ここのところ嫌な報道ばかりだ。

 

赤の他人であるわたしでさえ苦い気持ちになる出来事なのだから

 

当のご本人たちの憂鬱はいかばかりかとお察しする。

 

癇の強い政治家もいれば

 

性欲の強い政治家もいる。

 

本性を暴かれた彼ら彼女らの釈明に興味はないけど

 

あの「由貴さんを守りたかった」という男性医師に関しては

 

「未成熟な男の子特有の青臭いナルシズム」も伝わってきて

 

これは特に不愉快であった。

 

「彼女を守りたかった」……って


守るどころかアンタが彼女を破滅に導いた張本人なんじゃん?とはおそらく国民全員が思ったことであろう。

 

だいたいね

 

本当に彼女を守る気があるならあのパンツかぶりの写真が出ても

 

「あれは僕のパンツです。自分のパンツを頭にかぶっちゃいけないんですか?女装の趣味があっちゃいけないんですか!?」と逆にくってかかっておけば良かった。それなら世間の好奇の目は不倫行為の疑いから彼の変態趣味の論議に移り、これは結果的に自らの身を呈して彼女を守ることに繋がったのではあるまいか。

 

あのキス写真も

 

「あれは急に心肺停止した彼女に人工呼吸を施していたのです。僕は医者ですのでね」と微笑んでいたなら

 

「さすが医者だ!どんな時も患者の命を守り抜く聖職だ!」と

 

国民は感動にうちふるえ

 

「こんな人に私はなりたい」と医者の志願者が激増し

 

我が国の医者不足の現状を打破できたに違いないのである。

 

もし彼がここまでシラを切り通したなら

 

これは彼女を守ろうとする気持ちは本物であると評価できた。

 

つーか

 

そこまで真顔で言えたならわたしは一転、この医者の大ファンになっていた。

 

ただここで警戒せねばならないのは

 

居直れば居直るほどそれを上回るスッゴイ写真が次々と出てくる危険性があるということであって

 

もしそうなったならそれはもう

 

「医者としての治療の一環」という大義名分は通らないと観念するしかない。

 

でも

 

その時はご相談くださればわたしがなんとでも言い逃れをご提示して差し上げましたのにィ。

 

 まぁ

 

本来一番守るべきであったご家族の精神状態がどうなるかとか

 

ご本人の今後の社会的地位に関しては

 

わたしは責任負わないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

安室ちゃんが引退発表をなさいましたね。

 

彼女がデビューしたのはわずか14歳の時だったのね。

 

初めてその姿を見た時、美人とか可愛いとかじゃなくって

 

なんてチャーミングな子なんだろう!  って思ったのをはっきりと覚えています。まだテレビ慣れしていない、ちょっとはにかんだ笑顔が印象的でした。

 

あの時スーパーモンキースとして紹介されていたけど

 

明らかに彼女は他のメンバーを凌駕して、まさに別格のオーラがあった。

 

ソロとしての初ライブの記事も興味深く読んだなァ。「ひたむきで素晴らしいパフォーマンス」と絶賛されていたっけ。

 

それからの活躍はもう改めてここで申し上げることもないほど全国民にその実力は知れ渡っているけど

 

どんなに高く評価されても彼女が世間に媚びることはなかったしSNSでフォトジェニックな自慢もしてこなかった。

 

筋を通してよく頑張ってきたなあ…と

 

我が娘のような感慨を抱いています。

 

でも

 

聞けば来年で40歳におなりになるとのこと。

 

40歳??

 

40歳??

 

幼いころから見てきた彼女がもうそんな年齢だったとは…。自分も年を取るわけだ。

 

デビューしてからの彼女には

 

そのパフォーマンスにも圧倒され続けたし

 

19歳で結婚&妊娠を発表した時も度肝を抜かれた。

 

今回の引退発表もまさに青天のへきれきだ。

 

いつでも彼女の行動は突然だけど、よくよく考えた上での、誰にも流されない強い意志に基づいているように思います。

 

ニコニコ元気印のアイドルが多いテレビで彼女だけは

 

笑っていてもなぜか寂しげな印象があって

 

常になにかに耐えているみたいで

 

この子はお腹を抱えて笑うことがあるんだろうかとか

 

もしかしてものすごい不幸を背負っているんじゃないかとか

 

なんだか放っておけない感じもあった。

 

でも噂によると、今は新たなパートナーもそばにおられるということですから

 

 

 

 

幸せになってほしい―――――

 

 

 

 

今はただただ

 

 

 

そう祈っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座に「CHERRY」というバーがある。

並木通りからは3ブロックほど離れたフレンチレストランの2階にひっそりとたたずむ。30年も前から営業しているこの店は、限られた常連が隠れ家のように大事に通う秘密の名店である。

店内は薄暗く照明が落とされている代わりに、カウンターに置かれたいくつかの小さなステンドランプがけなげな明るさを灯している。

 

普段から秀希はこの店でモヒートを注文する。ラムベースのカクテルにたっぷりのミント。仕事を終えた疲れた体と乾いた喉に気持ち良く沁みこむ、その冷たい感覚が好きだった。

