一体彼女になにが起きたのか(2) | くうねるあそぶ。ニュージーランド

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南半球の果てで見つけたわたしの楽園

翌朝(水曜日)、慢性的な不眠症で普段からあまり寝られないローラは、キャプテンが起きる頃にはもう起きていたようでキッチンで話す声が聞こえましたが、私は休みだし少し朝寝坊しました。


キャプテンが仕事に出かけた後、私も起きて、ローラに寝られたかと聞いたら、久しぶりに悪夢も見ずに7時間くらい寝たと言っていました。疲れていたんでしょうね。よかった。


コーヒーを飲みながら話を始めると、出てくる出てくる。ひとつ聞くと100くらい、関係ないランダムな話が出てくる。溜まっていたものなのかなんなのか、止まらない。主に怒りや不満。


ニュージーランドはクソ(年中寒い、海水が冷たすぎる、フルーツがまずい、システムや政治が悪いなどなど)

故郷の島やアメリカもクソ、

男は全般クソ、

近所のヤツらもクソ、

どんだけ頑張って働いてもお金が無い、

両親を助けたいのに出来ない、

幸せになれる気がしない、

私の人生クソ

(ローラの言葉を湾曲してお伝えしています🎤)


支離滅裂であちこち飛びまくる話を簡潔にめとめるとこんな感じです。妄想ネタもちょいちょい挟まってきます。

私には実は娘がいる(実際はいない)、無くした財布に8ミリオンの当たり宝くじが入っていた、

その他にも環境や政治など、世界のあれこれにたくさん憤っています。結構頭のいい子なんだと思います。


最初は親身に聞いてましたが、ネガティブ思考および起こる全てが誰かのせい、という怒り=ものすごい毒が聞き手に浴びせらせるのでたまりません。

私はわりと楽観的だしいまの生活はおおむね幸せで気持ちには余裕があるのである程度は聞いてあげられますし、自分に取り込まないように聞き流すことができる方だと思うんですが、さすがに何時間も毒を浴びるのはキツイチーン💦


素直な子なので話を止めたり話題を変えたりしても怒らないし素直に応じる、ごめんねと謝ったりもする。でもやっぱり出るものが止まらない様子。


色んなことが溜まっていたんだろうなあ。いくら1人が好きでも、1人で抱えすぎるのも良くないよなあ。何が原因かは分からないけど、こんなおかしくなるまで不満溜め込んで、かわいそうにショボーン


吐き出して良くなるものなら吐き出した方がいい。


私はこれから3日間休みなので、その間は彼女にできることをして、症状が改善するといいなと願いました。


小汚いスエットをずっと着ていたので綺麗な部屋着に着替えさせ、

汚いまま雑に車に詰め込まれた彼女の洋服や毛布を何回にも分けて洗濯して乾燥機にかけて乾かし、たたんで彼女の寝室のクローゼットに入れてあげました。(喜んでくれました。少しでもうれしい感情を持って欲しかったのでよかった😊)


錯乱したのかベッドリネンを全部はいでしまったのでそれも全部洗濯して新しくベッドメイクし直し、できるだけ眠れるような良い環境をつくろうと努めました。


あとは食事。とにかく体と心に力を戻さなくては。なるべく食べやすく、かつ興味と食欲をそそる様なものを、と考えました。

フィジョアクランブル

シナモンポリッジ(お粥的な)

親子丼

スンドゥブ・ラーメン

日本のビーフカレー


などなど、ゆっくりと少量ながらも毎日2回ちゃんと食べてくれました。 誰かがご飯作ってくれるのって無条件に嬉しいですよね😊


ローラはチベット仏教に傾倒していて、自国の母親も昔からそうらしく、生まれてから8歳くらいまではそれ系のコミューンに家族と住んでいたそう。筋金入りのスピリチュアル系です。


