる波を飽きもせずに眺めている



この海岸にはもう40年以上前から繰り返し来ているけど

海の方を眺めている限りでは本当に何も変化が無くて

遠くに見える渥美半島に少し風車が建ったくらいか

消波ブロックも防波堤もそのまま

だからここへきて海を眺めていると

まるで時間が止まっているかのように感じる

過去も未来も何も変わらず

ボクが生まれる前も

ボクがいなくなった後も

ここでは本当にそんなことがどうでも良いと思えるから不思議だ

自分の意識をどこかへ放り投げだして心の底から安堵できる空間だ



とにかく、もう春だ

3月に入ったその日は

あんまり陽気が良いので

いつもの「涼風の里」へ行ってみた

暖かかったとは云え

山里の冬にはそれなりの厳しさがある

ヘルメットのシールドから忍び込む風は

まるでモランの溜息のように凍えて

ボクのカサカサの頬を冷たく切りつける

冬用の綿の入ったグローブの中ではすでに指先が痺れていた

凍結の感じはほぼ無いけど

路面温度は相当低そうだから少し気を遣う

それでも案外いつもどおりに「涼風」に辿り着いた



3月は「風の候」だ

移動性の高気圧が東の海上に抜けるとそれを追って低気圧が近づく

南の強い風を呼び込んだ後

通過時には嵐のような雨と風をもたらし

雨が止むと今度は北寄りの冷たい風を吹き込む

正直云って夏や冬の厳しさよりこの季節の「風」が嫌いだ

雨より断然「風」がイヤだね

風の中では思考が停止してしまうのだ

オートバイに乗って走る様を俗に「風になる」とか云うのがあるけど

「風になる」なんて一度だって思ったことないね

むしろいつも「風に逆らっている」って感じじゃない?

この日も風が出ていたが幸い緩やかなものだった

少しためらったけどその風の中でコーヒーを淹れてみたら

それはなぜだかちょっといつもより旨く感じた

風は嫌いでも

風の中で飲む熱いコーヒーは好きなのかもね

今日のコーヒーは風が強かったのでガスのストーブで湯を沸かした

そしたらそれはやっぱりガスの匂いが少しした

いや、これはカップのステンレスのクサ味かな



SRだ

なんと云う青なのかわからない「青」のSR400

ヤマハのHPで見たら「グレイッシュブルーメタリック4」とあった

ますます分からない

金属的な光沢の灰色掛かった青「4」

なんだ、それ?

1と2と3を見てみたい



名前はまだない

自分が買ったオートバイにいちいち名前をつけなくても、とは思うが

何となくいつも名前で呼んでいる

実はこの微妙な「青」色から密かに

「シータ」とか「シーちゃん」と呼んでいた

空から青色の光を放つ飛行石の力でふんわりと下りてきた

ラピュタの正統な王位継承者

「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ」

いや、やっぱり構えすぎで気恥ずかしい

きっとまだ変わると思う(気に入ってはいるけど)



SRだ

何度も云うが偉大なるXT500(パリダカ総合優勝にして連覇)という

エンデューロ(ヤマハはトレールという)モデルが素(ベース)

SR500はそのオンロード版として生まれたいわば双子だ

そして日本の特殊な免許制度に合わせるべく作られたSR400は

それらシリンダーのストロークをダウンさせた兄弟モデルで

ボアストロークがほぼスクウェアな500のエンジンを

ヘッドから作り直す予算が無く

コンロッドを長くすることでストロークを減らし生まれた

つまりSR400のショートストロークのエンジンは

大人の事情の結果でありおそらく必然ではなかったのだと思う

しかしこのことが逆に400を特別な存在にしたのだとも思える



それまでの単気筒エンジンたちと比べて

クランクマスが小さなSRのエンジンは(500に比べれば400の方が大きいが)

