幽霊と言えば人型もしくは動物型などいわゆる「生き物」の姿をしているというは定説です。

 

私もそう思いますし佐々木に聞いてもだいたいそうだと話します。

 

しかし、今回は私が体験したそんな定説とは違う話となります。

 

それでは最終夜、私自身が体験したとっておきの話をどうぞ。

 

〇 登場人物

津田 (一般人、霊感なし、今回の被害者)

佐々木(霊感あるも衰えている模様)

山田 (直感王、守護霊がやばい、今回のキーマン)

佐々木親戚A (神社の神主)

 

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≪最終夜 生えるもの≫

 

あの山での遭難未遂事件からさらに数年後、私たち3人は相変わらず時間が合えば登山をしていた。

 

もちろん、あんな嫌な目に遭いたくないという共通認識からなるべく心霊スポットとは無縁でついでに山田でも文句を言わないような難度が低い山を選んでいた。

 

そのお陰もあってか心霊騒ぎに巻き込まれることもなく楽しい趣味の登山がずっと続いていたときだった。

その日もS県の初心者向けの山へと登山に出掛けた3人。

何事もなく頂上へと行き、そして帰ってくる。

 

津「いやー、今日も問題なく降りてこれたな」

佐々「この程度の高低差ならむしろ物足りないでしょ」

山「はぁ? 体力バカのお前らと違って俺は限界なんですけど!?」

 

登山も無事終わり、恒例となっている山田のヒステリーを適当に流して私たちは山からおりて市内で少し早めの夕食を摂ることになった。

 

この時から私はすでに体に違和感を覚えいていた。

何となく左肩が重く、左上半身にも痛みというよりコリに近いような感覚を覚えていた。

もちろん、心霊的な現象とは思わず、登山による疲労程度と捉えていたため特に気にしている訳でもなかった。

 

山「腹減った。山で消費したカロリーを補給せねば」

佐々「相変わらずよく食うな。だからおっさん体型になるんだよ。可愛い奥さんに言われないの?」

山「超言われる。だから最近は健康的食事をして体重も落ちてるんだよ。ま、今はうちの嫁はいないから俺はノーストレスで食べれる訳だ」

 

山田の嫁さんの溺愛ぶりが伺える。

あの山田が嫁さんの言うことは基本全部聞いているそうだ。

年下で可愛いがっていると思うと何とも微笑ましい気分になる。

 

そう思いつつ私も食事を始めようとするが左手で茶碗を持った時、一瞬だけ肩に痛みが走った。

 

津「痛っ」

山「どした? どっか痛めたん?」

佐々「ぶつけたりしたか?」

津「いや…多分荷物が肩に食い込んで痛めたんだと思う」

 

そう言って肩を回してみるが肩こり以外特に感じなかった。

不思議に思いつつ食事を再開すると佐々木がじっとこちらを見てることに気付く。

 

津「佐々木?」

佐々「…見たことない」

山「あれ? お前もう霊とか見えないとか言ってなかったっけ?」

佐々「見えづらいだけで見えない訳じゃない。ただ…」

 

そういって再び黙る佐々木。

まさかやばいものを連れてきたのかと思って私は佐々木の次の言葉を待つ。

 

佐々「やっぱり分からん」

山「もったいぶって分からんって…もしかしてギャグで言ってるのか?」

津「どう見えてる訳?」

佐々「形容しづらいけど…分かりやすく言うと肩に草が生えてるて感じ」

 

佐々木の草発言を聞いて山田が爆笑する。

 

山「ぎゃははは。おいおい、とうとう草も幽霊化する時代になったのか!?」

佐々「いや幽霊って訳じゃない…ただ何となく草が生えてるように見える」

津「悪霊とかじゃないよな? お祓い行った方がいいか?」

佐々「そういうのとも違う。悪意とかそういうのもないし。ただ生えてるだけ」

 

真顔でそう言う佐々木を山田が転がりながら笑っている。

長い付き合いで佐々木が冗談とか言うタイプじゃないことを知っていた私は少し恐怖を覚える。

 

津「佐々木…」

佐々「とりあえず帰りにうちの親戚の神社に行こう。通り道だし俺連絡しておく」

 

そう言って佐々木はスマホを取り出してメッセージを送る。

不安そうにしている私に山田が声をかける。

 

山「大丈夫だって。悪霊とかじゃないっぽいんだろ? あんま気にするとよくないから気にせずメシ喰おうぜ」

津「お、おう…」

 

そう促されて私は食事を再開する。

程なく、佐々木が連絡取れたから食べたら行こうという話になった。

佐々木も「悪霊じゃないから心配するな」と山田と似たようなことを言っていたので私は肩の違和感を抱えつつも食事を終えた。

 

その後、私たちは佐々木の親戚の神社に向かう。

山間部にある小さな町にある神社で古くから山の神様を祀っているそうだ。

車中も山田が騒ぎ、それにツッコむというやり取りをしていたお陰なのか不安な気持ちを感じるようなこともなくその神社へとたどり着いた。

 

社務所へと入るとそこに神主である佐々木の親戚Aがいた。

事情説明等のやり取りあと、御神体がある神殿に通された。

 

親戚A「ではそちらに座ってください」

津「はい」

 

そう促されて私は座布団が敷いて立った場所に座った。

御神体の前で見れば何か分かるかもしれないと親戚Aは考えたようだった。

 

