~コンサートプログラムより~
先週、先々週とベルリンでの、コンサート、ベルリン散策の様子を書いてきましたが、
今週は、ベルリン2日目のコンサートの模様をお伝えします。
今回も2014年4月のベルリンからです。
マーサ・アルゲリッチ(Martha Argerich)とダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim)。
この二人は、共にアルゼンチンのブエノスアイレス出身。
それも、年齢が一つ違いの、天才的ピアニスト。
バレンボイムは、指揮者としても有名ですが、ピアノの腕も全く衰えを見せません。
この二人、長く一緒に共演することもなく、それぞれの演奏活動を進めてきたのですが、
昨年(2013年)3月に、15年ぶりにバレンボイム指揮でベートヴェンピアノ協奏曲第一番を共演し、
その時に今後二人での活動を増やしていくと発表していました。
この時にも、アンコールで一曲連弾を披露し、ものすごい熱狂に包まれていました。
この時の様子は、こちらの記事をどうぞ(アルゲリッチ&バレンボイム in ベルリン(2013年9月) )。
この日は、この二人が、ベルリンのフィルハーモニーでピアノ・デュオをやるということで聞きに来ました。
モーツァルト: 2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448
一曲目は、
モーツァルト: 2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448
WOLFGANG AMADEUS MOZART: Sonate D-Dur für zwei Klaviere KV 448
2台のピアノのために書かれたこの曲、モーツァルトが自らのピアノの弟子ヨーゼファ・バルバラ・アウエルンハンマー( Josepha Barbara Auernhammer)と2人で弾くための書かれた曲で、初演も1781年11月23日彼女と演奏したものです。
この時代、まだまだ連弾、二台ピアノなどの曲は少なかったようです。
この曲、のだめカンタービレの中で、千秋とのだめが2台ピアノで演奏する印象的なシーンで使われていますが、まさか、アルゲリッチとバレンボイムのデュオで聞く日が来るとは思ってもみませんでした。
2台ピアノ、向かい合って置くパターンと、隣り合って置くパターンとありますが、今回は、隣り合って置くパターンでした。
シューベルト: 創作主題による8つの変奏曲変イ長調 D813
二曲目は、
シューベルト: 創作主題による8つの変奏曲変イ長調 D813
FRANZ SCHUBERT: Variationen über ein eigenes Thema As-Dur D813 für Klavier zu 4 Händen
1824年夏、大二重奏曲 D812と同じ時期に、現在のスロバキアにあるジェリエゾフツェ(Želiezovce)で作曲された曲です。
一台を2人で連弾するタイプの曲で題名にも「4手のための」と書かれています。
バレンボイムが第一パートで右側に座り、アルゲリッチが第二パートを担当しました。
ストラヴィンスキー: 春の祭典
二曲目は、
ストラヴィンスキー: 春の祭典
IGOR STRAWINSKY: Le Sacre du Printemps Fassung für Klavier zu 4 Händen
この曲名を知らない方は、あまりおられないと思います。
1913年に完成し、初演は1913年5月29日パリのシャンゼリゼ劇場で、ピエール・モントゥー(Pierre Monteux)指揮で行われました。
この曲、バレエ曲として作曲されましたが、初演の振り付けは、天才振付師ニジンスキーの手になるものです。
現代音楽の傑作のひとつとうたわれるこの曲、初演時、賛成派と反対派が罵り合い、殴り合う大騒ぎになり、オーケストラの音がダンサーに聞こえなくなり、ニジンスキーが舞台袖から合図を送らないといけなかったほどとか。
この曲も何度か改訂が加えられていますが、1913年にピアノ4手ピアノ版が作られ、初演に先駆け5月に出版されています。
また、1968年にも、4手ピアノ版の改訂が行われています。
この曲も2台ピアノで演奏されました。
バレンボイムが第一ピアノを担当しました。
ものすごい拍手の中、アンコール二曲が演奏されますが、拍手は鳴りやみません。
何度かバレンボイムとアルゲリッチが呼び出され、最後には、バレンボイムが、ピアノの蓋を閉めて、「もうお終い」の意思表示。
大熱狂のうちに、コンサートが終了しました。
今回はアンコール一曲を除いて、すべてバレンボイムが第一。
バレンボイムは、終始ノリノリでした。
すごい演奏ですが、やはり独特の解釈。
昔、レッスンでバレンボイムの演奏を参考にもっていったら、「あれは、バレンボイムだから破綻せずに音楽になるんだ」と、コテンパに怒られたのを思い出しました。
この人が伴奏に回るというのは、どうも想像がつきません。
一方、アルゲリッチは、最近ではほとんどソロでは弾きませんが、
それでも協奏曲などで聞くと、最初の一音が出ただけで、「アルゲリッチだ!!」と感じさせるものすごい存在感を持っています。
この個性の強い二人のデュオってどうなるんだろうと思いましたが、さすがアルゲリッチ、完全にサポートに回り(この表現がよいかどうかわかりませんが)、音楽が崩れることが一切ありません。
今回アルゲリッチの演奏を聴いて思ったのは、和音のバランスが完璧だということです。
よく、和音のバランスが崩れる演奏家がいるのですが、彼女の場合、和音のバランスが崩れることなく、完璧でした。
これも、彼女の魅力を支える「すごさ」なんだと思います。
3曲を比べてみると、モーツァルトは、少々バレンボイムと相性が悪い気がしなくもありません。
シューベルトはよかった。
そして、春の祭典は、すごい。
春の祭典って、それほど好きでもなかったんですが、この演奏は別格です。
ちょっと、バレンボイム、パワー出し過ぎな感じがしなくもありませんが、そこも含めてバレンボイムらしい演奏でした。