世の中には心霊関係や頭がおかしい人など恐怖を煽る存在は多いです。

ただそれとは逆に救ってくれる存在というのも確かに存在します。

 

私は旅行先で一人のおじさんと出会いました。

そのとき彼が名乗った名前は「宮城」

 

これはいつもの三人で温泉旅行に行った時の不思議なエピソードです。

 

〇登場人物

津田(私、一般人)

佐々木(霊感あり、今回大して役に立たずだった人外一号)

山田(直感の男、ハイテンションな人外二号)

宮城さん(旅先で出会ったバックパッカー、退職後全国各地を旅している物腰の柔らかい人)

 

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≪第六夜 宮城さん≫

 

卒業旅行は温泉に行きたいと騒いだ山田の我儘でいつもの三人で隣県の温泉地へと向かう。

大学も卒業し、4月から就職ということもあってこうして自由に遊びに行ける機会は無くなることは分かりきった事だったのでいい思い出を作りたいと私は考えていた。

 

山「この山道を越えた先に温泉がある!」

佐々「はいはい。安全運転でよろしくな」

山「分かってるって。俺だって新車をぶっ壊したくないからな」

 

山田は仕事で使うということで最近車を購入していた。

銀色の乗用車で今どきのオートマ車。

 

そんな新車に揺られながら私たちは山を越えた先にある温泉地へと向かっていた。

今回向かっている温泉地は市街地にある温泉で全国でも有名な場所だ。

 

ただ私たちの住んでいる場所から向かうとどうしても山を越える必要があったため現在進行形で山道を進んでいるという訳だ。

 

時刻はお昼前、昼食は市内で何食べるとか話をしているときだった。

道路脇で座っている一人の男性が目に入る。

 

普段なら特に気にすることなく通り過ぎるだけの話なのだがなぜか山田も佐々木もその男性に反応する。

 

山「こんなところで座り込んで…登山客かな?」

佐々「随分でっかいリュックだな」

津「どうする?」

山「遭難してるかもだし声掛けるか」

 

ここでコミュ力が高い山田が路肩に車を停め、反対車線の路肩に座っているおじさんに声をかける。

 

山「おじさん大丈夫っすか?」

宮「あぁ大丈夫。ちょっと休んでただけだよ。いやー、市内は遠いね」

 

話を聞くとおじさんはどうやら歩いて私たちが向かっている温泉のある市内へと向かっているとのことだ。

そんな話を聞いた山田がいつもの親切心をだす。

 

山「俺たち今から市内の温泉地まで行くっすけど乗ってくっすか?」

宮「君たち旅行中じゃないの?悪いよ」

山「いやいや。市内までまだ距離ありますし遠慮せず乗ってくださいよ」

宮「そうかい。恩に着るよ」

 

そう言ってその男性はこちらへとやってくる。

登山用のウェア上下に髭を携え、帽子をかぶっている。

 

見た目は結構歳を取っているようにも感じるが重そうな大きなリュックを背負っていることから力はあるといったところだ。

 

山「荷物はトランクに入れてください」

宮「分かった。いやーホントありがとう。それじゃお邪魔するよ」

 

そう言っておじさんは後部座席に陣取る。

今回の車の座席順は山田が運転席、佐々木が助手席だった。

それで私が後部座席ということでおじさんの隣となる。

 

山「それじゃ出発します」

 

そう言って山田が再び車を走らせる。

程なく、コミュ力が高い山田の質問攻めが始まる。

 

山「俺山田って言います。こっちが佐々木、こっちが津田です」

宮「これは親切に。私は宮城と言います」

山「宮城さんって歩いて旅行してるんすか?」

 

そんな感じで宮城さんの情報が色々分かってくる。

年齢は55歳で出身は四国。

長年勤めた会社を早期退職して今は悠々自適に全国各地を回っているということだった。

 

宮城さんの語り口は優しく、またこれまで回った各地の見どころとかおすすめを色々教えてくれた。

宮城さんを乗せてから市内までの三十分弱、車内はとても楽しい時間になった。

 

後半はこれから社会人になる三人にと色々アドバイスまでしてくれた。

こんな人が会社の上司だったらいいなとか思っていると気が付けば市内に入っており駅前へとたどり着いていた。

 

