こんにちは。通販プロデューサーの西村公児です。
商品を先につくって、それから売る人を探す。
多くの会社が、この順番で動いています。企画して、発注して、在庫を積んで、
それから広告を出す。売れなければ値下げをする。
20年以上、通販の現場で見てきた景色です。

ところが今週、その順番をきれいに裏返した会社の話が公開されました。
■出版社が、服を85万着売っていました
2026年8月28日、ネットショップ担当者フォーラムが、宝島社の疲労回復ウェア
「Recoverypro Lab.(リカバリープロラボ)」の取材記事を公開しています。
2023年2月の発売から約3年半で、シリーズ累計実売85万着を超えたそうです。
つくったのは、アパレルメーカーでもスポーツブランドでもありません。
雑誌をつくっている出版社です。
なぜ、服の会社ではない会社が、これだけ売れたのでしょうか。
■先に「着る人」がいました
記事にはこう書かれていました。
50代以上の女性向け雑誌『大人のおしゃれ手帖』の編集部と、
読者会「ミモザ会」が連携し、体形やデザインについて意見交換を重ねた、と。
ここが今日の核心です。
服をつくる前から、着る人が目の前にいたのです。
普通の会社なら、市場を調査して、ターゲットを想定して、
ペルソナを紙に書きます。宝島社は、そのペルソナ本人と直接、体形の話をしていました。
想像ではなく、実在です。この差が、85万着になりました。
■「ゆったりM」は、たった一つの声から
発売した後にも、続きがあります。
店頭からは「Mだと小さい」「Lだと丈が長い」という声が上がっていたそうです。
そして同社は、短期間で「ゆったりM」というサイズを投入しました。
私は、この一節を何度も読み返しました。
多くの会社では、この声は返品理由の欄に残って終わります。
サイズ表を見直しましょう、という申し送りで消えていきます。
記録には残りますが、商品にはなりません。
声を記録にする会社と、声を商品にする会社。
3年半で、これだけの差がつきました。
■数字も、同じことを示しています
W2株式会社が2026年8月25日に公開した
「EC実態調査2026」(EC事業者567社)に、こんな数字がありました。
リピート購入割合は、年商5〜10億円の企業で78.3%。全体では72.9%です。
CVR(購入率)の中央値は、同じ層で10.69%。
全体の3.23%と比べて、3倍以上あります。
私は、この差を広告のうまさだとは考えていません。
商品ページに着く前から、その会社を知っている人の割合が違うのだと見ています。
すでに雑誌を読んでいた方は、着いた時点で答えが半分決まっているのです。
■今日からできる、3つのこと
読者会も雑誌も持っていない会社が、明日から着手できる順番をお伝えします。
1つ目。購入回数の多い順に並べて、上から10名を選んでください。
その10名が、あなたの会社のミモザ会です。
人数は少ないほうが、一人ひとりの言葉が濃くなります。
2つ目。完成品ではなく、迷っているものを見せてください。
「AとBで迷っています」と伝えるのです。
決まったものへの意見は他人事ですが、迷いへの意見は自分事になります。
3つ目。反映したら、必ず全員に報告してください。
「皆さまの声で、このサイズが生まれました」の一言で
、次に参加してくださる方が増えます。
3つとも、広告費は1円もかかりません。
かかるのは、聞く順番を変える手間だけです。
■つくる前に、その人がいますか
今日お伝えしたかったことは、ひとつだけです。
商品より先に、人を集めておく。
宝島社は、服をつくる会社ではありませんでした。
読者を持っている会社でした。
だから、読者が本当に困っていることに、
まっすぐ応えられたのだと思います。
あなたの会社にも、名簿があります。
まだ会にはなっていないかもしれませんが、人はもういます。
次の商品をつくる前に、その中の10名に聞いてみてください。
「いま、何に困っていますか」と。
その答えが、次の設計図になります。
1人の熱中が、100人の推し活を生む。