いて「なに食べたい?」
彼女「なんでもいいよ」
僕は思う。
本当になんでもいいのか!?
と。
作ったあとで、やっぱりちがうのがいいとか言われたら…
もう立ち上がれないくらい僕はもろい。
なんとなく彼女の好みは把握しているので、
それっぽい材料を入れる。
彼女は僕の栄養状態を気にしてくれているので
野菜・肉・穀物とバランスよく入れる。
作ってみて、麺やごはんがやわすぎたり固かったり味が濃すぎたりすることがある。
彼女の偉大さは、そんな出来不出来を包括する器の大きさである。
いて「ごめん、ゆですぎた…」
いて「ごめん、塩いれすぎた…」
「たしかに、ちょっとやわいけど、おいしいよ」
「たしかに、ちょっとしょっぱいけど、おいしいよ」
気を使ってるというより、ほんとうにおいしそうなのだ。
ばくばくたべて、おかわりだってするし、おなかいっぱいになったらなったと遠慮なく言う。
おかげで前から、今も、僕は彼女に料理を作るのがとても楽しみだ。
次は何を作ってやろうかと考えて、
日持ちする素材・調味料は日ごろからスーパーで狙いをつけてストックしておく。
麺のゆで加減がカンでわかるようになってきたし、
塩加減はあとで調整がきくように控えめにするようになった。
彼女は、教えない料理の先生だ。
彼女が喜んで食べるだけで、僕の料理意欲はぐんぐん上昇している。