空に舞い散る夏の花 ~夏祭り~ ⑤ | ethlinの煩悩毛だらけ

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煩悩さらけ出し日記

屋台が始まると同時に、小さな子供達が新八さんの周りに集まってくる。


わざと矢に当たったり、大げさに倒れたり、とにかく子供達に大人気だ。


近藤さんは順番待ちの子供達を肩車したり、抱き上げたりして遊んで上げている。


歳三さんが近藤さんに何か声をかけて、周りの子供達に声をかけた。


子供達は一瞬ビクッと顔を引きつらせ驚いている。


「あははは~お兄ちゃんにびっくりしちゃったかな?大丈夫、怖くないよ♪お姉ちゃんと遊ぼ♪」


わらわらと子供達が集まり、さながら幼稚園の先生になった気分だ。


「ethlin、近藤さんが出る。子供達の相手頼むな」


「はい、歳三さん。近藤さん、行ってらっしゃい♪子供達の相手は任せてくださいね!おいで~鬼さんの順番来るまで景品見てようか?布の絵本もあるよ♪お姉ちゃんと見てようね~」


「わぁ~♪かわいい~」


(子供ってかわいいな♪あんまり相手した事ないけど…大人より気持ちがわかりやすいや)


相変わらず歳三さんの近くに寄ってくる子供達は少し固まったりして、つい苦笑が漏れる。


(歳三さんと子供って不思議な組合せだな)


チラリと隣の原田さんを見る。


子供が好きらしく、小さな女の子に楽しそうに相手をしている。


小さくても女の子はやっぱり女なのだろう。


原田さんに優しく頭を撫でられ、頬を赤らめ嬉しそうに景品の小物を握りしめてお母さんの元へ走って行く。


(原田さんは家庭的なお父さんになりそうだな。そのうちおねぇは原田さんと結婚して…きっとお母さんになる。新しい家族が出来て…そしたら…)


少しだけ寂しさが私の胸を貫く。


(今のままってわけに行かないよね。おねぇも私も…いつまでもべったり一緒にいられないのかな。いつか離れてしまう…よね)


その時自分はどうしてるんだろう?


私の隣に誰かいるの?


私の大切な人は傍にいてくれるの?


「おねぇちゃ~ん?」


子供達の呼ぶ声で我に返る。


不安な気持ちは伝染するのだろう。


子供達は少し不安げな顔で私を見つめていた。


「ごめんごめん。ちょっとぼんやりしちゃった。あっ!ほら順番が来たよ♪はい、並んで~並んで~♪順番まだの子はこっちにおいで。好きなぬいぐるみあるかな?」


波のように寄せては返す不安を消し飛ばすように、私は子供達に笑いかけた。






屋台に群がる子供達が少し落ち着いた頃、斎藤さんがクーラーボックスを持って現れた。


「副長、遅くなり申し訳ございません」


「斎藤ご苦労だったな。ゆすらさんも斎藤の手伝いありがとう。助かった。せっかくの休みなのに悪かったな」


「こんにちは、土方さん。楽しかったですよ。スイーツの試食もさせてもらいましたし。デリケートなスイーツを運ぶので少し時間がかかってしまって…反対に屋台の準備のお手伝いが出来なくて…申し訳ないです」


「気にしなくていい。こっちの手伝いはこいつがいたからな」


ふと顔を上げると、斎藤の隣にはたまにカフェで見かける、斎藤さんの彼女さんらしき女性が立っていた。


肩くらいまでの長さの髪、見た目も仕草も女性らしくて、おねぇとはまた違う清楚でたおやかな色香を漂わせている。


斎藤さんと並ぶと本当にお似合いの二人といった感じだ。


(あぁ…なんで私の周りにいる人って、こう…私のコンプレックスのすべてを克服したような人ばっかりなのかな…)


気後れしてしまった心を隠し、なんとか笑顔を作ってみせる。


「こんにちは。初めまして。ethlinです。えっと…カフェで何度かお見かけしてるので…私は一方的にお顔だけ知ってるんですが…」


「こんにちは。初めまして。ゆすらです。私もカフェにいる所を何度かお見かけしてます。あと花屋さんの方でも。土方さんとよく一緒にいらっしゃいますよね?」


(わっわわ…意外と見られてるんだ…恥かしい~(//・ ・//))


「あっ…はい!なんだか毎回毎回仕事の邪魔しに来てるみたいなもんですけど…。私…おねぇと違って…私何にも出来ないし…」


初対面の人に何言ってんだろ…私。

「お前な…仕事の邪魔になってたら…とっくの昔に店から追い返してるぞ。Staff Roomの掃除とか、雑用とか…自主的に色々してんだろうが…いつも助かってる…」


「えっ…でもおねぇみたいにお弁当の差し入れしてるわけじゃないし…どっちかって言うと毎回おやつもらって帰ったり、送ってもらったり…迷惑ばっかりかけてるし…」


「迷惑だったら…とっくに追い返してる。俺が送ってやりたいから送ってく…わかったか?」


「はっ…はい…」


ゆすらさんは私達のやり取りを見ながらクスクスと笑い声を上げる。


「土方さんって一さんみたいに無口な方だと思ってましたけど、ethlinさんといる時って印象が違いますね。ethlinさんの事すごく大切にしてる。ethlinさんも…すごく大切に思ってますよね」


「えっ!!そっそんな…」


恥かしい気持ちでいっぱいなんだけど、なぜかゆすらさんの口から紡ぎ出される言葉がすっーっと心の中に素直に落ちていく。


「あっ…ありがとうございます。斎藤さんもゆすらさんと一緒にいる時が一番いい笑顔でいます。きっとゆすらさんだから…斎藤さんの心は癒されるんですね」


「そんな…」


ゆすらさんはほんのりと頬を赤らめ照れてしまった。


(うっわぁ~かわいいなぁ~)


チラリと斎藤さんの方を見ると、斎藤さんもゆすらさんに負けないくらい赤い顔で照れている。


(さっ…斎藤さん…そこまで照れられると…反則です!!)