私、そういうのよく分からないけど、彼女見てると、言葉で出てくる毒の裏にある心はとても綺麗で優しいように感じました。


誰かがあなたの事を心配してる、想ってる、ということを伝えたくて、私はそういうエモいの苦手なのですが、身の回りのことをしてあげることで伝わればいいなと。


彼女は雄のフォックス・テリア5歳を飼っているのですが、犬の世話も今はできる状態じゃない。彼女は家の外に出るのも怖がるようになっていたので、私が朝夕2回、ジェシーと一緒に彼女の犬も散歩に連れ出し走らせ、ご飯をあげました。

ジェシーと仲良しの子なので一緒に散歩に行くのはむしろ楽しいですが、ひとつだけ難点は、この子は猫を追いかけてしまうので、この子が来てからミンディ(猫)が家に帰って来なくなりました😭


うちの軒下か近所の家の軒下に隠れているんだと思うんですが、時々ローラの犬が吠えて何かを嗅ぎ周り、追いかけていたので、たぶんうちのミンディだろうなと。私たちは必死に止めようとしたけど実際難しく、ミンディが毎回追いかけ回されて家に帰れないことを思うと可哀想でなりませんでした。


ミンディごめんよ、数日辛抱しておくれ。

猫だって大切な家族の一員です。何かあっては困ります。私たちはローラのいち早い回復をひたすら願いました。


2匹に挟まれて私は幸せ☺️

ひとつ面白かったのは、スピ系の彼女、Iphoneの充電をコードではなくカウリガム*でしようとしてました🤣

 私が充電器のコードをさしてあげると「No電磁波!充電はこれで出来るから見てな!」 とコードを引っこ抜きカウリガムを液晶の上に乗せます(笑)

もちろん充電されるわけはありません。

貴重な化石でそれなりにエネルギーはあるんだろうけど、さすがにiphoneは充電できんだろ🤣


私はこっそり彼女のいない隙に充電器をさしてあげないとなりませんでした。見つかると抜かれる、その攻防。

そうかと思えば、翌日は自分で普通に充電器使って充電してましたww なんなのw


*カウリガム=カウリの木の樹脂が長年かけて固まって石になった化石。琥珀と同類。この辺の海岸や川沿いで見つけることができる。



妄想の他にもこういった奇行がちょいちょいあるのですが、半分くらいは普段もやってることみたいwww そうとう自由な子です。

笑いになって楽しい瞬間もかなりありました。



被害妄想を聞かされるのはキツイし、全てをうらんで人生に絶望している様子は気の毒でしかないけれど、

でもその合間に確実に、彼女の心のキレイさと自由さ、そして賢さと優しさが見えるのです。

本当にいい子なんだろうなあ、と思いました。



この日はいつくか私が気になっていたことを解明すべく、時間をかけました。



まず、財布が盗まれてたのならカードを悪用されていないかチェックすること。

彼女自身はチェックする能力キャパが今は無いようでしたが、その話を持ち出すと、iphoneの銀行アプリを開いて私に手渡して、見てくれといいます。

見せてもらうと、最後に使ったのは、彼女が言った通り、数日前にこの集落の酒屋でワインとビールを買った時。

ネットバンキングの履歴もそこで終わっているので悪用された形跡はないし、ひとまず停止と再発行はせずに保留しました。もしかしたらどこかに置き忘れたのかもしれない。


次はこの状況を家族に伝えること。

ローラの話には時々母親が出てきました。関係は良好なようでとても尊敬しているようでした。まず彼女に状況を知らせなくてはと思い、

「あなたのママに私から連絡してもいい?」と聞いてみた。するとあっさりYesと言う。

本当に根が素直な子なのだ。自分のiphoneを手渡して来た。


急いで状況をメールして、FBメッセンジャーで私ともつながってもいました。

これで私のスマホからも直接彼女と話ができる。

彼女のところにもローラから数日、意味不明のメッセージが届いていたらしくとても心配していたそう。


出来ればすぐにニュージーランドに来て欲しい、そして彼女を連れて自国に帰ったほうが良さそうだと伝えました。とてもよく理解し感謝してくれて、こちらもほっとしました。



次は家賃。どれだけの期間、彼女がこの混乱のなかにいるのかわからないけど、仕事は最近辞めたそうなので、家賃が気がかりです。この精神状態で家を追い出されては困ります。

