星組1789、あまりの大傑作で感動したので、月組初演版(役替わり・新人公演含む)、オリジナルのフランス版(Youtubeで全編公開されている:)、8/19~23の代役公演等のバージョン違いを鑑賞し(東宝版、星組新人公演は未見)、文献をいくつか読んで周辺事情を調べました。公演中に変わっていったところもありましたね(アントワネットの「ポリニャックぅ♪」の言い方とか、ソレーヌとシャルロットのアドリブとか)…さらに「ひかりふる路」「スカーレット・ピンパーネル」などのフランス革命に関係する宝塚の演目もこれを機に観ました。
↓オリジナルのフランス版。全編公開されています。後述しますがデムーランのソロ曲になっている「サ・イラ~」のサビ前に注目(1時間28分頃~)
バージョンの違いや史実との相違点を調べていくと、特に今回の星組版はこれまでのバージョンと比べてもかなり洗練された、ダレ場を徹底的に排することであの異様なドライブ感を生み出したものであることが分かりました。
もう今日で終わってしまうのが寂しい限りですが、以下に年表形式で劇中の出来事と史実をまとめてみました。1789を機にかなりフランス革命への興味がわいてきたので、今後も調べて1789のことを思い出そうと思います…
1788年夏 ボース地方(Act1 第1場)
・1788年7月25日の出来事であることが冒頭の税務役人のセリフからわかる
・ロナン、父をペイロールに射殺され農地を没収されて(妹ソレーヌを置き去りにして)パリに出る
…月組版では、父が射殺された後に「叫ぶ声」を歌うが、星組版ではカット。冒頭と終盤が対になるような構造だが、話のテンポ的には削って大正解だと思う
1か月後(=1788年8月25日頃) パリ(第2場A)
・デムーラン、ロベスピエールが演説。通りすがりのロナンが茶々を入れたところ、2人に印刷所に連れていかれる
…月組版では、行き倒れ状態になっていたロナンが倒れて演説が止まり、俺に気にせず続けてくれと言うロナンにデムーランが「君のような人を助けるために活動している」と救助を優先し、ロベピに演説を丸投げ(そして困惑を露にするロベピ)。デムーランは初対面から数秒で仕事を斡旋し、マラーもその場にいて快諾している。
同日 印刷所(第2場B)
・印刷所での会話~「革命の兄弟」~ロナンに仕事を斡旋する
1789年4月 ヴェルサイユ宮殿(第3場)
・アントワネットが劇中で最も調子に乗っている時期
…ポリニャックの呼び方が変遷していったが、特に最も浮かれている感じの「ポリニャックぅ♪」がよかった
…フランス版では、ロワゼルとトゥルヌマンが異様に軽快な動きで階段を駆け下りながら現れて面白い。なお、フランス版におけるラマールは禿頭の小男
・王太子の家庭教師ポリニャックから「明日の夜、フェルゼン伯爵がパレ・ロワイヤルに来る」と伝えられ、オランプを案内役として赴くことにする
…劇中では4月24日とは明記されていないが、「明日の夜」にパレ・ロワイヤルに行くことになっているので、その前日の24日の出来事だとわかる
4月25日 パレ・ロワイヤル(第4場A~C)
・ロナン、大家に家を追い出された挙句、ダントンに「最近拾った上玉(の娼婦)」として紹介されたのが妹のソレーヌ。「兄に捨てられ~♪」とストレートに歌われて走ってその場から逃げ、街の片隅でふて寝(乞食に酒を奪われるが、乞食が棒を忘れる)
…月組版ではダントンの「女はできたのか?」に対して「そんな暇なかったよ。あんたたち学のある革命家と違って、俺たちがパリで暮らすのは大変なんだ」と返し、「その格差をなくすために戦っているんだ」と言うダントンに「そのつもりだってのは分かってるよ」と返す、というやりとりがある。星組版ではここが削られたことで、ロナンの革命に対する温度感がかなり違って感じられる。
