あなたの毎日の楽しみは何でしょうか?
「テレビを見ながら一杯やること」
・・・ なんて人もいるかもしれません。
それは人それぞれの好みの問題なので別に
構わないでしょう。
でも帰宅して服の着替えもそこそこに、あるいは
部屋に入るや否やテレビのスイッチを入れてしまう人は
もしかしたらテレビに関して中毒症状なのかもしれません。
なぜテレビをつけるかといえば、
「よく分からないけど、ちょっと寂しい感じがして」
「ついつい、つけてしまう」
そう、なんとなく ではないでしょうか。
ところでもう何年も前ですが、私の家の
居間にはいつもおじいちゃんが定位置に
座っていました。
そこは顔をあげるとテレビが正面に見える
場所です。
当時、あまり行動しなくなったおじいちゃんは
ずっとその場所にいました。
で、誰かがテレビをつけるとずっとそれを
見ることになります。
家族が入れ替わり立ち替わり、チャンネルを
替えて、おじいちゃん以外には誰もいなくなっても
テレビがついていたりしました。
そんな日が続いていて、温厚なおじいちゃんが
ある日突然、怒ったことがありました。
「誰か見てるのかっ!?」
普段、あまり怒らないのでちょっとビックリしました。
楽しいはずのテレビ映像も、毎日毎日、何年も
見ていると、何となく不快なものを感じていたのかも
しれません。
テレビを見ている時は(ちょっと大げさに言えば)
至福の世界です。
会社であった面倒な事や、近所づきあいの
煩わしさなどの嫌なことを忘れさせてくれます。
楽しませてくれたり、元気にさせてくれたり、
知的好奇心を満足させてくれたりします。
私の家族もバラエティ番組を見て大笑いして
いるのが隣の部屋越しに聞こえたります。
確かに有益な側面はあるとは思いますが、
見終わってしばらくすると、なんとなく不快な気分に
なっていることがあったりします。
本当に何となくで、普通は気にも留めませんが、
振り返ってみると思い当たることがあります。
一皿何千円もする料理を美味しそうに食べる芸能人が
その値段を当てる番組や、大豪邸に住んでいるセレブや
大物芸能人を訪ねて、その凄さに驚く内容など。。。
自分にはできそうもないことや手にとどきそうにない
世界を次々と見ることがあります。
そんな世界を見せつけられたあとの不快感が
心の奥に残る場合があるのです。
それはマーケティングのプロたちの狙いの
思惑通りの結果なのかもしれません。
人は自分の現状に不満を感じると、無意識のうちに
その不満を解消しようとして、大胆な消費行動に
出ることが分かっているからです。
また、地震、火事、強盗、殺人、物価上昇、税金アップなど、
テレビニュースの 95% は不安や心配になる内容で
あるという指摘を読んだことがあります。
視聴率アップがテレビ局にとっては大きな目標なので
それも仕方ないとは思います。
不安・悲惨な出来事というのは、
「他人の不幸は蜜の味」 という面に伝わるだけではなく、
「危険を避けたい」 という人間の本能的な面に訴える
意味もあるようです。
近所で火事などがあると、つい見に行ってしまうのは
単なるヤジ馬というだけではなく、その衝動の心の奥には
自分がそんな危険な目に遭わないようにするために
という教訓めいたものを探しているのかもしれません。
そしてグルメ番組で紹介された店は翌日から
大盛況となったりするようです。
レポーターが、いかに美味しい料理かという内容を
徹底的に伝えるのですから当然でしょう。
中にはレポーターの口に合わない料理もあったりする
ようですが、当然ながらマズイとは言えません。
「これは・・・ 通にはたまらない味でしょうね!」
などと言ったりします。
また昆布納豆でダイエットが促進されるとなると
翌日の店頭から昆布納豆が瞬く間になくなります。
視聴率が低下したとはいえ、未だにテレビの影響は
絶大なものがあるようですね。
私たちは今日も大量のステルスマーケティング
(宣伝と気づかれないような宣伝行為)の情報を
たっぷり頭の中に入れ込んで、明日からの消費行動を
せっせとすることになるのかもしれません。
でも多くの人は、
「自分はそんなに簡単に影響されていないはず」
と思でしょう。
そんな方には次の心理実験が参考に
なると思います。