どうしても元気に回りたがるエンジンだ

キャブレター時代のSR400は7000rpmの最大出力に対して

最大トルクを6500rpmで発生させていた

これはインジェクションモデルになり少し下がったが

それでも最大トルクは5500rpmでのもの

だから(マルチとは比べ物にはならないが)やはり回して使うエンジンであり

現にエンジンもどちらかと云えば「回りたがり」だと感じる

巷で5型とか最終モデルと云われるボクのSR400だって

意識しなくてもスムースに高回転まで吹き上がっていく

もちろん4500rpmを超えると

お尻、足の裏や掌と云ったオートバイに触れている面に

強い振動が伝わってくるが

それはそれで刺激的でまったく悪くない

振動自体は硬質で強くはあるが角が尖っていないので

快か不快か、ならば間違いなく「快」だ

実際あまり気にせずに強く加速させ巡行へ持ち込むと

まるでデカいカブに乗ってる感じさえするのだ



けれどこの5型が出た頃

オートバイの専門誌で盛んに低速からの力強さが取り上げられた

中速域のトルク感はまるで排気量が上がったかのようで

日常域でスポーツできる「大人」のモデル

SRの完成形とまで絶賛され盛んにもてはやされていたのを思い出す

そもそもビックボア×ショートストロークのSR400

しかも従来のビッグシングルと比べて小さなクランク

ECUのコントロール位でそんなにも性格が変えられるものかと思うが

如何せん

ボク自身が以前のキャブ車に乗ったことが無い

唯一SRX-6をちょい乗りさせてもらったくらいで

あの時の記憶といえば左折とかで減速した時

ギアの選択を間違えると怖ろしくスナッチが出て

扱いづらかったというものくらいだ

だからこれは想像なのだが

「市街地でクルマに続く時5速へ入れずに4速キープだった」

という記述を見たことがある事からも

おそらく以前のSR400も回転を落としてしまうとスナッチが出て

粘るエンジンと云われながらもやはり使いづらかったのではないのだろうか

それをECUの魔法でトルクバンドを下げ

おまけにそこら辺で使うと排気音もよく聞こえる演出まで加えたのだ

ゆっくり走っても気持ち良いですよって云いたくて



まーこれまでの印象から云えばそれも決して悪くない

ただし4000rpmからのトラクションは逆に感じにくくなったんではないだろうか

2500くらいから4000rpmくらいまで続くトルクの盛り上がりは

それ以上回してもあまりはっきりとはしなくなるからだ

けれど実はボク

あることに気付いてしまった(思い出すだけでついニヤッとするほどね)

それはSRの5速ギアとこのエンジンの相性が

とても特別なものになっているということだ

「5速 2000rpm」

多分以前のSR達なら少しスナッチを感じたんじゃないかな

でも5型のSRはここから使える

この時の速度約40km/h

そこからスロットルを半分くらいガッと素早く開けると

一瞬のタイムラグのあとダッダッダッダッとダッシュを始める

それは

2500rpm 50km/h強

3000rpm 60km/h強

3500rpm 70km/h強

そして4000rpm 85km/hと

この時のエンジン音と排気音そして加速感がヤバい位だ(嫌いだなーこの言葉)

実質的な加速力ではなくあくまで加速感

フィーリングの話だ

それは今までどんなオートバイでも感じなかった感覚で

得も云われぬ快感を伴う

取り付かれたサルのように繰り返しスロットルを捻ってしまうほどだ

こんなにも大量のエンドルフィンの放出を実感したのは初めてかもしれない

そしてこれこそが低速からのトラクションの魅力なのかと気付いた

ECUによって作り出されたこの特性

昭和世代のジジイにはそれが癪に障るけど

やっぱり無条件で楽しい

意味もなく60km/hくらいでスロットルをガバッーガバッーって

おサルは何度も何度も繰り返しやってしまうのよ

そしてそれはやっぱりコーナリングにも効く

コーナー入口でエンジンを2500rpmに置く

3速 35km/h→4速 45km/h→5速 55km/m

とバンクしながらでもシフトアップしていき

4000rpmまで引っ張れば80km/hを超える

上りがキツければ4速だろうけど

高速コーナーなら5速ホールドのままスロットル操作だけで走れる

そしてその方が楽しいのだ

え?

遅い?

そうなんだよ、遅いんだよねー

でもブラインドの対向車に怯えながらペースを上げすぎるより

しっかりとトラクションの掛かったコーナリングの方が

断然楽しいよ



大型のオートバイに乗り続けて

老いた時どこへスペックを落とすか

これは結構当事者には問題なんだけど

個人差も大きいしね

バイクを操るこだわりや深みを感じられるという視点が大切なのだと思う

ボクらレプリカ世代にはのんびりトコトコなんてできない

だから原二、軽二輪はやはり楽しくない(2ストなら別だけど)

