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気がつくと自分のベッドの上だった。
「夢?…夢…だな。とにかく嫌な夢だった…」
ベッドから出て机に向い、慌てて引き出しを開ける。
(1・2・3……)
机の引き出しに押し込んだ、忌々しい『あれ』を数える。
(よし…一箱も減ってねぇな…)
鞄の中身をすべて出し、さかさまにして振ってみる。
(鞄の中にまぎれてもいねぇ…)
「まったく…なんなんだあの夢は…女モノのストール被って留守番させられるわ…総司が出てくるわ…」
うんざりとしながら仕事に行く準備を始めた。
いつもと同じ朝、いつもと同じ昼、そして夕方も、何事もなく過ぎていく。
(総司が何かしでかすかと思ったが…気のせいだな。それに配達に出ているから、今日は静かなもんだ。)
接客を終え一息ついていると、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「歳三さ~ん!」
「よぉ…久しぶりだな」
満面の笑みを浮かべてethlinが走ってきた。
「10日ぶり…か?仕事はまだ忙しいんだろ?」
「はい。でも今日は早く帰れたから…会社を出たら沖田さんが拾ってくれました」
「コロボックルちゃんが来ないと土方さんの機嫌が悪いなぁ~と思って。ちょうど良かったね。お店の近くの配達の帰りだったし」
「沖田さん、ありがとうございます」
「いいよ。おねぇさんはみんなの分のお弁当を作ってくれてるしね。そのお礼。いつもありがとうって伝えてね」
めずらしく意地悪もされず、仲良く来たらしい。
「土方さん、ウエディングの件で打ち合わせの電話ですわ。Mホテルでしてよ」
伊東さんがStaff Roomから顔を出す。
「来たばっかりだが悪いな、仕事だ。少し一人でゆっくり見てろ」
そうethlinに告げてStaff Roomへ急いだ。
「最近ウエディング関係の仕事が多いんだよね。さすがに佐之さん一人で手が回らなくて、土方さんが補佐に回っているんだ」
「歳三さん、忙しいんですね」
「夏が終わったら秋のブライダルシーズンがあるから。最近『昼』に大きな仕事が入って、『夜』の仕事が減ってるかな」
沖田さんは嬉しそうに笑っている。
「なに?ジロジロ見つめて?」
「あっ…ごめんなさい…えっと…沖田さんも誰かと結婚…するんですよね」
「出来るといいけど…僕の想い人は手強いからね。手に入れたと思ったらはぐらかされたり…逃げられたり…かな」
沖田さんは少し寂しそうな笑顔で、遠いところを見つめている。
(沖田さんはきっと…)
「そういえばさぁ~、コロボックルちゃん…土方さんとお付き合い始めたんでしょ?」
「えっ!?あっ!?えっと…なんで!?」
またからかって意地悪を言われると慌てていると、ふわりと優しく笑いかけられた。
「隠さなくていいよ。意地悪を言うつもりじゃないから」
(沖田さん…やっぱり悩んでるんだ…意地悪できないくらい…)
「あっ…あの…」
元気出してくださいと言いたかったが、今の沖田さんに簡単にかけられる言葉ではない気がする。
「打ち合わせ少し時間がかかるみたいだね」
そう言ってStaff Roomのソファーに案内してくれた。
「座って待ってて…ここなら土方さんからも見えるし安心でしょ。あっそうそう…コレほんの少しだけどお菓子あげる」
そう言って棚から小さな菓子箱を取り出してくれた。
「ありがとうございます。わーい♪なんだろ?飴かな?」
箱を振ると軽い音がした。
「僕は今からカフェの手伝いなんだ。ゆっくりしていってね。じゃ…」
少し寂しげな笑顔で部屋を後にする。
(最近の沖田さん見てると、なんだか切なくなるな…でも…私には何にもしてあげられないし…)
ふと沖田さんにもらった飴の箱を眺める。
(沖田さんに飴分けてあげればよかった…ところでなんの飴だろう?レモンとかいちごとかだったらいいなぁ~♪)
ごそごそと包装紙を綺麗にはがしてみた。
電話している最中に、総司がまたくだらない悪戯でもするんじゃないかとヒヤヒヤしたが、どうやら仲良く話しをしたらしい。
Staff Roomのソファーに静かに座っているethlinの姿が見え、ホッとする。
ぼんやりと総司からもらった菓子箱を眺めている。
電話を切り、書類を確認してethlinの元へ急ぐ。
「悪かったな。カフェの方に案内してやればよかったんだが…」
なぜかethlinはテーブルを凝視して微動だもしない。
「どうした?まさかおやつが食い足りなかったのか?」
クスクスと笑いながら声をかけると、なぜかプルプルと振るえ出し、泣きそうな顔を上げる。
「お前ナニ泣いてんだ?総司に親切にされた事がそんなに嬉しかったのか」
ふとethlinが指差す方に目を向ける。
「沖田さんが…お菓子あげるって言ったから…食べようと思って…開けたら…お菓子が…飴が…」
ethlinが指差す先には、あの忌々しい○ン○゛-ムがばら撒かれていた。
「コレ…棄てたいけど…燃えるゴミなのかが…わかんない」
ethlinは泣くのを我慢しているようで、言葉を詰まられながら呟く。
「…総司…あの野郎…
」
今から怒り任せにカフェに乗り込んで行っても、今頃逃げおおせているのだろう。
ため息を一つ吐き出し、ethlinの頭を撫でてやる。
「…『コレ』のゴミの分別は佐之助にでも任せとけ」
泣き出しそうなethlinの手を引いて店内に戻る。
「『あれ』は当分お前には用無しだ。おやつなら帰りにコンビニで好きなだけ買ってやるから…『あれ』の事はとっとと忘れろ」
(まったく…本当に…こいつからは目を離したら、ろくな事が起きねぇ)
「うっ…グス…お菓子が…お菓子が…飴だと思ったのに…グス…飴…食べたかった…」
とうとうしゃくりをあげて泣き出してしまった。
(意外と大人かと思えばやっぱりガキだったり…本当に面白い女だ)
「ほら…顔拭いてやるから…ついでに鼻も噛め」
最初に会った時から、泣いてばかりの小さなBB。
「お前の涙を拭ってやるのは、やっぱり俺の仕事だな。俺から離れるな…お前は泣き虫なんだから。他の野郎の前で泣くなよ」
泣き顔も、泣いた後に小さく笑う笑顔も俺だけのものだから…。