207.Dancing In The Dark/Bruce Springsteen | メイン・ストリートのならず者season2

メイン・ストリートのならず者season2

ブログの説明を入力します。

1984年3月のある日の明け方、ボスことブルース・スプリングスティーンは、ホテルの一室で一人ギターを抱えて曲作りに取り組んでいた。
当時製作中のアルバム『BORN IN THE U.S.A.』のレコーディングで作られた70曲以上のなかから、10数曲を選曲してアルバムを完成する最終段階に入っていたのに、である。

それは、前日に彼のマネージャーであり、親友であり、そして良き理解者でもあるプロデューサーのジョン・ランドーからの一言がきっかけだった。
「ヒット間違いなしのシングル曲がない」
前作の『ネブラスカ』(自宅でアコースティック・ギターとハーモニカだけで録音された異色作)を支持してくれたファンのために、今作では会心のシングル・ヒットが必要だとランドーは考えたのだ。
ボスはランドーの一言に反発した。
「俺はもう70曲も書いたんだ。また別の曲が欲しけりゃ自分で書けよ!」
時々議論を交わすことはあっても、ここまでランドーに怒りをぶつけるのは、ボスにとっては珍しかった。

それでも夜中にレコーディングを終えてホテルに戻り、明け方になってランドーとのやり取りを思い出しながら、ボスはギター片手に思いついたフレーズを口ずさんだ。

夕方になって起き上がっても
言う事なんて何もない
朝になって家に帰っても
同じような気持ちでベッドに入る
ただただ疲れて
自分自身にうんざりしているだけ
なあ、少しばかり手を貸してくれないか

溜まった鬱憤を吐き出したかのようなそのフレーズは、そのままアルバムからのファースト・シングル「ダンシン・イン・ザ・ダーク」の歌い出しになった。

ボスのギターではなく、ロイ・ビタンのシンセサイザーによるリフとエンディングのクラレンス・クレモンズのサックスをフィーチャーした「ダンシン・イン・ザ・ダーク」は、ランドーの思惑通りヒット・チャートを駆け上った。
当時まだ女優としては無名だったコートニー・コックスをボスのファン役に起用し、エンディングでステージ上のボスに呼び寄せられて一緒にダンスを踊るという内容のミュージック・ヴィデオも功を奏した。
その結果、4週連続で全米第2位を記録し、ボスにとって最大のヒット曲となった。
この時、1位にいたのがデュラン・デュランの「ザ・リフレックス」(1週目)とプリンスの「ビートに抱かれて」(2~4週目)であり、3週にわたって全米ナンバーワンを阻まれたプリンスに対し、ボスはユーモアたっぷりにコメントを残した。
「かつてプリンスとして知られたアーティストよ、恨むぞ!」