アイスクリームみたいな長いひげをへの字にたくわえたチワワは
神様ケーキを届けるお使いだった。
神様ケーキの
どこから見ても几帳面にととのった仕上がりが
氣に入られて評判は上々。
チワワは神様ケーキの製造過程を観る。
怒号が響き、雷が落ち、焦土はこねくり回され、
タイラントが暴れ狂い、
血みどろの軍隊がおもちゃみたいに生地に練りこまれる。
目を背けたくなる光景を見届けるのもチワワの仕事。
観ているうちにひげがへの字になる。
チワワはお使いが好きだった。
口にケーキの容器をくわえて
風に当たって歩くと、だんだんひげがまっすぐになる。
お使い先では歓迎されて
ひげの手入れをしてくれて
おいしい食事でもてなしてくれて
チワワは幸せな氣持ちになった。
おしまい。