宮「本当に助かったよ。送ってくれてありがとう」

山「旅は道連れってやつっすよ。それより宮さんお昼は? 一緒にどうっすか?」

宮「お誘いは嬉しいけど今日はもう帰らないといけなくてね。君たちのお陰で予定より早く帰れそうだよ。そうだ、ここまで運んでくれたお礼をしないとね」

山「まじっすか! あざっす」

津&佐々「いや少しは遠慮ぐらいしろよ」

 

山田の無遠慮さをよそに宮城さんはトランクに入っていた大きなバッグから色々取り出して私たちに手渡してきた。

 

宮「これは四国のお菓子でこっちは北陸のもの。お酒にも合うから今日泊まるところで楽しむといいよ」

山「すげ、見たことないけどめちゃ美味そう」

佐々「本当にすみません。ありがとうございます」

津「ありがとうございます」

宮「いいんだよ。量があっても一人じゃ食べきれないからね」

 

そう言いながら山田と佐々木は宮城さんから貰ったお土産をみながら騒いでいる。

そんな中、宮城さんがふと私の前に立つと小さな布袋を手渡してきた。

 

宮「一つしかないけど津田君にはこれもあげるよ」

 

そう言って手渡されたのは一つの御守りだった。

買ったばかりのようでその御守りはキレイな状態だった。

 

津「いいんですか?」

宮「いいんだよ。その御守りはよく効くことで有名だから旅行中は持っているといいよ」

山「何々? 津田いいなぁ。宮さん、俺にもなんかないっすか?」

宮「ごめんね。それ一つしかないけどきっとその御守りが三人を守ってくれるよ。それじゃ三人の卒業旅行いっぱい楽しんでね」

 

そう言って宮城さんは荷物を背負うと私たち三人に深々と頭を下げて駅の方へと歩いて行った。

山田が「宮さーん」と言って手を振ると宮城さんも振り向いて小さく手を振ってくれた。

こんな人通りが多いところで恥ずかしげもなく大声を出すあたり山田はやはりハイテンションだと思った。

 

見送りも終わり車中に戻った私たちであったが早速山田が私に尋ねてくる。

 

山「んで、その御守りなんなん? 実はお小遣いが隠されてるとか?」

津「そんな訳ないじゃん。綺麗な御守りだけど…佐々木、どう?」

佐々「ちょっと見せて。うーん、別に何も感じないかな。普通の御守りだよ。ただ確かにここの御守りは有名だね」

津&山「???」

佐々「これ身代わり御守りだよ」

 

佐々木の一言に山田のテンションがまた上がる。

 

山「マジで! 残機が増えるとかそういうやつ?」

佐々「そういうやつじゃないことだけは確かだね。けど厄除けとかそういう効果があると思うよ。ま、この中で持つべきは津田というのは間違いないね」

山「それは…確かにそうだな」

津「とういうこと?」

 

御守りを持つのは私が相応しいという二人。

その理由を聞いてみると本当にくだらないことを言われる。

 

山&佐々「「津田ってこの中で一般人枠だし」」

 

まぁ否定はしない。

霊感持ち&守護霊がなんかやばい二人に比べれば私なんて本当に一般人だと思う。

とはいえ、そうはっきり言われるのはどうも癪に障る。

 

津「はいはい。どうせ一般人ですよ、すみませんでしたね。人外のお二人さん」

山「いやいや、俺人辞めてないから」

佐々「ごめんごめん。けどその御守りは津田が持っているといいよ。宮城さんが手渡してくれた訳だし」

 

結局、宮城さんがくれた御守りは私が持つことになった。

私は御守りを財布の中に入れて大事にしまっておく。

 

宮城さんと別れた私たちは近くで名物を食べたあと、少し時間を潰してから予約していた旅館へと向かった。

到着した旅館で山田が「温泉!」とテンションを上げてさっさと向かったので私たちも温泉に入ることにする。

 

有名ということもあり、川沿いの景色のいい露天風呂を楽しんだあと部屋に戻ってきた私たちに山田が突然こんなことを言い出す。

 

山「夕食まで時間あるし温泉街に足運んでみようぜ」

佐々「いいね。温泉街の雰囲気を楽しもう」

 

珍しく佐々木もテンションが高いようで三人は旅館を出て近くの温泉街へと向かう。

昔ながらの街並みでお店も多く三人で楽しんでいた。

そして時間も経ちそろそろ戻るかと言いながら旅館へと戻る。

 

遠くからサイレンの音が聞こえてくるあたり温泉街を出れば自分たちの住んでいる場所と大差ないなとかそんなことを考えていた。

道中、交通量の多い交差点に差し掛かったとき、渡ろうとしていた横断歩道の信号が点滅し始める。

 