…ダントンがデムーランとリュシルのキスを見た際のリアクションには変遷があったが、東京の途中からは「えっ、なんで?」が長かった。
…天華さんデムーランは、「印刷代は後払いと言っていたのに」がかなり困惑していておぼっちゃんなんだな…という感じがしてよかった
・オランプ、アントワネットをパレ・ロワイヤルに案内してフェルゼンと再会させる
…月組版ではここで一曲歌う(時間がないと言われているのに)
・色々あった上に痴話喧嘩で起こされたロナン、誰でもいいから喧嘩をふっかけたいというモードでフェルゼンを挑発、お忍びのはずのフェルゼンがカッとなって挑発に乗り決闘
・集まってきた秘密警察にたまたま持っていた革命を煽るビラを見つけられ、逮捕。ピタゴラスイッチのような一日である。
…ビラを見咎められたロナンは「人民に自由を!」と叫ぶが、これは直前にデムーランが叫んでいた言葉。特に(明らかに革命思想には興味がなさそうだった)暁さんロナンがあまり板についていない感じで言うと、よく理解していないがデムーランのことを慕っているためにそのまま真似している感じが出て健気さが感じられた
25日深夜~26日早朝 バスティーユの監獄(第5場)
・ペイロール(わざわざ農村に赴くだけでなくこんな時間にこんな仕事も?)に拷問されるロナン。ペイロールに「革命思想をぶち上げているのはプチブルジョワの息子ばかり、貴族に嫉妬しているだけで貧しい者のことなど考えていない」と吹き込まれる
※ロナンは最初「俺は無実だ!」と言っており、オランプに対する強盗で逮捕されたのだと勘違いしているようだが、問題は革命ビラの所持。革命を煽るビラを持っていたことは事実だし、ペイロールも革命ビラについてだけ聞いている(強盗については聞いていない)。「その辺でもらっただけだ」という弁明をせず「人民に自由を!」と言ってしまっているし、「仲間を裏切りはしない」と半ば自白している。
26日 ヴェルサイユ宮殿内(第6場)
・オランプ、アルトワから昨晩のことを詰問されるが、秘密警察を持ち上げつつ華麗にかわす。ロナンの救出を決意。
26日 バスティーユ要塞・監獄(第7条A~E)
・オランプ、父のピュジェ中尉に囚人の脱走を手助けしてほしいと懇願。父の協力を得て、ロナンを脱出させる。脱出させてもらったものの、拷問された上、アルトワが血眼になって探す脱獄囚になったが、「これで帳消しに」との申し出を受けるロナン。
・ラマールら、牢獄への到着が一足遅く、「ロナンが脱獄したぞ~♪」と歌で非常事態をアピール(月組版のみ)
同日夕方頃(※「二度と消せない」の歌詞からわかる) バスティーユ監獄~外(第7場F)
・ロナンとオランプ、地下を通って脱出。短いやりとりの後、(同意を得ずに)お礼のキス。
→おそらくロナンはキスした後に自分の気持ちに気づく(暁さんロナンは感情の動きをあまり表に出さない分、逆に心の動きが伝わってくる)
1789年5月5日~6月23日頃 ヴェルサイユ宮殿外 ムニュ・プレジール公会堂(第8場)
・約170年ぶりの全国三部会が開かれる。第三身分のみに税負担を押し付ける形での特別税の徴収に関する議決がなされる。
…月組版と星組版では各身分の人数が異なる(星組版の方が響きが良い上、史実に則している(291人、270人、578人)。月組版がなぜ語呂が悪い上に架空の数字にしたのかは不明)
…資格認定問題で約40日間議事進行が停止
…「1789」のパンフレットでは「ムニュ・プレジール館」と記載されているが、厳密にはムニュ・プレジール館とは別に、同公会堂が作られ、そちらで会議がされたとのこと。
