『響け!ユーフォニアム3』第九回「ちぐはぐチューニング」について、改めて。
関西大会に向けてのオーディションの結果発表がなされた後、部内に重苦しい空気が広がり、それは合宿後にも尾を引くことに。
最大の原因は選考における滝先生の判断基準の不明瞭さ。
1年生の頃からコンクールメンバーである奏を外してまでチューバを4人体制に変えたこと、実力に差がない中で何故久美子部長から真由にソリを変更したのか等々。
具体的な説明がない以上、完全実力主義を謳いながらそれ以外の要素を選考に採り入れてたのではないかと疑われても仕方がない。
全体の完成度を上げる為にバランスをとっていくことは重々承知していても、人間は総体的な理屈だけでは納得しない。
府大会ではAメンバーだったのに関西ではB落ちとなった者からすれば、明確に個別の理由を示してもらわないとモチベーションの維持も難しくなる。
感情的なしこりも残るだろうし、本人だけでなく当人と仲の良い部員にも不満が生じかねない。
技術を極める練習だけで演奏の質は高まるわけではないのだ。
このままでは北宇治吹部は空中分解の恐れもある。
ここで部をまとめる幹部3人の役割が重要となるが、こちらも三者三様の思考がぶつかり意思統一には程遠い状態。
今回のオーディション結果に副部長の秀一は納得していない。
結果を受け入れていると久美子に言われてとりあえず承諾するも、後日パーリー会議での席上並びに会議後、滝先生の方針を絶対視する麗奈の発言に対しあからさまに反発、不満を募らせる。
部長はどうなんだと問われ「麗奈の言う通りだと思う」と事を荒立てないよういつもの調子で久美子は口にするも、それが建て前であることを麗奈は既に見抜いている。
その場は何とかおさまったが、下校時、遂に対立は激化。
自分の努力不足を棚に上げ選考結果に不満を洩らす者を麗奈は決して認めない。
顧問である滝先生の方針に従う姿勢も断じて崩さず、皆にもそれを求める彼女に、そうは思わないと久美子は本心を明かす。
どんな時も歩調を合わせてきた2人の仲が決裂、以降一緒に登校することも話をすることもなくなる可能性が生じるも、そうなると分かっていても今回に限り久美子は妥協しなかった。
何故なら先生の判断基準に昨年までと違いブレがあるように彼女自身も薄々感じていたからだ。
真意を確かめない限り、今後部を引っ張っていくことは出来ない。
最早綺麗事のみでやっていけるような段階にないことは彼女が一番よく理解している。
ここからの部長としての動きに、北宇治吹部の未来がかかっている。
それにしても麗奈の「部長失格」はきついひと言だ・・・。
その他、幹部以外の個々人の意見を見てもなかなか興味深い。
これまでずっとBメンバーで3年生になって漸くAメンバー入りを果たした葉月やつばめは滝先生を支持。
学年や役職にとらわれず純粋に実力で評価されているのだと判断し、この度の選考に好意的。
対して、麗奈同様屈指の実力派である緑は真由をソリに選んだことに疑問を投げかける。
実力が同等なら部の調和を保つ為にも部長の久美子を選んだ方が適切ではなかったか、と。
要するに先生の判断基準に揺らぎがあるのではないかと推測している。
完全実力主義が貫かれているなら本来優れた奏者である者こそが今回の結果を肯定する筈が、逆に実力で劣る部員の方が感情に流されずにそのまま受け止めている。
絶対的に顧問支持の麗奈はどんな結果を示されようとついていく覚悟であり、全国金を目指すならこれくらいの緊張感は必要との主張も正論そのもので決して間違ってはいないが、そこに他者にはない滝先生への恋愛感情が介在するが為に話が複雑になる。
方針への共感がその心情故の盲信ではないかと捉えられたら、論理でなく感情的な反発となってしまいかねない。
先生への信頼を損なう意見を糾弾するも果たしてそこに私情が入ってないか、仮にそう問われたら、麗奈とて冷静な回答は出来ないだろう。
そして、真由。
状況は彼女が危惧していた通りになった。
だからこそ何度も辞退を提案してきたのだが、実力主義貫徹の為に受け入れられず、さりとてオーディションの結果に久美子は明らかにショックを受け、接する態度はぎこちないしで身動きとれない立場に追い込まれる(久美子からすれば、あんなに繰り返されたらイライラする気持ちは分かるが)。
他の部員も選考結果に不満を抱いている中、無心で練習をし続けるのは酷というもの。
釜屋つばめだけが直接的に励ましてくれたのが唯一の救い。
緑も真由が困るのではと心配してくれてはいるが、何か動いてくれるわけではない。
真由もまた久美子とは違った意味で心の整理をしなければならない。
全面的ではないにしろ、次回の放送で部の今後を左右する現在の状況がどこまで改善されるのか。
この問題の難しさは誰も間違ったことを言ってはいない点にある。
それぞれの視点において正しい考えがぶつかった時、どう折り合いをつけるか、それにかかっている(いつかの騒動の時と同じだ)。
関西大会まであと僅か。
こんな内情の吹部が果たしてどこまでやれるだろう。