斜面が崩れ落ちて欠落した箇所があり、Kさんが「この辺だが…」と言いつつ往復して、「ああ、ここだ。」と指さした先の岩陰に、OBのお父様が残された石碑があった。ここが遭難現場であった。お供えをし、手を合わせてしばし佇んだ。長い時を経た25年前の出来事であった。若人たちの苦しみとご遺族の方々の無念さとに思いを馳せようとした。

夏道を辿って戻り、小屋の足元に出た。すぐ下に水場があり大きなタンクにホースが引き込まれていたが、貯水量は半分ほどで蛇口から水は出なかった。小屋に戻った。布団を敷いて横になったら猛烈に眠気が催してきた。Kさんは周囲の小高いところまで登ってくると言って出かけたが、僕はそのまま眠ってしまった。

夕食の時間になった。カレーライスが出されたが、これがなかなかおいしい。お代わりをした。

今日の小屋泊りの客は我々二人だけである。主人と我々だけの会話がぼそぼそとされていて、こんな雰囲気もいいものである。食事をしながらKさんが「実は・・・」とここで初めて自己紹介し、25年前の事故の話をしていった。

食事も終わり、明日もご来光を拝むことを約束して、7時過ぎには床に就き直ぐに寝入った。12時過ぎに尿意を催して目を覚まし外に出たが、満天の星空が素晴らしく美しかった。

 

・・日  山行第3日

5時過ぎに目を覚まし、防寒して直ぐ近くの小高いピークに登った。伊那市は分厚い雲海の下に隠されている。今日もいい天気だ。きれいなご来光である。娘たちのこと、これからの自分のことを祈った。

小屋に戻って朝食を摂った。海藻とジャガイモの味噌汁、かぼちゃの煮つけなどなかなかいい味でおいしい。昼食弁当は用意してもらわずに、ザックにある残り物で済ませることにした。桂小場に12時に到着する予定をタクシー会社に連絡してもらい、小屋の主人と記念写真を撮り、水場で水を仕入れて、夏道を辿って行者ヶ岩と桂小場の分岐点に向かった。