・ルイ16世、会議の時間になってもギロチンに夢中で急かされる
・ルイ・ジョセフ、会議開始時には元気だったが会議終了時には体調が悪化していて急すぎる感があるが、会議が40日以上続いていたとすればおかしくない(実際には開会中に死去)
[1789年6月4日] ※「1789」では議会終了後だが、史実としては開会中に死去
・ルイ・ジョセフ死去(7歳)。死因は結核(サイモン・シャーマ『フランス革命の主役たち(中)』p.109~110)。
[1789年6月17日]
第三身分、国民議会設立を宣言
…「1789」では貴族&聖職者vs平民という構図だが、史実としては聖職者(第一身分)の合流により、第三身分の勝利が決定的になっていた(→敗北を悟った貴族が王に働きかけ、会議場閉鎖という暴挙につながる)
[1789年6月18日~19日頃]
・国王、三部会に対抗して全議員の出席する国王会議を開催。国民議会設立に係る王権侵害を無効とすることで威厳を保つ
・アルトワ伯、「国王を窮地に陥れたのはネッケルだ」と非難し、ネッケルを解任する決意を表明(『フランス革命の主役たち(中)』p.111~112)
1789年6月20日~30日頃(※会議場からデムーランらが戻ったとき)印刷所(第9場)
・ロナンが印刷所に帰還。
…1か月程度の間隔があるが、この間何をしていたのか不明。ソレーヌやペイロールの言葉を受けて印刷所に戻るべきかを悩んでいたものと推察される
・ロナンが戻った直後、デムーランらが三部会の結果を知らせに来る。
・デムーランの無神経な発言により、貧しい平民vsプチブルジョワでの喧嘩が勃発。ロベピは真っ先に帰ろうとするがマラーに止められ、ロナンにつかみかかろうとするがあっさりかわされる(特に暁さんロナンだと全く相手になっていないように見える)。
…「どちらが多く本を読んだか~」の辺りでジャックは背を向けているが、ミシェルは面白そうに眺めていて、ジャックに促されて移動している。
…ロナンの「その頃、俺は飢えていた」を受けたデムーランの「えっ」は“マジで何も考えていなかった風”から“何やら地雷を踏んだようであることは自覚している風”などバリエーションがあった
…ちなみにダントンがソレーヌとの気まずいくだりに立ち会った後にロナンと会うのはこのとき。天華さんダントンはたしなめるような口調だが、ちゃりおダントンはパワーで押している。
同日 地下水道(第10場A)
・最後尾のマラーは肘をかいている。皮膚病に悩まされていたという有名なエピソードを細かなところにも取り入れている
・シャルロットが出てきた際の先頭の2人(ジャック、ミシェル)のリアクションは毎回違っていた
…シャルロットは、フランス版ではもっと出番が多くてより重要度が高いように見えるが、フランス語がわからないので不明。オランプとのなれそめや、オランプがロナンのことばかり考えていると気づいた経緯(シャルロットはそんなにしょっちゅうオランプに会いに行っているのか?)が気になる
同日 サン・ドニ大聖堂(第10場B)
・嘆くアントワネット、口を滑らせて余計な事を言いそうなので冷や汗をかいていると思しきポリニャック、ほくそ笑むアルトワ(この数秒しか着ないグレーの衣装がかっこいい)
・フェルゼン、1回目の任地抜け出し
・ロナンとオランプが再会。
…月組版では「これが身分違いの恋か!」の後にオランプが「いいえ、身分でなく心が違うの…」と自分は王妃に仕えると決意している旨を述べ「今度こそ本当にさよなら、元気でね…」と告げるセリフがある。しかし心が違うとまで言い切った人がその後にくっつくきっかけは、王妃から諭されたくらいでは足りないのでは…と思ってしまうので、星組版はより自然になっていると思う。
