ハンブルク交響楽団(2016年1月、ドイツ・ハンブルク) | クラシック音楽と食べ物と。。。

クラシック音楽と食べ物と。。。

ヨーロッパでの生活を振り返るブログ。

今回は、2016年1月のドイツハンブルクからです。

この日は、19:30開始のコンサートで、コンサート前に少し時間がるのでカフェで時間つぶしていきました。Café Leonarというお店。このあたりは結構カフェやレストランが多く、高級住宅街に近い場所で、ほぼ満席でした。ハンブルク大学ハンブルク音楽演劇大学からも近い場所です。カプチーノとキャロットケーキ頼んで少し溜まった仕事を片付けておきます。

 

今日のコンサート会場は、ライスハレハンブルク交響楽団の演奏会です。ハンブルク交響楽団は1957年設立で、ここライスハレを本拠地とするオーケストラ。この時は、イギリス出身のジェフリー・テイトが首席指揮者を務めていました。

今日の指揮者はガイ・ブラウンシュタインピンカス・ズーカーマンに師事し、ベルリンフィルの第一コンサートマスター、ベルリン芸術大学教授などを務めた大物ヴァイオリニストです。

 

最初の曲は、

モーツァルト: ヴァイオリン協奏曲第5番
Wolfgang Amadeus Mozart: Konzert für Violine und Orchester A-Dur KV 219

 

1775年にモーツァルトが作曲したヴァイオリン協奏曲で、モーツァルト最後のヴァイオリン協奏曲。モーツァルト19歳の作品です。モーツァルトは生涯に5曲のヴァイオリン協奏曲を作曲していますが、すべて1775年作曲されたもので、ザルツブルクで作曲されたこの5曲、作曲動機は、ザルツブルクの宮廷ヴァイオリニストであったアントニオ・ブルネッティのために書かれたということ以外は伝わっていません。モーツァルトが亡くなるのが1791年ですので、この時以降亡くなるまで長らくヴァイオリン協奏曲を作らなかったわけです。「トルコ風」の愛称で呼ばれるこの曲は、当時の流行っていたトルコ趣味に合わせた作品になっています。

ソナタ形式で書かれた第一楽章、緩徐楽章の第二楽章、トルコ行進曲風の部分が入っている第三楽章。後世の作曲家のヴァイオリン協奏曲と比べても素晴らしいヴァイオリン協奏曲との評価がされている曲です。

 

今回は、ガイ・ブラウンシュタインが弾き振りするというので来てみたのですが、悪くはないけど、思ったほどのバイオリンの気がせず、意外と普通のヴァイオリン協奏曲でした。

 

二曲目は、

ロッシーニ:オペラ『ウィリアム・テル』より

Gioachino Rossini: Aus »Guillaume Tell«: "Ils s'éloignent enfin" und "Sombre forêt"(Mathilde)

 

二曲目は、ロッシーニのオペラ『ウィリアム・テル』より。ロッシーニ最後のオペラ作品で、シラーの「ヴィルヘルム・テル(Wilhelm Tell)」を原作に書かれたオペラ。本来はフランス語で書かれており「ギューム・テル(Guillaume Tell)」が正しい題名ですが、日本ではウィリアム・テルが定着しています。ロッシーニは、このオペラを最後に引退してしまい、30年にわたる引退生活を送ります。小品の作曲などは続けますが、年金生活を続け、サロンの開催や大好きだった料理の創作にその情熱を傾けます。よく料理で「ロッシーニ風」という名前がついているのは、そのおかげ(?)のようです。

 

ウィリアム・テルと聞くと、息子の頭の上にリンゴのせて矢で射貫く話を思い浮かべると思いますが、実際あのウィリアム・テルの話もでてきます。メインストーリーは、オーストリアハプスブルク家)の圧政に苦しめられていたスイスの各州が同盟を結び自由を勝ち取る話なのですが、その中に様々な話が織り込まれてストーリーが進んでいきます。スイス側のアルノルドが、雪崩に巻き込まれた女性を助け恋に落ちるのですが、その相手が敵国(ハプスブルク家)の王女だったという、悲恋の話。ウィリアム・テルと息子のジェミの話など。今回歌われたのは、このハプスブルク家の王女マティルドが歌うシーンからです。

 

「Ils s'éloignent enfin」「Sombre foret(暗い森)」がうたわれました。

 

本来は、ブルガリア出身のソプラノ歌手クラッシミラ・ストヤノヴァ(Krassimira Stoyanova)が出演予定でしたが、病気のため代役で中国出身のユ・ガンクン (Guanqun Yu)が歌いました。当時、ベルリン・ドイツ・オペラのアンサンブルメンバーで、この年の3月からハンブルク州立歌劇場で、まさにこのマティルド役で出演する予定のようです。代役ということで、どんなものかと思ったのですが、なかなか素晴らしい演奏でした。

 

三曲目は、

チャイコフスキー:『エフゲニー・オネーギン』より

Peter I. Tschaikowsky: aus »Eugen Onegin«: Brief-Szene(Tatjana)

 

チャイコフスキーがこの曲を完成させたのは1878年1月20日のことです。アレクサンドル・プーシキンの小説「エフゲニー・オネーギン」を原文としたオペラで、現在も最も頻繁に演奏されるチャイコフスキーオペラの一つと言ってよいと思います。このオペラは、オネーギンのある意味ハチャメチャ(?)な人生を描いたオペラですが、今回演奏されたのは、第一幕の地主の娘タチアーナオネーギンへ愛の言葉をつづった手紙を書くシーンからです。チェイコフスキーが、このオペラで最初に書き始めた渾身のシーンでもあるようです。

この曲も、クラッシミラ・ストヤノヴァ(Krassimira Stoyanova)が歌う予定でしたが、代役で歌ったのはエヴァ・ホルニャコヴァ(Eva Hornyakova)。スロヴァキア出身のソプラノ歌手です。ちょっと声を張り上げ気味で、歌が硬かったかなあという印象でした。

 

最後の曲は、

チャイコフスキー:交響曲第5番

Peter I. Tschaikowsky: Sinfonie Nr. 5 e-Moll op. 64

 

チャイコフスキー円熟期の1888年に作曲された曲です。この10年前に作曲された4番、そして最後の6番「悲愴」の3曲は、チャイコフスキー人気の3大交響曲ではないでしょうか。そんな5番の成功への道も平坦なものではなかったようです。初演は、1888年11月17日チャイコフスキー自身の指揮でペテルブルクで行われ、聴衆からの反応は良かったのですが、専門家からの批判を受け、ペテルブルクの再演、プラハでの演奏を経て、かなり自信を無くしてしまい、自身で演奏することはほとんどなくなってしまいました。その後、アルトゥル・ニキシュが精力的にこの曲を紹介し、また時代の変化から再度この曲が評価されるようになってきたようです。初演で大成功しても、その後消えていく曲、逆に初演で評価されなくても、その後時代の中で残っていく曲など、様々です。

 

ハンブルク交響楽団、全体的に素晴らしい演奏でしたし、代役のソプラノも良い演奏をしてくれて大満足です。でも、座席の後方は若干空きが目立ち、毎日のように演奏会が行われているこのハンブルクの地では、このレベルの演奏でも満席にすることは簡単ではないのだと改めて感じました。