初出勤 | ゴミブログ season7

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午前中は研修だったので、ジジババとの交流は午後からとなった。おれ以外にも新入社員が1人いて、おれより2歳も若く、ルックスもイケメンだった。同じ日にこんなやつと入職するなんて、運命の悪戯としか思えない。


ジジババはみんな元気だった。老人ホームには大抵、死神の気配が漂っているものだが、死神はどこにもいなかった。みんな活力に満ち溢れていて、大正生まれの爺さんでさえ自分の中の悪魔と大声を挙げて戦っていた。


筑波大学の教授だったという爺さんがいて、周りから「先生」と呼ばれていた。提督やプロデューサーもいた。「先生」は本当に先生みたいな見てくれで、厳格そうだが意外にも親しみやすい。周りに婆さんを侍らして、政治や経済についてぶち撒いていた。


若いの、あんたは新聞を読むのかいと読んでいたものを先生から手渡される。先生が読んでいたのは「しんぶん赤旗」で、自民党への痛烈な批判が大きな見出しになっていた。


「先生は50年も共産党にいたのよねぇ」


取り巻きの婆さんが言った。50年も共産党にいたようなやつは老人ホームに入れられたって仕方がない。さらに婆さんが「でもやっぱり自民党よねえ」とかなんとか言ったので、おれはその場を離れた。先生はなにも言わなかった。たぶん、先生の中で戦いはとっくに終わっていたのだ。


いちばん仲良くなったのはキヨシという歯のない爺さんで、話しているうちに趣味の話題となった。なんとキヨシさんは、そのむかし同人誌を書いてサークルとして出版していたらしい。よくよく顔を見てみると、なるほどな、封筒おとしたの50年後みたいな雰囲気を醸し出していた。