我が家は高層住宅のなかにあって、ここでは暗黙のルールで動物類を飼ってはいけないことになっていた。しかし金魚や小鳥ならまだしも、実は犬や猫を飼っている家もあることを皆は知っていた。

 娘たちは成長するにつれて友達ができ、遊びに行ったその先で、或いはその近所で飼っている犬や猫と遊んできて、

 「どこ、そこには犬がいた、猫がいた。」

と訴え、

 「だからうちでも飼って。」

と主張し、ねだって親を困らせるのであった。

 我々両親は田舎育ちで、小さい頃から犬や猫と一緒に生活し、遊びながら成長してきた。だからこれまで動物と一緒の暮らしを楽しい、むしろ好ましい体験として子供たちに語ってきた。

 その手前、娘たちの言い分を

 「ここでは飼っちゃいけないの。」

の一言で片づけることもできず、

 「犬、猫じゃなければねえ・・?」

などとその場しのぎの言い訳でお茶を濁してきたのが実情であった。

 ところが、これが全くのその場しのぎの方便であることを思い知らされた出来事が何度か起こった。

 いつの年だったか、娘たちが近くの団地の夏祭りに遊びに行って、出店の景品ですごいものが当たったと言ってかわいい兎を連れてきた。顔中をくしゃくしゃにして喜色満面かつ得意満面の笑顔であった。

 これまで言ってきたことの手前もあり、ダメとは言えず、大声で鳴くこともないからこっそり飼ってみようと飼育を始めた。これは、ぬいぐるみのように小さくてかわいい初めの頃は良かったが、意外と成長が早く、みるみるうちに大きくなって手に余るようになってきた。

 娘たちもこれは大変だと気付いたのであろう。兎を手放すことに異を唱えなかったのは幸いであった。誰に相談したのであろうか、誰もが傷つかないであろう処方を娘たちが考えてきた。聞くと、小学校で飼っている兎たちの仲間に入れてくれるという。先生からOKを貰ったようだ。結局、「兎さん、ごめんね。」と謝りながら、小学校の動物園に引取ってもらって一件落着した。