家賃はいつまで払ってあるの?どうやって払ってるの?と本人に聞くも


「わからない」ショボーン


だよね。


かと思えば、義父が払ってくれてる、と言ったり、ターシ・ラマ・グールー🙏(仏教の人?)が天から授かった富で払ってくれてるとか、聞く度に答えが違うww


なんとか大家の名前を聞き出し、イギリスに住んでいるという大家のコンタクトを見つけてローラのiphoneからメッセージを送り、本人が病気なので家賃の支払い状況をチェックしたいんですと問い合わせ。

翌日返信をくれて、2週間ちょっと先まで支払われていると教えてくれた。


ああ、よかった。

以前からローラはそろそろ自国に帰る予定で話は大家さんにもしていたようで、それで契約終了→退去したいというと、快く同意してくれました。

特にこの家で何があったわけではないのですが(これはほぼ確実)本人が危険だと思い込んでしまっていて、この時点では絶対にあそこには帰りたくないと思い込んでいるようでした。


現時点の混乱した彼女の状態では、1人で飛行機に乗って母親のいる自国に帰ることも難しそうです。ゴールとしては、彼女の精神状態と体力が改善するとともに、母親になるべく早く来てもらい、一緒に自国に帰る、といシナリオです。


自分でも、前々から4月の頭に帰る予定でいたものが、犬を連れて帰るのに思ったより費用がかかり手続きが面倒なことでつまづいてしまっていた様子。


母親が来てこの点を一緒に解決してくれたらベストです。そういう方向へ進めたい私たち、しかしなかなか思うようには行きません。


だんだんと彼女の様子がおかしくなって行きました。

午前中私に向かって憤りを吐き出し続けたように、午後になってからはお風呂に入っていても、部屋にいても、ずーーーっと1人で大きな声でなにかに向かって喋り続けるようになって行ったのです。



私たちは月曜の朝から彼女の様子を見ていますが、もし薬物による錯乱なのであれば、時間が経つにつれて正気に戻るはずだと考えていました。でも一時は収まったかと思ったものがまた戻ってきたような感じもします、これはやはり精神病?


本人にドラッグを何か使ったか、と聞くとNo。自分はPot(カナビス/マリファナ)を吸うだけでドラッグはやらない、と言う。やはりそうか。

私も彼女がドラッグをやってるとは考えにくいと思ってはいました。真実は分からないけど。


ニュージーランドではカナビスはリラックスのために嗜好する人が老若男女かなり多いですし、数年前に合法化の選挙が行われたこともあるくらい(結局過半数超えず否決となったが)限りなく合法に近い位置にあり、個人が自宅でお酒飲むみたいに個人的に楽しむ分には問題視されていませんし犯罪とも見なされていません。カナビスはあくまでも麻という植物、ニコチンなどの依存性物資も含まずドラッグとは根本的に違いますし警察もわざわざ取りしまりません。日本とは位置づけが大きく違いますね。

カナビスの神経を弛緩させる作用は痛み止めとして医療で使用されており、医者から処方されるカナビスについては合法です。


ローラは頭で考えすぎてしまうのを止めて腹に神経を落とし込むためにPotを吸うと言っていて、まあそういう作用もあるかもね、と思っていました。私たち夫婦は吸わないですが別にローラが吸うぶんにはかまわないよと言うと、匂いに気を使って外で吸ってくれていました。


でも弛緩作用のあるpotを吸っても落ち着く様子はなく、この日は午後から夜中にかけてずっと1人でなにか喋り続けていました。



つづく


(エンタメとして書いてるわけではなくあくまでも備忘録です。いつにない珍事だったのでなるべく正確に記憶しておきたくて書いています)