山「やべ。信号変わる」

佐々「おい、山田待てって」

 

駆けだそうとする二人に私もついて行こうとした瞬間、足の裏に何か刺さるような感覚を覚える。

 

津「痛っ!」

山&佐々「どうした津田?」

 

私のその声に反応したようで二人は横断歩道を渡るのをやめてこちらに駆けよってきた。

 

津「なにか足の裏に刺さったような…」

山「小石でも踏んだんじゃね?」

佐々「靴の中に入ったと…(フォーーーン)」

 

交差点の歩道でそんな会話をしてる途中、猛スピードで車が横切っていた。

程なく、パトカーがその車を追跡していたようでけたたましいサイレンを鳴らしながらその車を追っていた。

 

山「信号無視かよ、こんなところにもいるんだな」

佐々「何だろ? 強盗とかそんな感じかな?」

 

二人がそんな会話をしつつ、足に怪我を負った私に肩を貸してくれてそのまま旅館へと戻った。

ロビーで絆創膏をもらい、部屋に戻って治療する。

 

怪我といってもちょっと血が出た程度で全然大したことはなかった。

その後、旅館での食事を楽しみ再び温泉に入って部屋で飲むという話になった。

じゃんけんで負けた私は旅館の売店でお酒を購入する。

 

そのときふと財布の中身を見たときだった。

入れていたはずの御守りがどこにも入っていなかったのだ。

そのことに疑問を持ちつつ、部屋に戻った私はさっそく二人にその話をする。

 

山「はぁ? 早速宮さんのお土産無くしたのかよ」

津「いやいや。確かに財布に入れたし落とせば気付くって」

佐々「…もしかしたら身代わりになったのかもしれない」

 

佐々木が突然そんなことを言い出した。

その言葉に黙った私と山田を置いて佐々木は話を続ける。

 

佐々「いやさ。あの御守り新品だったしもしかしたらってだけだよ。正直、特別な力が宿っているようなものじゃない一般的に販売されている御守りだったから確証はないんだけどさ」

津「つまり身代わり御守りがその名前の通り身代わりになったってこと?」

佐々「たぶん。例えばあの信号無視の車に巻き込まれそうだった俺たちを助けてくれたとか?」

 

そんな感じで考えている時、山田はいつものように空気を読まずにハイテンションで喋り出す。

 

山「マジで! すげーじゃん、それじゃ宮さんに乾杯!」

 

そう言って山田は早々に酒を飲み始める。

唐突な行動に佐々木がツッコむ。

 

佐々「山田、今真剣に話してるんだぞ」

山「何言ってるんだ?宮さんのお陰で俺たちはこうして楽しく旅行できてるってことだろ? じゃあそれが真実! お前らも宮さんに感謝しとけって。ほら、もう一回」

 

そう言って山田が缶ビールの缶を掲げる。

さっさとしろよっていう空気を感じた私と佐々木は山田のペースに合わせることにする。

 

山「それじゃ改めて、俺たちを救ってくれた宮さんに乾杯!」

津&佐々「乾杯」

 

そういって三人で一気にお酒を呷る。

正直、山田の言った通りだと私も感じていた。

 

宮城さんが私たちの旅の安全を祈って渡してくれたあの御守りがあったからこそこうして無事でいられるのではないかと。

 

そう思い心の中で宮城さんに感謝しながらその日は宮城さんがくれた各地のお土産を食べつつお酒を楽しんだ。

 

翌日、旅館を出た私たちは周辺の観光スポットを巡ったあと家路についた。

道中、宮城さんを乗せた場所を通った。

もちろん宮城さんの姿はそこにはいなかった。

 

私たちの卒業旅行はこうして何事もなく楽しかった思い出として自分たちの心に残り続けるのでした。

 

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いかがだったでしょうか?

 

旅行中に親切にした方から貰った御守りのお陰で無事に旅行を満喫できたというお話でした。

 

もちろん、ただの偶然と言えばその通りですが私にはどうしても偶然として片づけられない思いがあります。

 

ただ、佐々木や山田に聞いても宮城さんは普通の優しいおじさんという印象しかなく、何か特別な力を宿した人ではないといいます。

もちろん、御守りもごく一般的な御守りだったそうです。

 

人に親切にしたら不思議な縁で命を救われたのかもしれない、今回はそんな不思議なお話でした。