そして、コウキは高校生になった。
自分が夢中になれるものを探さないと。
自分が一番を目指せるものを探さないと。
そうはいっても、簡単に見つかるものではない。
そこで、コウキは、部活には入らず、学校の外で探そうと考えた。
とりあえずアルバイトを始めることにした。
料理をしてみようと、考えて、居酒屋のキッチンスタッフに応募した。
そして、無事採用され、アルバイトを始めた。
そのお店の料理長がすごく人間味の溢れる人だった。
そして、週に4日ほど、料理に取り組んだ。
料理が自分に向いているかどうかは、わからなかった。
でも、そのアルバイトは楽しかったので、続ける気になった。
しかし、ある日を境に、コウキの興味の対象は変わってしまった。
それは、高校1年の時の文化祭での出来事だった。
軽音部の友達が、催し物として、バンド演奏をしていたのだ。
それを見たコウキは、感動した。
いや、単純にカッコいいと思った。
やってみたい!素直にそう思った。
そして、次の日、その友達に話かけた。
「なあ、ヨシキ!昨日のライブ、ちょーかっこよかったよ!俺も軽音部に入ろっかなー(笑)」
軽く冗談交じりで言った。
「やろうぜ、やろうぜ!じゃあさ、今、サポートのギターがいないから、ギターやってよ!」
ヨシキは、のりのりだった。
「よし、やってやるよ!」
「ギター持ってるの?」
「・・・ギターなんて持ってないし、触ったこともありまっせーん!」
「あっはっはー!そうなんだー!・・・さよなら」
「おいおい早いよ!もっとぐいぐい来いよ!」
「だってギター持ってないんでしょー?マジうけるー」
「これから買うからさ!俺バイトで貯めた10万円あるから!
明日、買いに行くから付き合ってよ!」
「まじか!お前、熱いな!よし!じゃあ明日買いにいくぞー!」
「おう!」
そして、次の日、コウキはギターを買った。
初心者向けのセットでエレキギターの一式を買った。
コウキは、アコースティックギターが欲しいと思っていたが、ヨシキが
「エレキギターの方が簡単に弾けるから、最初は、エレキギターの方が良い!」
と言い切っていたので、そうした。
「エレキギターの音質なんか、最初は分かりっこないから、安いのでオッケー!」
ということで、初心者向けのセットを買った。
そのセットには、簡単な教則本もついていた。
その後、アルバイトを辞め、家でひたすら練習をした。
始めた当初は、難しさにイライラしていた。
辞めようかとさえ思ったほどだった。
でも、少しずつ出来るようになるにつれて、面白くなってくる。
一か月で簡単なコードは押えられるようになった。
しかし、ここで関門が待っていた。
Fのコードである。
セーハコードと呼ばれる人差し指で1~6弦を押える形のやつである。
結局、Fのコードが弾けるようになったのは、始めて2か月後の事だった。
ここまではまだ、軽音部で弾ける腕ではなかったので、家で練習をしていた。
そして、ヨシキに了承をもらって、初めて軽音部に足を踏み入れた。
ヨシキたちは、練習を続けていた。
「おう。コウキ、弾けるようになった?」
「簡単なコードは一通り弾けるようになったよ。」
「ホントか!じゃあ、この楽譜渡すから、練習してきてよ!
じゃあ一回俺らだけでやってみるからね。」
「お、、おう。」
楽譜を渡されたコウキは、戸惑っていた。
(こんなの弾けるわけないじゃん。。。)
ヨシキ達は、演奏を始めた。
狭い教室内で、大音量の爆音。
普段、低い声のヨシキの綺麗な高音。
体の芯まで振動が伝わるドラム。
ドラムと共に、曲の土台を支えるベース。
そして、多彩なリズムと音色を奏でるギター。
コウキは、完全に心を奪われた。
そして、演奏が終わった。
「まあこんな感じの曲ね。まだ俺らコピーなんだけど、この曲、知ってる?たぶんネットである
から、調べてみてよ。」
ヨシキが言った。
「すごいよ!やっぱりヨシキすごいよ!」
コウキは、完全に興奮していた。
そして、家に帰って、ネットで調べた。
その曲は、Mr,childrenの「くるみ」という曲だった。
そして、改めてじっくりとこの曲を聴いてみた。
何度か聴くうちに、少し涙が出てきた。
「なんていい歌なんだ。音楽で人を泣かすことができるんだ。
僕も人を音楽で感動させたい。よし、やってやる。」
こうして、コウキの音楽人生が始まった。