NDR演奏会(2016年1月、ドイツ・ハンブルク) | クラシック音楽と食べ物と。。。

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今日は2016年1月のドイツハンブルクからです。

 

ドイツの冬は寒いので一戸建てでも温水式の全館暖房が使われているケースが多いと思います。ちなみにハンブルクって緯度、北海道よりも北なんですよね。地下の給湯器が置いてあるフロアーに行くと、カーペットが濡れていて何が起こったのかと見てみると、どうも給湯器からお湯が漏れてカーペットが濡れているようです。大家さんに連絡して来てもらうと、給湯器から家を巡る給湯管のつなぎ目が劣化してお湯が漏れている模様。開けてみると金属が劣化して穴が開ていました。早速、大家さんホームセンターへ行って部品買ってきて直してくれました。さすがDIYの国。その後、濡れたカーペットをめくってみると床がずぶ濡れで、カーペット外へ運び出して乾かしたり、床の水を拭き取ったりと大変でしたが。。。

 

やっと、平常を取り戻し、夜はNDRのコンサートでした。

NDR Sinfonieorchester(北ドイツ放送交響楽団)、現在のNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団です。第二次世界大戦後、ドイツでは各地で放送協会(ラジオ局)によるオーケストラが誕生しますが、NDRもその一つで1945年に設立しました。初代首席指揮者 ハンス・シュミット=イッセルシュテットに始まり、最近の首席指揮者の顔触れも、ヘルベルト・ブロムシュテットクリストフ・エッシェンバッハクリストフ・フォン・ドホナーニトーマス・ヘンゲルブロックと錚々たるメンバーです(この記事を書いている時点ではアラン・ギルバートが首席指揮者を務めています)。

今日の演奏会は、トーマス・ヘンゲルブロックが指揮者を務めました。

 

今日の演奏会は、マーラー:交響曲第9番。90分に及ぶ大作で、休憩なしで演奏されます。交響曲が誕生して以来発展し続けた交響曲は、マーラー第9番で完成したともいわれています。そして、第9番の重み。ベートーヴェン以来、多くの作曲家が9番の壁を越えることができず亡くなっています。マーラーも、この第9番を完成させ、着手した10番は未完成のまま亡くなります。しかし、9番の前に作曲された「大地の歌」は9番目の交響曲であり、この第9番こそが10番目の交響曲でもあると説く人々もいます。

プロ指揮者であったマーラーは、シーズン中は指揮者として活動し、シーズンオフに作曲をするということを繰り返しています。この曲が作曲されるのは、1909年から1910年にかけてですが、基本的な作曲は1909年の2カ月で完成しています。

この曲のことを語るうえで、どうしても1907年以降マーラーに起こったこととを語らないわけにはいきません。1907年、最愛の娘をジフテリアで亡くし、自身も心臓病の診断を受けます。さらに、ウィーン宮廷歌劇場からも解雇されてしまいます。その後、メトロポリタン歌劇場へ活躍の場を移しますが、こちらもトスカニーニの台頭とともに、次のニューヨーク・フィルへと活躍の場を移していく。そんな中でこの曲は書かれます。この9番は、主旋律と伴奏という構造とは全く違った、複雑なポリフォニーで構成されていますが、バロック式教会の空間に音を満たすために開発された従来のポリフォニーとは違い、マーラーが街の雑踏から様々な音を拾い出すことが好きだったような、そんな玉手箱のようなポリフォニーが使われています。4楽章で構成されているものの、緩ー急ー急ー緩という、型破りな構成になっていて、曲の中には、ベートーヴェンワーグナーブルックナーや自身の様々な曲からの引用がされており、そして、最後は消え入るように終わっていきます。全曲、「死」を意識した曲であることは間違いありませんが、それと娘の死、自身の死への恐怖との関係については、今でも議論が絶えないテーマです。

この曲が完成した翌年1911年5月、マーラーはその50年の人生を終えます。

初演はマーラーの死後1912年6月26日、ブルーノ・ワルター指揮ウィーンフィルの演奏で行われました。

 

今日のNDRの演奏会、とても人気が高かったようで、3階席しかとれませんでした。オーケストラのメンバーが豆粒のようです。。。でも、これはこれで音に集中して聞くには良かったかもです。今日も素晴らしい演奏に感謝。