250を超えると車検も問題になるけど

ひとつのレベルとしてやっぱり排気量500ccくらい

最大トルク3以上

この辺に答えがあるような気がする
 



このところの暖かさに驚いたのは雲雀たち

どいつもこいつも慌てふためき

我先にと競いあっては花粉交じりの空へ昇っていく

おかげで長閑な冬枯れの田畑には

そこいら中でけたたましい囀りが響き渡ることになる

それはもう大騒ぎ



そういう人間様の方だって

予想外のこんな陽気

何とはなしにホッとした気持ちにもなるもんだ

雲雀たちも人間も同じ国に暮らす朋輩ということか

私事で云えば

この冬に新しいオートバイを手に入れたりしたもんだから

いつもの冬よりマシマシで

春を心待ちにしている

だからこんな陽気ならもう山へ行っても良いかも

と、途端にそわそわざわつき始める今日この頃だ



走り出してみると

まだまだ路面には乾ききらずにウェットパッチが残る

それでも気温はこの時期としては異様に高く

フリース素材のスウェットに綿のスイングトップを羽織っただけだ

首元を抜けていく風さえも心地よく感じる程だった

チェーンクリーナーを買いに寄った近くの用品屋

駐車場から空を見上げるともう青空だった

--――これなら山へ行ける(ウヒヒッ)

すっかり慣れたキックスタート一発

でもこれ本当にいい

「さぁ、行くぞィ!」とSRにも自分にも気持ちが入る



中央総合公園の丘陵を越えて

下山(しもやま)の方へ踏み込んでみた

両側に樹々が生い茂る細い県道には

このところ続いた風雨のせいで

枯れた枝が降り積もっていた

陽があたらぬ場所も多くて少し気を使うが

それでも山の道は久しぶりで楽しい



ワインディングではまだSRのステアを掴みきれていなくて

INに寄りすぎたり

コーナー出口で帳尻が合わなかったりはある

でもフロントの空気圧をデフォルトの1.75barにあわせてみたら

少し従順になったかな

体重がある方なのでリアのイニシャルをかけてみたのも良かったか

いや、こいつはかけない方が良いような気もする

やはり向き変えの指示を出してからINへ向かう感じがすごい

少し上体をかぶせて(肘をまげて)

アタマをステアリングヘッドのやや内に置いたまま

いつもよりコーナーの外側を少し長めにトレースしながら進入して

向き変えポイントでスッと抜いてやるだけで

SRが鋭く内向し始めるのがわかる

あまりエンジンを引っ張らずに小刻みにシフトアップして

トラクションをかけ続ける方が良いというコメントを聞くけど

5000rpm以上の振動やパワー感も悪くない

あの音と振動はエキサイティングだ



でも細かくシフト操作しながら

少し高いステアリングヘッドを右へ左へとやっていると

オフ車に乗ってるような楽しさが蘇る

知ってのとおりSRはXTベースなので

股間をタンク後端に乗せて

上体を立て、肘を張ると林道へも行けそうな匂いがする

もともとロングストロークのエンジンって好きじゃない

高回転高出力で育ったもんだから

ここが気持ち良くないと好きになれない

XLR250が楽しかったのはそれかな

たまに代車で貸してもらったブロンコも愛せそうな予感がしたし

キックスタートだって250レプリカやオフ車は当たり前だった

あれだな

家系の演出されたラーメンより

50年続いてる町中華のラーメンが旨い

これに似てる



SRを引き取って家へ向かいながら

ちょっと心配してたのは

もうクロ介(BMW R100)に乗らなくなっちゃうかなってことだった

R100の自分的なマイナスポイントは

停まっている時の取り回しの悪さだ

あとハンドルの切れ角が小さくてUターンに少し気をつかう事

まあこの2点だ

入ってはいけない所に入った時の対応がとても厳しい

何度かいっそ倒してシリンダーヘッド軸にして回そうかと思うくらい

ニッチモサッチモになることがあるのだ

少なくともSRにはそれは絶対ないのだろう

でも実を云えば

クロ介に乗らなくなるかもなんて不安は一瞬で払拭された

クロ介で走り出した瞬間

五感からどばーっとドーパミンが出るのを感じた

好きなんだから当たり前だけど

BMWフラットツインはモノが違うのだよ

良いか悪いか

上か下か

高級か低級か

そんな話ではない

SRとR100は「モノが違う」



SRは間違いなくスポーティーだ

24PSしかないけど

鋼管のフレームとスイングアームだけど

スポーツの魂がある

レーシーではなくスポーティー

誰よりも早く走り切るのではなく

オートバイを工夫して走らせるおもしろさ

それはワインディングだけでなく

シティロードでもカントリーロードでも可能だ

絶対速度に縛られずに走る楽しさを感じられる

これこそがSRの個性であり魅力だ

フラットツインの独自性や趣味性をもってしても

SRは不思議な魅力でライダーの心に忍び込む

そしてそのまましっかりとそこに根付いてしまうようだ


 