[6月20日] ムニュ・プレジール公会堂
・一切の通告なく会議場が閉鎖される
・医師ギヨタン(12月のパリでの請願行動の英雄)が、ヴィユ・ヴェルサイユ通りに住む友人がテニスコートを所有していることを思い出し、600人の議員が雨の中同テニスコートに向かって行進を開始、民衆もそれにしたがった(サイモン・シャーマ『フランス革命の主役たち(中)』p.113)
…ギヨタン博士、「1789」ではいろいろな場面にギロチンの模型を持って出てくる人という印象だが、実際にはかなり違う役割を果たしていたらしい。ちなみに死刑廃止論者で、死刑を廃止に持ち込むための第一歩として人道的な処刑道具を開発したらしい(Wikipediaより)。
6月20日頃 パレ・ロワイヤル~ムニュ・プレジール館前(第12場A~B)
・ロナン、パレ・ロワイヤルでソレーヌに声を掛けられる
・ジャックらが会議場閉鎖の知らせを伝え。それを聞いたロナンら、会議場へ向かう
~「♪声なき言葉」
…何度見ても身震いする人生ベスト級の観劇体験。月組版ではオランプは銀橋の辺りにいたままでロナンだけが舞台中央にいるが、絶対に星組版のロナンとオランプが中央に配されて、それを引き裂くようにペイロールら軍隊が後ろから出てくる方が(テーマの分かりやすさとしても、単純な絵面のかっこよさとしても)良い。
…特大の名場面だが、なんとフランス版にはない。小池修一郎の発案?だとしたらほんとすごい…この点をおいても星組版の細かいところまで及ぶ的確なブラッシュアップ度合いから、小池修一郎はマジですごいんだな、とリスペクトを強めた
…アントワネットが「わたしも同じね 希望の光は見えない 明日をどう生きればいい♪」と歌いながら出てくるが、贅沢三昧の王妃の自分と食うや食わずの貧しい民衆を同視するのはどうなんだ…と思ってしまう。もっとも、アントワネットは万事この調子で現実を適切に見ることができない人である(例えば民衆の怒りを自分の許されざる恋に対する天罰ととらえているが、本当の原因は自分の浪費にも一因がある民の困窮で、そこは理解できていない)ことからすると、ここでちょっとピントのズレたことを言うのもおかしくはない。
6月20日 球戯場(Act2 第1場)
・議場閉鎖を受けて球戯場へ
~「♪誰のために踊らされているのか」
…ロナンが合流した後、月組版では(「革命の兄弟」は2015年の時点ではないので)「これで兄弟以上だ!」と簡単に言い切るが、星組版を観た後ではちょっと調子良すぎでは…という印象を受けた
[6月23日] ムニュ・プレジール公会堂
・ルイ16世、国王会議にて、議会が「国王の努力をないがしろにするなら、やむを得ず一人で議事を進め、国王ひとりを人民の真の代表とみなす、明日は別々の会場に集まって審議を続行するよう命ずる」との訓告を発する。
・アルトワ、球戯場を貸し切って同所での国民議会を妨害
・ルイ16世退出後、第三身分の議員はその場にとどまり、国民議会の議事を進める。式部長官ドゥルー=ブレゼ侯(※「1789」ではルイ16世に新しいねじ巻きを見せられたりしていた人)が、議場から即刻退出せよとの国王の命令を伝えたところ、ミラボー(※本当にミラボーの発言かは議論があるらしい)が「われわれは人民の意思によってここにいるのであり、銃剣を突きつけられる限り、解散するものではない」と答える。ブレゼ退出。この議会の決意を聞かされた国王は「そうか、ではそのままいさせるがよい」と発言
…「1789」ではロベスピエールの発言としている
・ネッケル、国王会議を欠席。これに応じた群衆が宮殿の廷内に押し入ってきたのを見たアントワネットが震え上がり、ネッケルとの面会を求め、辞任しないように嘆願した