佐々「結局どう?」

親戚A「悪いものではないです。ただ私も見たことがないので何かと聞かれると困ります」

 

どうやら神主である親戚Aもそれが何か分からなかった。

ただ悪しきものではないというのは分かるそうで心配することはないとのこと。

 

親戚A「お祓いはどうしますか?」

津「お願いします」

親戚A「分かりました。それでは準備を始めますので奥でお待ちください」

 

その後、佐々木もお祓いの準備を手伝うということで私と山田は控室で待機することになった。

お祓いしなくてもとは言われたが得体のしれないものがあるのなら気休めでもお祓いをしてもらって気持ちを楽にしたかった。

 

お祓いが始まり、三人でそれを受ける。

肩の重みとかなくなればと考えていたがお祓いが終わってもその違和感がなくなることはなかった。

そして帰り際、親戚Aが声をかけてくる。

 

親戚A「お役に立てなくて申し訳ありません」

津「いえ、御守りありがとうございます。気も楽になりましたし」

親戚A「もし何かあればまたお越しください」

 

そう言って私たちは神社を後にする。

もうすでに辺りは暗くなり始めていたため早く帰ろうということで寄り道することなく家路についた。

 

そんな車中、ペラペラしゃべっていた山田が何か思い出したかのように自分のバッグを漁り、私にその出したものを渡してくる。

 

山「そうだ。お前にこれを貸してやろう。俺が昔から愛用する筋肉痛とかそういったものに効く塗り薬。匂いはきついが効果は保障するで」

津「ありがとう」

 

山田は元運動部ということもあってこういった医薬品に詳しいことがある。

ただ色んな商品に手を出すタイプではなく一度「これは効く!」と思えばそれしか使わない傾向もある。

 

今回渡してきたのも同じで山田が中学時代から使っている愛用品の一つだ。

その匂いは独特で山田が「部活で筋肉痛になった」とか言ってる日はこの匂いを発してたことを良く覚えている。

 

さっそく私はその薬を違和感がある方やわき腹に塗ってみた。

始めて使用したが塗ったあと、ビリビリと肌に刺激を感じる。

そしてあの独特の匂いも漂わせており逃げ場のない車内で佐々木が悶絶する。

 

佐々「くっさ!お前それ車内で塗るなよ。俺の車だぞ」

津「あっ、悪い」

山田「いやーこの匂いはいいな。ついでに霊とか祓えるんじゃね」

佐々「んな訳ないだろ!」

 

結局この車内異臭事件で社内は無意味に大盛り上がり。

そして山田から借りた塗り薬のお陰で肩こりも大分気にならなくなった。

ビリビリとした刺激が肩こりの違和感を打ち消していたのだと思う。

 

家に帰った私はとりあえず普段通りに過ごす。

休み明けに会社へ行き仕事をして帰宅するという日々を過ごす。

 

山田に借りた薬も2、3日程使用していたら肩の違和感とかは無くなった。

そればかりか肩こりも大分緩和されてしまい薬局に行って同じ塗り薬を買ったのは言うまでもないだろう。

 

そしてあの日から2週間後、私たち3人は佐々木の家に集まっていた。

お互いの家族を連れてのバーベキュー大会だ。

久しぶりに会った山田に借りていた塗り薬と菓子折りを渡す。

 

津「助かったよ山田。お陰で違和感なくなった」

山「やっぱり効いたべ?てか結局あれって心霊じゃなくて津田がただ肩痛めたってだけの話じゃん。佐々木の勘違いでおけ?」

佐々「いや確かにいたんだけど…今はいないといのも間違いない」

 

佐々木の話を聞いて私はホッとする。

お祓いのあとでもそれは生えた。

だが生えるものはいつの間にか消えていたようだった。

 

なぜ消えたのか、そして草らしいものは何だったのかは今でも分からない。

ネットで調べてみたもののそれといった情報も無かったのでこの件はもう調べることをやめてしまった。

 

ただ一つ言えるのは…山田が貸してくれたあの塗り薬は肩こりによく効くと言うこと。

もしかしたら山田が愛用しているから霊的な何かが宿っていてその力であの生えるものを祓ったのかもしれないと妄想をしつつ、私はバーベキュー大会を楽しむのでった。

 

 

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いかがだったでしょうか?

この話は自身で本当に体験した話です。

 

ただ私の肩に草のように生えていたものが何なのか、山田のあの塗り薬は除霊効果があったのか、謎ばかりな出来事ではありますが…。

ただ正体を探るような行為をするつもりは今の私にはありません。

 

結局、そういったものに無暗に近づくと碌なことがないと自身の体験含めて理解しているつもりだからです。

 

皆さんも心霊関連で興味をそそられる機会はあるとは思いますが思いとどまった方が身のためかもしれないとだけ書いておきます。

 

さて、今回の話で【津田さんの体験談】シリーズは終了となります。

私自身としては結構な体験をしたつもりではいたのですがいざこうして書いてみると話にできるような体験談が意外に少ないことに驚きました。

 

そして次回からは【津田さんの聞いた話】シリーズとなります。

これは佐々木や山田を中心に聞いた怖い話や不思議話を創作を入れてお送りしようと思っています。

 

セリフ回しなどは創作ではありますが…

話の本筋は実話だと断言しておきます。

 

新シリーズは6/2から、話数はとりあえずネタが尽きるまで書く予定です。

一日一話を目標に上げていければと思いますので興味のある方は是非お付き合いくだされば幸いです。