自民党総裁選において岸田文雄・総理は自らの特長を「自分には聞く力ある」と強調した。現下の新型コロナウイルスの変異型「オミクロン株」に対する臨時対策措置も緻密な情報収集の「聞く力」と決断の水際対策だろう。
「聞く力」の例を述べる。聴いて、情報を分析し総合するのである。
次の文は本ブログシリーズに記したものである。
そして思い出に開いた元京都大学教授の高坂正堯先生の著書は『海洋国家日本の構想<増補版>』(中央公論社、1965年)である。私は本書のこの部分が好きである。それは、本書の「あとがき」の一節なのである。
「本当のことを言えば、ここに収められている論文の題名のなかで私みずから名づけたものは『現実主義者の平和論』一つしかない。あとはすべて他の人が、私の考えを聞いたり、私の論文を読んだりして題名をつけてくれた。私には漠然とした考えは浮かぶが、それに焦点を定め題名をつけることとなるとまったく苦手なのである。そして、名は体を現すごとく、論文そのものも、多くの先生や友人たちとの会話がなかったならば決してまとまらなかったにちがいない。今、この論文集を読み返していると、どんなときに、どんな人から、どんな示唆を得たかが思い出されてなつかしい。私は何よりもこれらの人々に感謝したいと思う」。
この後段の高坂先生のつぶやきは特別に印象深い。「聞く力」を読み取っていただきたい。
(ひらた こうじ)<了>