エフゲニー・コロリオフ@ハンブルク音楽祭(2014年5月、ドイツ・ハンブルク) | クラシック音楽と食べ物と。。。

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今回も前回に引き続き、第一回ハンブルク音楽祭の中からで、2014年5月に行われたエフゲニー・コロリオフのコンサートの模様をお伝えします。

 

会場のライスハレの前には、ハンブルク音楽祭の垂れ幕がかかっています。

 

エフゲニー・コロリオフ(Evgeni Koroliov)は、1949年ロシアの生まれで、モスクワ音楽院に学び、1977年クララ・ハスキル国際ピアノコンクール優勝。

既に退官されていますが、1978年からハンブルク音楽演劇大学の教授を務められていました。

バッハ演奏については特に評価が高く、ハンガリーの作曲家リゲティ・ジョルジュは「もし、孤島に一枚だけ持っていけるとしたら、コロリオフのバッハを持っていく」と言っています。

ヨーロッパを中心に数々の有名ホールで演奏を行い、ザルツブルク音楽祭、ワルシャワ・ショパンフェスティバルなどにも招かれています。

 


バッハ: パルティータ


前半は、バッハのレパートリーから2曲。

最初の曲は、

ヨハン・セバスチャン・バッハ: パルティータ 6番 ホ短調

Johann Sebastian Bach: Partita Nr. 6 e-Moll BWV 830

 

J.S.バッハは、1723年からトーマス教会のカントルにに就任し、ライプツィヒで暮らし始めます。

またライプツィヒの音楽監督としても活動を広げていきます。

6つのパルティータは、ちょうどこの時期に作曲された曲で、1725年ごろから作曲されているようです。

今回の6番は、この6つのパルティータの最後を飾る曲

パルティータは、舞踏組曲として作曲されていて、

・ドイツ系のアルマンド

・フランス系のクーラント、またはイタリア系のコレンテ

・スペイン系のサラバンド

・イギリス系のジーク

が用いられます。

バッハのパルティータでは、それぞれこの前に舞曲ではない違ったスタイルの曲が配置されますが、6番では、最初にトッカータが配置されています。

6番の構成は、次の通りです。

1.トッカータ Toccata

2.アルマンド Allemande

3.コレンテ Courante

4.エール Air

5.サラバンド Sarabande

6.テンポ・ディ・ガヴォット Tempo di Gavotta

7.ジーグ Gigue

 


バッハ: イタリア協奏曲


二曲目は、

ヨハン・セバスチャン・バッハ: イタリア協奏曲

Johann Sebastian Bach: Bach: Italienisches Konzert F-Dur BWV 971 (Clavier-Übung II)

 

イタリア協奏曲というのは通称で、原題は、

 イタリア趣味によるコンチェルト(Concerto nach Italienischem Gusto)。

 

先ほどの、パルティータと打って変わり、ある意味イタリア的と感じる曲です。

何がイタリア的かというと、その音型・語法にイタリア的なものがちりばめられており、ヴィヴァルディの曲を思わせるような箇所もたくさん出てきます。

 

イタリア的な明るさを感じるアレグロ(元々はテンポ指示がないようですが)

しっとり感のあるアンダンテ

そして、軽快なプレスト

 

この曲は、ドイツ語タイトルにもあるように、クラヴィア練習曲集第二巻に収められている曲で、1734年の作品です。

これもバッハのライプツィヒ時代に書かれたもので、バッハというとライプツィヒが頭に浮かびますが、書かれた曲から見ても、あながち間違っていないのではないかと思います。お墓もありますし。。。

 


ベートーヴェン: ハンマークラヴィーア


三曲目は、

ベートーヴェン: ピアノソナタ第29番 変ロ長調 作品106

Ludwig van Beethoven: Sonate B-Dur op. 106 »Hammerklaviersonate«

 

ドイツ語タイトルにもあるように、通称 ハンマークラヴィア―と呼ばれている曲で、1817年から1819年にかけて書かれています。

非常に要求レベルが高く、作曲当時は、演奏不可能と言われた曲ですが、「50年たてば人も弾く」と言って一切妥協しなかったとか。

当時、ピアノの技術がどんどん革新していった時代で、第一楽章から第三楽章までをウィーンのストライヒャー製のピアノで作曲していたのですが、ロンドンのピアノが友人から送られてきて、第四楽章はその楽器が気に入り、それを使って作曲したとのこと。

どんどん進化するピアノを見て、その進化を信じて作曲したのでしょうか。

ベートーヴェンのパトロンであり弟子でもあったルドルフ大公に献呈されています。

 

この曲でよく話題になるのが、速度記号

メトロノームの速度指示がされているのですが、あまりにも速いスピード指示で、間違っているのではないかという議論。

ゆっくり弾く奏者が多い中、指示通りの猛烈なスピードで弾く人もいるようです。

 

さて、コロリオフの演奏

さすがバッハ演奏における評価が高いだけあって、前半のバッハ、素晴らしい演奏です。

以前、NDRのスタジオでコンサートがあり、一度生で聞いていますが、今回改めて聞いてみると、彼のすごさがよくわかります。

演奏を聴いていると、本当にバッハの世界に引き込まれていく感覚。

曲の変化のつけ方も絶妙で、強弱、音色の使い分け、フレーズなど、あ~!!バッハだなあ~って感じが染みてきます。

ゆっくりしたところのテヌート感、唄い方など、絶妙でした。

ベートーヴェンも、思わず唸る演奏です。うまい!!

ベートーベンらしいかというと少しそうでもない気もしますが、それでもうまい。

アルゲリッチのような華やかな演奏でもないし、バレンボイムのような我が道を行く系でもないですが、職人って感じです。

 

日本でもCDが入手できるようですので、興味のある方は一度お聞きください。

もちろんバッハも素晴らしいですが、個人的には、彼のショパンもちょっとお気に入りです。