「よし!斎藤、冷蔵庫にスイーツを詰めちまうぞ。んで、ゆすらさんとゆっくり祭りを回って来い。俺と佐之助はしばらくここにいる」


「歳三さん、私も手伝います」


ゆすらさんの隣に並び、冷蔵庫にスイーツを並べていく。


「うわぁ~今日のも美味しそう~!うちの催し物で販売したら絶対に数時間で完売だよ~」


「ethlinさんはイベント関係のお仕事?それとも食品関係の方かしら?」


「私はデパートの食品売場に勤務です。だから食べ物見ると気になっちゃって…。あっ!私は食べる方ばかりですけど」


チラリとゆすらさんの白く長い指を見る。


手入れされた綺麗な指も、よく見ると少し手荒れしている。


私の視線に気がついたのか、恥かしそうに手を引っ込めた。


「手荒れ…ひどいでしょ?手はどうしても…ね…」


「そんな事ないですよ。私もしょっちゅう手洗いしてるから朝、晩のハンドクリームじゃ間に合わないくらいボロボロだし。えっと…お水を使うお仕事?お菓子屋さんとか?」


「病院関係なの」


ゆすらさんがふわりと笑う。


「あ~!わかった!!白衣の天使だ!っと…今の医療関係者の現状じゃあ、天使とか言ってられないですね。でもゆすらさん、天使のイメージです。優しそうだし…なんて言うんだろう…今日初めてお話して、まだ何にも知らないけど、言葉に力があるって言うか…そう!『言霊』だ、ゆすらさんの言葉。声とか口調とかひっくるめてすごく優しくて、心に染み渡る…そんなカンジです」


って…私初対面の人の何ペラペラ喋ってるんだろう。


急に恥かしくなって俯き黙りこくると「ありがとう」の言葉が耳に入る。


「ありがとう…そんな風に言ってもらうの初めてだから…ちょっと照れくさいけど…嬉しい。そうね、そうだといいな。そうだったら…いろんな人の助けになれる…」


ゆすらさんは丁寧にスイーツを並べながら少し寂しげに笑う。


(医療関係のお仕事はすごく大変なんだろうな…。患者さんと真っ向勝負だもんね。私なんか…その日暮らしでノロノロしているし…ううっ…見習わないと…)


「あっでも!なれますよ!きっと♪たくさんの人を助けるのはすごく大変だけど、やろうとか、やりたいとか全然思わなかったら出来ないもん。それに『こうなりたい』とか『こうしたい』とか…望む事は簡単だけど、それに向かうために強く望む事ってすごいパワーじゃないですか。強く願えば夢は叶います…きっと…。『ゆすらさんなら出来る!!』なんて言葉は安っぽいから嫌だけど…きっと出来ます。ゆすらさんが手を伸ばしてくれる時を待ってる人がいます」


気がつけばまた初対面の人に熱弁している自分がいた。


「アワワっ…ごっごめんなさい…何も知らないのにベラベラ偉そうな事ばかり言って」


「ううん、ありがとう。ふふっ…ethlinさんって面白い人。きっと…純粋で心根が真っ直ぐで嘘つけない人ってとこかな?」


「いやいや…そんな…ただのお気楽でバカ正直で嘘つくのが下手なだけです。…でも…ゆすらさんに言われるとやっぱ嬉しい…です。ありがとうございます」


(ゆすらさんって優しくていい人だな~。この前知り合った聖さんとはまた違う感じだし♪仲良く…なれたらいいな…)


スイーツがすべて冷蔵庫に並べ、ケースの外からゆすらさんと眺めていると、斎藤さんが近づいてきた。


「あっ、ゆすらさん。斎藤さんがお誘いに来ましたよ」


「ゆすら、副長からのせっかくのご好意だ。そろそろ祭り会場を回ろうと思う。準備はいいか?」


「斎藤さん、ゆすらさん、ゆっくりお祭りを楽しんで来て下さいね。あっ!ゆすらさん、射的するんだったら残念賞は事態した方ががいいですよ。斎藤さんがやもち妬いちゃうあせ


「えっ?残念賞ってなあに?」


小首をかしげるゆすらさんの耳にそっと耳打ちをする。


「ふふっ…面白そう。一さんがどんな反応するか見てみたいかも」


「ですね…ポーカーフェイスの斎藤さんの慌てた顔…見てみたいかもです」


「なっ…なんだ?なにかおかしな事でもあるのか?」


一人慌てる斎藤さんを見ながら、私とゆすらさんはクスクス笑いあった。