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読書雑記

読書日記。

ほとんど自分のためのものです。

沈黙(村上春樹全作品1979-1989⑤)

村上春樹

講談社


 「僕がボクシングを気に入った理由のひとつは、そこに深みがあるからです。・・・孤独です。でも悲しくないんです」とボクシングの魅力を語る言葉に象徴されるように、「大沢さん」が「僕」に話す回想の形をとりながら、若者が、悲しくない孤独、自己、自我を獲得していく過程が描かれている。 

 大沢さんと対極的な人物で乗り越えるべき存在として描かれる「青木」の人物描写がいい。大沢さんと青木はお互いに嫌悪感を抱いていて、大沢さんは青木について、「彼の要領の良さと、本能的な計算高さ」、その「エゴとプライドの臭い」を「とても巧みに消し去」る「それなりに頭のいい男」と表現する。

 大沢さんはふとしたことがきっかけで青木を殴ってしまい、青木の復讐を受け一時は心身がボロボロになりながらも、最後には青木を「本物の喜びや本物の誇りというようなもの」を「永遠に理解できない」人間ととらえ、逆に「深みというものの存在を理解する」自己を意識し立ち直っていく。また、大沢さんは「でも僕が本当に怖いと思うのは、青木のような人間の話を無批判に受け入れて、そのまま信じてしまう連中です。」とも付け加える。

 中高生向けの教材としても使われていることからもわかるように、村上春樹の作品の中では非常にわかりやすい部類だと思う。他人に流されない自己を形成することの大切さというシンプルなテーマをそれこそ「深み」のある表現でとりあげている。

博士の愛した数式/小川 洋子
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 他人と人間関係を深めていくためには、最初に出会ってから、相手と様々なコミュニケーションをとり、また第三者にその人に関する噂、評価を聞くなどして、相手の情報を自分の中に蓄積していくことが前提となっているだろう。

 しかし、この物語の博士の記憶は80分しかもたない。その博士のもとに、家政婦として派遣された「私」とその息子との3人の心の交流を描く。そんな制約があるなかで、博士の専門である数学(数字)と息子がファンである阪神タイガースを話題の中心とした日常が、暖かく切なくときには笑いも交えながら物語が進んでいく。

 記憶が80分しかもたないというそもそもの設定を除き、劇的なストーリー展開があるわけではないが、日々のエピソードや、完全数、双子素数、オイラーの公式といった数学(数字)の魅力が随所に散りばめられ、最後まで読者を飽きさせることなく、悲しいながらもさわやかな読後感を味わえる。


ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる/梅田 望夫
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「増殖する地球上の厖大な情報を整理し尽くす」というグーグルの理念を本書を通じて始めて知った。目的と手段が逆転したようなライブドアの目標「時価総額世界一」とはスケールが全然違う。著者が執筆中に常に意識したというオプティミズム(楽天主義)に支えられ、これからのネット社会(加えてリアル社会に与える影響も含めて)の発展に目が離せなくなった。