(サイモン・シャーマ『フランス革命の主役たち(中)』p.118~120)
6月下旬~7月頃(第2場B~第3場)
・ロナン、シャルロットに導かれてサンドニ大聖堂へ。アルトワ&秘密警察と対峙、フェルゼンと共闘
…「彼こそが神なのだ♪」のゴマスリダンスに気を取られがちだが、ちょうどそこでロナンとフェルゼンが手を取って蹴りを食らわす派手めなアクションをしている
…ラスサビでロナンとフェルゼンが反撃に出るが、そのときのロナンの落下しながらチョップ(?)を食らわすアクションがかっこいい
…月組版では、アルトワが撤退してオランプが手紙をフェルゼンに渡し、ロナンが「大事な人からの手紙らしいな」と問いかけてフェルゼンが手紙から目を離さずに「ああ…命に代えても~」と答えるので(大事なのはわかるけど)結構感じ悪いwその後お礼の握手をしには行くけど。フェルゼンが出て行った後「王妃と伯爵の仲立ちをしてしまったのか、革命に身をささげる覚悟なのに…」と嘆いてオランプに「不器用な生き方しかできないって言っていたじゃない~」と言われるくだりがあるが、説明的で余計だと思うので今回削ったのは適確だと思う。
[6月27日]
・ルイ16世が、第一身分と第二身分を引き込む手紙を書き、三部会消滅
・民衆は「ネッケル万歳」を叫びつつ、同じくらい「国王万歳」とも繰り返し、好意的な雰囲気に気をよくしたルイ16世とアントワネットは、予定外の行動だが群衆の前に姿を現した(=「わたしに挨拶しろと?」は的外れな応答として「1789」の中で描かれていたが、実際に挨拶をしていた)
…このように、「1789」では第三身分は王政を憎んでいるものとして描かれているが(「誰の為に踊らされているのか?」の歌詞もそう)、この時点では王及び王妃は必ずしも憎まれているわけではなかったようである(『フランス革命の主役たち(中)』p.124)。国王一家の名声が地に落ちるのは、逃亡を試みて捕まった1791年6月20日のヴァレンヌ事件。そのため、この時点で「最後の賭け」としてフランスに止まることを選んだアントワネットの行動は、あながち世間知らずの自殺行為ではなかったのかもしれない。
[7月9日]
・アルトワ伯、熱血が国務諮問会議の席に着こうとすると、拳を振り上げながら「外国人の反逆者でみじめなブルジョワであるお前には諮問会議に座る場所はない、自分の生まれたちっぽけな都市にさっさと帰れ」「お前は死刑にされるべきだ」と侮辱の言葉を浴びせる(『フランス革命の主役たち(中)』p.135)
[7月11日](第4場B)
・ルイ16世、ネッケルを罷免
7月12日 パレ・ロワイヤル(第5場)
・ネッケルが国王によって罷免され、国外に追放されたという知らせがパレ・ロワイヤルに届く
・デムーラン(当時29歳)の演説
…緑の葉を選んだのは、ネッケル家の色が緑だったから。このとき木々は丸裸になったと伝えられる(佐藤賢一『フランス革命の肖像』p.53)
…暁さんのデムーランが立派な感じなので、史実を調べると「お世辞にも上品な顔立ちとはいえない」「恋人に“オンオン”ともあだ名されて、いざ喋れば聞き苦しい吃音も出たらしい」「未熟な第三身分を絵に描いたような人物」「自意識過剰なインテリ・ニートのようなものか」と結構な言われようで驚いた(佐藤賢一『フランス革命の肖像』p.52)
…史実としては、この後の民衆の反乱が成功した一因は、軍隊内部の指揮系統の乱れ(実際に「軍隊の一部は裏切りシトワイヤンに寝返った」)があったらしい
…フランス版ではおもむろに緑のストッキングみたいな布をみんな胸元から出すのでぎょっとしたw
7月 ヴェルサイユ宮殿(第7場A~C)
・貴族が次々と亡命。ポリニャックもあっさり亡命。