ルーレットのような回転版に数字が書いてあり、
回転版を回すと針がどこかで止まります。
その数値を見せてから質問をします。
例えば65 に止まった場合には、
「アフリカ諸国の中で国連に加盟している国は
65% 以上あるかないか?」
と尋ねます。
「正確な数値は覚えてないけどそんなには
ないと思います。」
とあなたは答えます。
「では何% だと思いますか?」
と更に質問すると、
「45% くらいでしょう。」
などとあなたは答えます。
次の人にも同様なことをします。
今度は針が例えば 「10」 のところで止まります。
「アフリカ諸国の中で国連に加盟している国は
10% 以上あるかないか?」
「10%以上」 とその人は答えます。
「では何% だと思いますか?」
「25% くらいでしょう。」
ランダムに選ばれた正解を知らない人たちに
実験をして得られた結果はまさにこの内容と
なっています。
65 という数値を見た人はその周辺の例えば
45 という数を答え、
10 という数値を見た人はその周辺の例えば
25 という数を答える。
つまり、たまたま見た偶然の数字は質問とは
何の関係も無いのに、その数字が参照点(アンカー)の
役割をして答えがその数字の周辺になってしまうのです。
そしてこのようなことが起こるのは一般人ばかりでは
ありません。
その道のプロが普段携わる分野においてさえ
起きることがあります。
次の例はその典型です。
ニューヨークで小児科医をしているA先生は、
まだ扁桃腺を除去していない11歳の子ども
400人を診察して、その中の何人が手術を受けるべきか
指示しなければならなくなりました。
A先生は診察をした子どもの45% に手術を勧めました。
同じ町のB先生は、A先生が手術すべきだとは判断しなかった
子どもたちを診察して、その中の46% の子どもたちに
手術を勧めました。
さらにC先生は、B先生が手術の必要なしと見た子ども
たちを診察して、その44% に手術を勧めました。
これはアメリカ小児保健協会の調査で明らかになった
実話です。
どうしてニューヨークの小児科医は切除する必要のない
子どもたちの扁桃腺を取らせようとしたのでしょうか。
どうやら「アンカリング効果」に引っ掛かっていた
ようなのです。
つまり、「11歳の子ども約50% は扁桃腺除去が必要だ」
という予測結果があり、各医師はそれを知っていて
診察のあとその数値を基準にした評価になってしまって
いたようなのです。
※ 「経済は感情で動く」(マッテオ・モッテルリーニ)より
自分が意識していないのに、ある誘導された方向に
行動してしまう。。。
考えてみるとちょっと怖いですね。
そんなことが日常生活にあふれているとしたら・・・
・「脂肪分5%」 と表示されているヨーグルトよりも
「無脂肪分95%」 書かれているヨーグルト を
つい選んでしまったり
・寿司屋のランチメニューで 「特上・上・並」 とあったら
真ん中の「上」 を選ぶ人が多かったり
・財布からお札を出して支払うよりも、カード払いに
するほうが遥かに気が楽だったり
・同じ画像でも長い時間目にした物のほうが
好印象度が高くなったり
人の行動は感情に左右されます。
そして感情はテレビで見た内容により大きな
影響を受けます。
日常の買い物からビジネス、株の売買、コミュニケーション
に至るまで様々な局面に影響が及んでいるのです。
それは洗脳と言われるものに近いかもしれません。
(カレイドスコープ氏のブログ画像より)
すぐテレビをつけてしまうのはなんとなく ...
アフリカの国連加盟国数を当てる実験のように、
事前に見た関係のない数字が判断に影響する ...
扁桃腺を切り取る目安も、それ位が良いと思って
自分の考えで決めていたつもり ...
どれも、はっきり自分で意識しているわけではありません。
洗脳が満ち溢れている生活の中での暮らしは、
知らず知らずのうちに他の人の言いなりの
人生を送りやすくなります。
そこから抜け出すためには、なぜその行動をとったのか
(又はとるつもりなのか)を意識することが第一歩と
なるように思います。
それと並行してできればテレビはなるべく見ない、
もしくは見たい番組だけを絞って見ることが
自分らしい生活を送りやすくする手助けとなって
くれるかもしれません。