このごろのその日暮らしは

あー、と思いついては

おもむろに(気になる箇所を)覗いてみる

そして、あーやっぱりか

と(不具合箇所の)手直しにかかるか

あるいはピカピカパーツたちを磨きにかかる

そんな感じだ



別に愚痴りたいんじゃなくて

激しい落胆の拠り所が欲しいから書かせてもらうのだけど(いや本当に)



誰にだって単なる見落としや見当違いならあるだろう

でもそれを生業とする者ならばどうだ

中古車販売において販売店の責任は大きいはずだ

昨日免許を取ったばかりの20歳の女の子だってお客さんになりうるのだ

重要度の高いブレーキ周りのチェックを忘れるなんてことがあるのだろうか?



実は今回購入した中古のSR

ブレーキパッドが摩耗限界を超えていた

でも

それに気付いたのは別の不具合からだった



しばらく走った後

再始動しようとするとエンジンの始動に手間取るのだ

フューエルインジェクションなので始動は容易い現行のSR

それはちょっと予想外で

そのたびに空キックを数回かましてやる必要があるのだ(ガス抜き)



プラグでも見てみるか、とプラグキャップに手を掛けたらグラリと動いた

その時は、SRの振動って強烈なんだな

こわいな、とちょっと笑ってしまったボクだった

そのまま外しにかかる

ごそごそと覗き込んでいると

今度はプラグの右斜め上に何かのケーブルがぶら下がっているのを見つけた



それはプーリーから脱落した戻し側のスロットルケーブルだった

「いやーんSRったら…こわいー」

じゃねェーんだよ

いくら振動激しくてもプーリーからケーブル外れるか?

じゃあこのプラグの緩みも怪しいな



ふいにその時ちょっと気になっていたことが脳裏に蘇った

納車の時にフロントブレーキのキャリパーがダストまみれだったことが

気になったのだ、見てないのか?と

スライドピンを抜くだけでキャリパーは外せるので

取ってみたらば「ビンゴ!」

じゃねェーんだよ

ピストン側のパッドはインジケーターの溝がほぼゼロ

ピストンもキャリパーもダストまみれ



メルカリで買ったんだっけ?

だまされちゃったー

こわい、自己責任だもん、自分がしっかりしないとね

ウソ

オートバイ屋さんで買いました



もともと嫌いじゃないから自分でせっせと手直しするんだけど

正直もうあの店にはいかないと思う

いつものテックさんに「申し訳ないけど……」と

他店購入車のメンテをお願いしてみたら

快く引き受けていただけたのがせめてもの救いか



でもSRってメンテがしやすい

キャリパーもシングルだし

タペットもIN OUT一組

部品はみんな剥き出しだし

インジェクションなので燃料ポンプが面倒かな

タンク外すのにパイプやケーブルまであるから

昨日はエアエレメントにタンポポの綿毛が残ってるの発見

いつ吸い込んだヤツやねん



なんやかんやでひと通り触ってやって

おかげでSRとの親密度はいっきに深まった

それはそれでよかったけどさ

タイヤにヒビがあるな、とか

ブレーキオイルちょっと汚いな、とか

取説もおまけ工具もないんだ、とかね

そんなのはいいんだよ

ただね

信頼関係を築く前にその気も無くなることがなんだか切ないのよ



本当はね

どうでも良いからもっとSRで走りに行きたいよ

本当にヤバいくらいかわいいやつだ

すべてが予想以上でうれしい

こんなにボクに響くオートバイなら

もっと早く出会いたかったと少し後悔している

けれど

出会うタイミングには本当に微妙な機微があり

20代や30代でSRに乗っていたら

こんなにも心惹かれなかったかもしれないとも思う

改めて数えてみたら

このSRで32台目のオートバイだった(我ながらちょっと引く数字だ)

本当にありとあらゆる種類のオートバイの果てに

SRを手に入れたことは

やはり必然だったのかもしれない

本当にこれが生涯最後のオートバイになるんだと思うけど

ボクが免許を取ったとき(1980年)にはもう販売されていたオートバイに

40年も経って最終的に出会うなんて

まるでチルチルとミチルになった気分だ

SRとボクのキャリアには不思議な縁があるのかもしれない