家に着き、そっと玄関を開ける。
もう遅い時間だからみんな自室に引き上げたらしく、居間はシーンと静まり返っていた。
テーブルの上にメモが置いてある。
(なになに…)
ethlin義姉さんへ
歳三義兄とのデート楽しかったですかv(^-^)v?後片付けとお洗濯は全部済んでいますから、後はお風呂に入ってゆっくりして下さいね。
明日お隣のぶるこんちゃんも呼んで、みんなでケーキ食べましょう
あさぎ・ゆすら・沙雪より
(あさぎちゃん、ゆすらちゃん、沙雪ちゃんありがとう
)
メモを綺麗に折りたたみ部屋へ戻る。
「歳三さん、今日も一日おつかれさまでした。お風呂入っちゃってください。私は明日の準備しますから」
「ethlin、お前こそ疲れただろ?先風呂入れ」
「大丈夫ですよ。後片付けは皆がしてくれたので、お風呂掃除くらいしたいし…。それに私には明日のスーツ選びという重大な任務がありますから!」
私の密かな…いや…もう歳三さんにはばれちゃったけど(苦笑)、一人でスーツとシャツ、ネクタイのコーディネートを決めるのが私の楽しみの一つ。
「せっかくの楽しみを取っちゃぁ…いけねぇな。じゃあゆっくりしてくるから、せいぜいニヤニヤしてろ」
(えっ!!なんで毎回ニヤニヤしてるの知ってるの!?はっ…恥かしい~//////)
お風呂場に向かった歳三さんを見送り、脱ぎ捨てられた上着を拾い上げる。
上着をハンガーにかけて、丁寧にブラシをかける。
(スーツ…万歳。スーツ…最高)
「よっし!今日も一日ご苦労さまでした」
スーツにねぎらいの言葉をかけ、タンスの中をごそごそとあさる。
(明日はどうしようかな…夜はだいぶ涼しくなったよね。もう少し寒くなったらさぁ~そうだ…ベスト…ベストもいいよね…英国紳士みたいでさ…歳三さんかっこいいだろうな~似合いそう//////。そうだ!もっと寒くなったらコート!でも最近暖冬だしコートいらないかな~。軽い素材のジャケットとか…。あ~マフラー…マフラーはいるよね。カシミヤのマフラー…肌触りがいいしな~)
私の脳内は晩秋を飛び越え、すっかり冬の時代を迎えてしまった。
(手袋…革の手袋した歳三さん…イカス//////。そういえばさぁ~体育祭の時の歳三さん…カッコよかったな(//・_・//)、長ランに白手袋…ハチマキ…また来年も組長しないかな…)
明日のスーツの用意はどうしたのか(笑)
続いて脳内はすっかり体育祭の回想で埋め尽くされてしまった。
(薄暗い教室で…二人っきりで…キャ~思い出したら恥かしいよ~(/ω\))
いやいや…だから自分…明日のスーツの用意は…?もしもし?
(学ラン姿の歳三さん…ヤバス//////。でも学校はブレザーだから、学生の時はあの浅葱色のブレザー着てたんだよね…。学生時代の歳三さんに会ってみたかったな…すごくモテただろうな)
今度はタイムスリップですか?いい加減戻って!!自分(笑)
(今度お隣の風間さんに聞いてみよう。同級生だって言ってたよね。風間さんが学ラン(白いけど)着てるから、歳三さんの時代は学ランだったのかもしれない
)
自分で自分に納得したところで、拳を握り片手を元気よく上げる。
「よっし!明日のスーツの準備しよう!!」
「って…ethlin…お前、あれから30分以上は経ってるのに何やってたんだ?」
「へっ?30分?」
振り向くと髪の濡れたままの歳三さんが不思議そうな顔で立っていた。
「あれ?もうお風呂から上がったんですか?」
「だから30分は風呂に入ってた。で、戻ってきたらお前がタンスの前で放心状態だった」
(やっヤバイ…私…めちゃくちゃトリップしてた?)
「あわわわっ…色々考え事をしてたら…その…」
「考え事って…なんだ?」
何って…何って…
(いっ言えない…)
「はぁ~、どうせくだらねぇ事考えてたんだろ?仕方ねぇな…明日の準備はいいいから、早く風呂入って来い。日付が変っちまう」
時計を見るとやがて23時になろうとしていた。
「いや~もうこんな時間!?お風呂行って来ます!!」
着替えとタオルをわしづかみして部屋を飛び出した。
「ったく…慌てて入って転ぶなよ」
歳三さんのため息を背中で聞きながら、私はお風呂場へと急いだ。