第十回の感想 | 川瀬有希の独り言

川瀬有希の独り言

田中好子さん、キャンディーズ、岡田有希子さんに捧げるブログ

『響け!ユーフォニアム3』第十回「つたえるアルペジオ」について、改めて。





関西大会に向けてより集中し取り組んでいなければならないこの段階に於いても部の雰囲気は合宿以降の険悪さを引き摺ったまま。


オーディションの形式や結果に対する不満は消えず、合奏練習前ミーティングという貴重な時間ですら各部員からクレー厶が相次ぐ始末。


幹部の説明も説得力を欠き収拾がつかず、挙げ句ドラメの麗奈と副部長の秀一の間で激しい口論も起こる。


その後河川敷で久美子と麗奈が話し合うも平行線を辿るのみで、万事休すといった状態。



事ここに至って久美子は遂にあの切り札を取り出し、田中あすかの住むマンションへと向かう。


昨年の関西大会前にOGである彼女からおくられた通称魔法のチケット。


どうしようもない困難に陥った時に一度きり有効と渡されたひまわり畑の絵葉書を手に訪れると、そこには同じくOGである中世古香織の姿が。


2人でルームシェアしているという。


香織曰く、麗奈と喧嘩したらやって来るとあすかは予想してたそうで、その通りになったものだから久美子も思わず苦笑するしかなかった。




そこにあすかが帰宅。


久美子から詳しい事情を聞く。


ここであすかの単刀直入な物言いが久美子の心に突き刺さる。



「偉そうなこと言ってるけどさ、結局黄前ちゃんのわがままなんだよ」


「それって全部、黄前ちゃんがスッキリしたいからでしょ」


「みんな、答え出してから行動しているとは限らないのよ・・・迷ってるんじゃない、滝さんも、その子(真由)も」


「黄前ちゃんのいいところは無責任に言いたいことを好き勝手に言っちゃうところでしょ。私の時みたいに」


「ギリギリにならないと動かないのはいつものことでしょ」


そのひとつひとつが久美子の心に響いた。


余計ないざこざが起こらないよう常に本心を抑えて当たり障りのない言動を続けてきたが、久美子は全てをさらけ出す決意をする。


みんなの気持ちも理解していたし、自分も正直不満を抱えていたものの、事を穏便に済ませたいが為に正面から向き合うことを避けてきたが、漸く本音を隠すことなく体当たりで望む覚悟が出来たのだ。


先ずは幹部ノートにその心境を綴り、幹部間の意思統一を確認。


そして関西大会本番直前、全部員を前にした嘘偽りない演説へと辿り着いた。


その言葉に部員は心を打たれ北宇治吹部の完全復活が成立、最高のテンションでコンクール本番へと向かった・・・。





ざっとこんな感じで第十話は進行したが、全体を通して重い、しかし解決に向けて歩みを進める久美子の心象風景を物語全体に反映させたクオリティーの高い放送回であった。


エンディングで今大会の象徴とも言える真由と麗奈のソリが数秒程度流れるかなとも予想してたが、今回の演奏シーンは本番前の第一楽章最終チェックのみ。


よって『一年の詩』フル演奏は最後の最後にここぞという感じで映されることが確定。


本当に楽しみ。



さて今回の目玉、あすか先輩登場の場面は原作より簡潔な演出が施され、久美子の決断をくっきりと浮かび上がらせるストレートな表現形態にまとめられていた。


小説だと滝先生に対するあすかのなかなか辛辣な人物評なども記されているがそれらも全部削られ、焦点を悩み解決の糸口に絞り込んだいい意味での簡略化が採用されたおかげで話にグッと入り込みやすくなっていた。


小説を彩る饒舌さがアニメの場合過剰に映ることがままあるので、このアプローチは上手くいったのではないかと思われる。


久美子も入学からの2年ちょっとで随分成長したが、性格の根源的なところは一朝一夕では変わらない。


部の危機という肝心な場面でなあなあにしてしまう悪い部分が顔を出していた。


それを一気に払拭させたあすか先輩は流石であり、久美子にとってはやはり大切な存在であることが認識される。






また、場合によっては冷酷に映るかも知れぬそのシーンで決してそうはならなかったのは、あすかの的確な指摘もあると同時に香織先輩がそばにいた点も欠かせない。


場が凍りつかず終始和んだ空気が消えなかったのは香織先輩の存在感が癒やしを運んでくれていたからだ(何年経ってもマジ天使!)。





このエピソードが前倒しされたおかげで、原作に照らすと残すは実質100頁余りとなった(話数が限られるのでメインストーリー以外のエピソードは多分省略されるだろう)。


これまで一話辺り80頁前後が割かれていたが、残り三話でこのページ数ならかなり丁寧にラストまで描かれるものと期待される。


やや駆け足でここまで進んできたものの、シリーズ最終章の終盤をより奥深く描く上でそれはプラスに働いたようだ。


とりわけ真由と久美子の関係は何とかハッピーエンドなかたちで決着をつけてもらいたい。


アニメだけ観てるとどうも真由の性格や振る舞いが過剰に脚色されてる気がして、小説を読んでる際はそこまで酷いイメージはなかったから修正してもらいたい気分に度々なってしまう。


そもそも作者の武田綾乃さんはユーフォの物語に悪意を持った人物はいないと随分前のインタビューでこたえていたし。


と言っても今更手は加えられないから、どうかいい感じで着地してくれたらと願うばかりだ。





ところで、昨日本屋さんに雑誌を買いに行った際、目的のものを手にした後店内をフラフラ歩いていたらある1冊に目が止まった。


それは『月刊Newtype(ニュータイプ)』7月号。


名前だけは昔から知ってるものの、基本的にアニメに興味のない年月を長く過ごしてきたので今日まで全く縁の無かった月刊誌だが、それに目が止まった理由は単純明快、表紙が久美子と麗奈、要するにユーフォの特集が組まれていたからだ。


速攻で購入。


でかいポスターも封入されていた。


内容は第十回終了時点を念頭においたインタビューで構成されており(よってその先のネタバレ無しなので原作未読な方も安心)、正に今読むのにぴったりです。