・アントワネット、任地を抜け出してきた(2回目)フェルゼンの手を取らず、フランスに残る旨を告げる。
…ここのオランプの演技にも注目。基本顔を伏せているが、フェルゼンが手を差し出したときには顔を上げて2人を見ていて、断られたフェルゼンとつらそうな顔で見ている
…ルイ・シャルル(おふみちゃん)、ルイ16世に向かって自分の水色のたすき(?)を指さして空の方を指さして見せるというアドリブをしていたことが1回だけあった(同じ色だね、みたいなことを言っていると思われる)
…アントワネットは「でも今目覚めた~」と言っているが、特に自分の浪費が国庫~民衆に悪影響を及ぼしていたということを認識したというわけでもなく、急にヒロイックな行動に酔っているようにも見える。劇中では描かれないが、史実としては後に逃亡を試みて捕まることからも、ここでの発言を真に立派なものとは受け取れず、結局この劇中でのアントワネットとはどういう位置づけなんだろうか…と悩ましくなるが、有沙さんの演技は本当に立派な感じと言うより、「自分は立派な行動をしていると信じこんでいる人」という微妙な感じがあってさすがだった。
[7月13日~14日]
・民衆がアンヴァリッド(廃兵院)を襲撃、銃と大砲を押収
7月14日 パリ市街~バスティーユ襲撃(第8場~第9場)
・ロナンら、パリ中の男たち・女たちと共にバスティーユに向かう。
~「♪サ・イラ・モナムール」「♪肌に刻み込まれたもの」
…「サ・イラ・モナムール」の場面における背景の夜の市街、夏の夜に若者たちが広場に集っている…という情景を感じさせてとても良い
…「サ・イラ・モナムール」直前、ダントンとシャルロットがハグする場面があってもやついたが、途中からはソレーヌとシャルロットがふざける(毎回違うアドリブだが、基本的にソレーヌがふざけている)→ダントンとシャルロットがハグ又はハイタッチに変わったので、邪推が入る余地がなくなった
…フランス版では、「サ・イラ・モナムール」はデムーランのソロ曲。なぜかサビの前に目をカッと開く謎のお約束の動きがあるので必見。その直後に「国王陛下の名の下に」でペイロールが民衆を蹴散らす場面が入るので、いまいち盛り上がらない。
…月組版では、「壁を登っている!」場面を第1幕の冒頭に入れており(※フランス版にはないので宝塚オリジナルの演出と思われる)、対になる構造が強調されていたが、ここはない方が話としてはスムースだと思う。
…「肌に刻み込まれたもの」での銃を持った革命家3人のポーズがめちゃくちゃかっこいい、舞台写真出してほしかった
…史実では、バスティーユ要塞の大砲がパリ市街を向いており、攻防と交渉の末に民衆側がバスティーユを陥落させ、総督ローネイ侯爵を殺害している
8月26日(第10場)
・憲法制定国民議会、人権宣言(人間と市民の権利の宣言)を採択
…劇中で各人の読み上げる条文は下記の通り;
デムーラン:第1条
ダントン:第1条(?)
マラー:第10条
ソレーヌ:第6条
ジャック:第9条
ミシェル:第11条
オランプ:第4条
「♪悲しみの報い」
…ここでのロナンは最後を除き誰とも接することがなく実体のない幻のような存在だと思われるが、デムーランがその幻であるロナンがいる方に向かっていくがすり抜けるような場面があって泣ける
【参考文献】
・サイモン・シャーマ『フランス革命の主役たち(中)』
・佐藤賢一『フランス革命の肖像』
・佐藤賢一『小説フランス革命Ⅰ 革命のライオン』
『同Ⅱ バスティーユの陥落』
『同Ⅲ 聖職者たちの戦い』
・ガリーナ・セレブリャコワ『フランス革命期の女たち』
←リュシルについて、かなり辛辣に書かれています…
・世界史の窓
以上