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彼女と、新しい世界を創るために決めたこと①
僕が彼女とつきあいはじめたのは4年ちょっと前だった。
ギター講師として独立する前。
彼女も僕も、人生の転換点にいた。
僕は起業しようとする、
彼女は人生と仕事の新たな方向性を探る、
何か産まれそうでまだ産まれていない、
お互いそんな時期だった。
お互いのメールの一文一文が初々しくて、
これから創っていく関係への期待が高まっていた。
付き合っていくうえで大事にしていたのは、
単に恋愛を楽しむだけじゃなくて、
お互いの仕事がうまくいくように協力することだった。
仕事上の悩みを報告し合い、意見を言い合い、
褒め合ったりけなし合ったり
ほほえましかったり殺伐としたり
ファンシーでふんわりした彼女がいれば
闘争本能むき出しの彼女もいた。
今まで生きていて一番、人のぬくもりを感じたのは
彼女からだった。
話がこじれて彼女から「死ね!」って言われたときは
本当に悲しくて、そう伝えたらしんみりして、
静かに泣いたこともあった。
僕とのやりとりのなかで
何が嫌で何がうれしかったか率直に教えてくれた。
終わりのない千本ノックのようでもあった。
鍛えられた。
険悪になったとき、お互いに黙って、
じっとしていることがあった。
長い沈黙の後で、何を思っていたか話し合うことがあった。
僕は彼女と、ほかのだれよりも長い時間、沈黙を共有した。
彼女は僕に、沈黙という言葉を教えてくれた。
言葉を発せずにただ一緒にいる、
その意味を分かち合うことのできる、たった一人の盟友だった。
彼女が無意識に無邪気に歌うのが好きだった。
素朴で、こどもっぽくて、飾らない。
歌に自信がないという彼女だけど、
そのときは人からどう思われるかなんて気にしてなくて、
ずっと聞いていたい自然音だった。
刺激すると恥ずかしがって歌ってくれなくなるので、
僕は何も言わずに聞いているのが好きだった。
彼女も僕も、肩こりするほうなので、よくお互いに肩もみした。
僕はふざけて本気で、インドの床屋さんの動画を真似して
彼女に憑いてるモノを威勢よくシュッシュと引き抜いた。
それが彼女には爽快だったそうで、
そのたびにヒーラーかサイコセラピストになるように勧められた。
彼女の仕事上の決断について、よく相談された。
僕は話を聞きながらそこに深く潜り、
何か使えそうなものがあるか探る。
手ごたえを感じて拾い出し、
彼女がそれをみてはそれ!とか
ちがう!とか言う。
そんなやりとりをしているうちに
彼女は進む道を確認して、自信をもって決断し、
結果成功したことが何度もあった。
彼女が引き出してくれた僕の才能は
「秘密屋」「気まぐれや」として結実し、
今では月に数回の依頼がくるメニューとして定着している。
③に続く。