第六回の感想 | 川瀬有希の独り言

川瀬有希の独り言

田中好子さん、キャンディーズ、岡田有希子さんに捧げるブログ

『響け!ユーフォニアム3』第六回「ゆらぎのディゾナンス」について、改めて。


部長としての久美子と奏者としての久美子の思いが微妙に交錯する今回は、これまでになく観ててハラハラする展開に。





まず、黒江真由に関して。


真由の配慮に久美子が困惑する様子が描かれていたが、それは久美子の主人公的視点から見てるからそう映るのであって、これが真由側からだったらどうだろう。


転校してきて途中から吹部に加入した立場からすると、仮にオーディションで誰かを蹴落とし自分がAメンバーの座をもぎ取った場合、同部で長くやってきた本人に対し申し訳ないと思うのは勿論、他の部員にどう思われるか、それを考えると必要以上に神経質にならざるを得ない。


自分より長期間共に過ごしてきた部員には自然と連帯意識がある筈で、その仲間がメンバー落ちしようものなら多かれ少なかれ自分に対し冷たい視線が向けられるのではないか、演奏していく中で溝ができるのではないか、と心配してしまうのは当然のこと。


合奏を心から楽しみたいと願う真由にとってそんな状況は何としても避けたく、加えてクラスメイトでもあり仲良くなりたい久美子は自分と同じユーフォ奏者。


これが違うパートならそこまで悩み、拗れることもなかっただろう。


北宇治は完全実力主義に基づく選考と久美子は正論で以って説得に努めるが、そう言う久美子にも譲れない願望が存在するからこそ事態は一層複雑な様相を呈する。


コンクール自由曲にはユーフォとペットのソリパートがあり、それを麗奈と全国の舞台で吹きたいとの思いを久美子は胸に秘めている。


強豪清良女子出身の真由の実力は折り紙つきで、真っ当に勝負したら彼女にソリパートを奪われるかもしれない・・・それを久美子は恐れる余り、正々堂々オーディションを受けて欲しいと言いつつどうにも警戒してしまうのだ。


この相反する感情に今のところ上手く答えが見出だせない為、例えばあすか先輩から譲り受けた曲の詳細をたずねられてもはっきり語ろうとしないなど、やんわりとだが壁を築く態度に現れる始末。



真由も何となくその拒絶的な雰囲気に気付いているのではないか、だからこそ余計に辞退を申し入れる気持ちを捨て切れずにいるとも捉えられる。


「(オーディションで)私が選ばれて嬉しい人なんて本当にいるのかな・・・」との疑問に「いるよ!」と主張する久美子に対し間髪おかず


「誰?」


と口にしたシーンには思わずドキッとしたが、あれこそが嘘偽りない本音だろう。


果たしてこの一件に決着はつくのか。


府大会に関しては両者共選ばれ、ソリは久美子と決まったことで取り敢えず丸くおさまったが、勝ち進んだ場合またオーディションが開かれるので今回と同じ問題が発生するのは必至。


ましてソリ担当が逆になろうものなら、事態はより深刻になりかねない。





それにしても真由は何となく可哀相な気が。


修学旅行の写真、撮るばかりで自分が写っているのはひとつも無い辺りに象徴されるように、まだ北宇治の輪の中に表面的にはともかく本質的な意味で馴染めていない様子が窺える。


いくら撮るのは好きで撮られるのは苦手とはいえ、普通は誰かが代わりに1枚ぐらい撮ってあげようと動くもの。


そういう声もかけられない、或いは気付かれてもいない立ち位置にいるわけで、親の転勤さえなければ清良で充実の高校3年間を送っていたであろうに、深く同情する。


ただのアニメ作品とみた場合、空気の読めない子のように映るが、現実と照らし合わせると意外と疎外感は根深いように思える。



さて、そんな悩める日の学校帰り、中学時代の同級生で友人の佐々木梓とばったり会い、例のベンチで暫し談笑。


サンフェスであれだけ描かれたから、尺を考えると梓はもう出番がないかなと思ってたからこれは嬉しい誤算。


一期・二期の頃は憧れの立華高校に入れたことで嬉しさに満ち溢れていた彼女の話し方・振る舞いが、今では堂々としている(この辺り、声優の人の声音というか演じ分けが上手い)。


自信もついたのだろう、立華で鍛えられる中で身についた逞しさが滲み出ていた。


ここで久美子のもうひとつの大きな悩み・進路について語り合う。


去り際の「音楽に関わっていない久美子を想像出来ない」という梓の言葉が本人にどう響くか。



話を元に戻すと、もうひとつオーディションで巻き起こったのがチューバ・パートの波乱。


5年経験の先輩さつきが落選、成長著しいも始めて間もないすずめが選ばれたことが少なくない波紋を呼ぶ。



この選考に関し親友の美玲は久美子部長に異議を唱える。


最終的に引っ込めるもその話し合いの中で、滝先生に対し後輩は3年生ほど神格化していないと口にする。


即ち今回の決定も含め、1・2年生は滝先生の判断を無条件に受け入れる立場にないことを表明したのだ。



これまでの経緯から、全国金賞を目指す北宇治における滝先生の指導は絶対と信じて疑わない3年生にとってはなかなかにショックな発言で、しかし一人職員室に向かった際この件に関し質問したということは、このたびのチューバの選考に久美子も何となく疑問を抱いたということ。


かつての彼女にはなかったことだ。


滝先生のもとで目標に向かう以上、信じるのが当たり前でそれを少しでも疑うことは果たしてありなのか。


コンクールで高評価を得る為に必要なもの、その要件とは何か(この場合上手さより音量)、そこから考えて今回の決定に至ったことが説明されたが、その結論ではなく考え方を、久美子はそっくりそのまま受け入れるだろうか。


勝つ為に必要な条件、その優先順位とは。


誰よりも指導者の方針を具体的に伝えるのが部長の役割でもあり、そこに疑義を挟むことで今後上手く運営していけるか否か注目される。



府大会直前の控室の場面で第六回は締め括られたが、何となく次週そのコンクールの模様は描かれないような気がする。


あくまで何となくだけど。


最後の舞台での完全フル演奏描写を願っているので、それさえ叶えられるなら仮に府大会の演奏がカットされてもそれほど不満はないが、そうじゃない人の方が当然多いだろう。


そりゃあ演奏シーンは観たいが(ユーフォという作品の醍醐味だし)、中途半端に描かれる方が自分的にはストレスが溜まるのでフルでなければなくてもいいかなと。


何せ久美子ら3年生にとって最後の大会、集大成だ。


それに相応しい、より完成度の高い演奏シーンだけを観たい。



原作ではこの府大会終了までが前編なので、今回でほぼ最終楽章編前半をオンエアしたことになる。


求エピソードは既に完結してるので後編のその部分を除くと、あと七回で十分ラストまでカバー出来るだろう。


当初は1クールという枠に関し時間的に不安視もしたが、今のペースなら大丈夫そうだ。


それでも次回、あのエピソードはカットされるんだろうなぁ・・・。