お昼過ぎに帰って携帯電話会社に寄ろうと思ったが、急なトラブルが発生した。
頭痛を我慢して事務所にこもり、黙々と事務仕事をこなす。
(慎重にやらないと二重のトラブルになるし…でも気が散ってるし…頭も痛いし)
このひどい顔で店頭に出なくて良かった事は不幸中の幸いかもしれない。
(とにかく今日中に終わらせて…明日は確認取らないと…この調子だと明日も仕事だな…。)
作業に集中している間にも他の問い合わせが入り、作業の手が止まる。
(せめて定時に帰れるかな…)
泣きたい気持ちで一杯になるが、昨日泣きすぎたせいか涙が出る様子はない。
(家に電話して、おねぇにはお母さんから連絡してもらって…)
チラリと濡れてしまった携帯電話を見つめる。
(どうしよう…歳三さんへの連絡…。お花屋さんの電話番号くらい調べればわかるけど…私用なのにお店に電話するのもなぁ…)
そう思いながら、少しだけホッとしている自分がいる。
(連絡するなって…事なのかな…。少し距離を置いて落ち着けって事かな…)
ほんの少しだけ、心の中に生まれた小さな影が私の心を不安にさせる。
頭をふるふると振り、目の前の仕事に集中する。
(もしこれで本当に連絡が途絶えちゃったら…)
人間の手はそれぞれの大きさがある。
小さな手に収まりきらなかったモノは零れ落ちるしかない。
(小さな手には小さな幸せしか入らない。あんなに大きな幸せは…やっぱり私の手には余るんだ…)
どんよりとした考えと仕事の事だけが頭を支配する。
(仕事…やっぱり仕事を一生懸命にするしか私には能がないのかな…。きっと、おねぇのように仕事も恋も手に入れられる人間じゃないんだな…)
仕事がろくに出来ない人間が、恋も上手く出来るわけがない。
(とにかく…目の前の事を終わらせよう)
私はパソコンと書類に集中し、手を動かし続ける。
家に帰り、パソコンの電源を入れメールをチェックする。
見覚えのあるアドレスから一通のメールが届いていた。
(おねぇからだ)
件名:水難注意報(笑)
携帯水没しちゃったんだって?おねぇも何回かやっちゃったけど、最悪だよね(苦笑)
急ぎの用事があったらおねぇの携帯に電話しなよ。番号載せとくから。あと、携帯のメルアドも。
今度は手帳に書きとめときなよね。
メールはパソコンからでもOKだよん。文字数オーバーだけ気をつけてね。
あと歳三さんに連絡した?わかると思うけど、花屋の方のTEL番も載せとくからね。
P.S
新しい携帯買ったら、どんなのにしたか教えてちょ(^-^)
「電話…やっぱりした方がいいよね…」
とは言え、家の電話から電話するのには勇気がいる。
(お父さんとお母さんいるし…話にくい…)
ため息をつきながらカレンダーを眺める。
(明日行くって言っちゃったけど…どうしよう…。それに次の休みも確定じゃないし…たとえ明日お休みだとしても…やっぱりお花さんには行きにくい…)
まるでふりだしに戻ったようにグダグダしている自分が嫌だ。
何も考えないようにとお布団に潜り込み、目を瞑る。
(次のお休みまで保留だ…携帯も替えて、それから…)
私は頭の中をからっぽにして、静かに眠りについた。