彼が二本目のメンソールに火を点したとき

「お待たせしてすみません」

保志の声がした。

「お疲れさま。呼び出して悪いね」

「いえ、僕も秀希さんとゆっくりお話ししたいと思っていたんです。…あ、僕はギムレットを」保志はバーテンダーに声をかけながら秀希の隣に腰をかけた。

「今日、ついに来ちゃったね」静かに煙を吐き出しながら秀希がのんびりと口を開いた。

「ド派手なオーラでしたね。さすが女優です」保志も苦笑いする。

「聖也には厳しく注意したんですが、逆効果でした。わざわざ二人の仲を見せつけに来たようなものでしたから。シャンプーの時も周囲が見ていられなかったほどで…。僕の指導が行き届かず申し訳ありません」

「別に良いんだよ。でも、直前のお客さんはもう何年も聖也に入れ込んでいた方だったからね。彼女が現れた途端、あそこまで露骨に聖也の態度が変わったとなったらお得意さまならなおさら不機嫌になるだろうな」秀希の声は穏やかなままである。

「…帰り際に『もう二度と来ない』とおっしゃいました…」押し殺した声で保志はうなだれた。

「困ったね…。そもそも南沢さんから予約が来たらお断りをするはずじゃなかったの?」

「予約受付担当の鬼河原翔平には言っておいたんですが」

「なぜ受けちゃったんだろう」

「ナマの南沢ルミをどうしても見たかったそうです。どうも前から聖也にさんざんノロケを聞かされていたようで」

「このままじゃまずいね」言葉とはうらはらに秀希は静かに微笑んでいる。

「秀希さん、これと決めたらわき目もふらず没頭してしまうのは聖也の欠点でもあり良さでもあるんです。そうでなかったらあいつはこの業界でここまでやってこれませんでした。」

「彼の素質を最初に見抜いたのは保志くんだったもんね」

「だから責任は僕にもあります。僕がなんとかします」

「いや」吸殻を灰皿に押し潰しながら初めて秀希が怖ろしい顔になった。

「聖也くんにはすぐに店を辞めてもらう。」

 


                                    つづく

 

 

金曜日の昼下がり。銀座――――。

その日も「CIEL」は賑わっていた。

 

聖也は窓際の席で無言のまま客の髪を乾かしていた。

先日保志に詫びを入れた記憶はもちろん残っている。あの時「今後は気を付けます」とは言ったものの、今彼が触れたいものはルミであって目の前の地味な主婦の髪などではない。ため息をつく聖也の顔を客は鏡でちらりと、しかし確実に視野に捉えていた。

 

もう一人、そんな聖也の姿を鏡越しに見ていた客がいた。

母の静江だった。

静江は鏡に映る秀希に低い声で呟いた。

「聖也がご迷惑をおかけしているんじゃありませんか…」

秀希はハサミの手を止めず口元にかすかな笑みを浮かべた。

「どうしてですか」

「なんだか最近の聖也はなんというか…心ここにあらず、なんです。もう彼もいい年ですから家を空けるのは別に良いんですが…昔からあの子がああいう感じになるのはきまって恋愛に夢中になっている時ですの。このお店にお世話になって以来、人が変わったみたいに仕事に打ち込んでいましたから私も安心していたんですけど」

「昔に逆戻りしてしまったんじゃないかと?」

「逆戻りならまだ良いんですが、今度はそうじゃないんですよ。言葉遣いもなんだかやさぐれた感じで。こんなことを秀希さんに言うのもあれなんですけど、仕事なんかどうでも良いってことを言うこともあるんです。家にいても仕事のことは何も考えていないのがよくわかります。前からあの子は影響を受けやすい子でしたから…。どんなお嬢さんとお付き合いしてるのかしら。秀希さんご存じない?」

秀希は黙ったままハサミを動かしている。

「母親って不思議なものでね。長男の結婚相手にはどこに出しても恥ずかしくないお嬢さんを求めるものなんですの。実際、長男は家柄も学歴も申し分のないお行儀良い人と結婚しましたから私は満足していますのよ。それが末っ子の聖也に関しては私も甘いですから、彼が選んだ相手ならどんな人でも良いって寛大にな気持ちでいましたの」

「でも、今回はどうも嫌な気がする。あの子の仕事への意欲は確実に削がれてきている。この前も『やるだけやったらあとは他人の評価がどう出るか、そこは俺の知ったこっちゃない』ですって。確かにそうなのかもしれませんけど…。そんなこと今まで一度も言ったことがなかったものですから。第一、それは客商売の人間の言う言葉じゃないと思うんですよ」

「そうかもしれません」

「そうだ私、保志さんの彼女と親しいんですのよ」

「保志の、ですか?」秀希が初めてその手を止め鏡の静江をのぞき込んだ。静江は楽しそうにふふ、と笑って

「書道教室で偶然知り合ったんですけどね。時々うちにお茶にお招きしているお嬢さんなのよ。親しくお話しするうちに美容師さんと長くお付き合いなさってるっていうからお尋ねしたらお相手は『CIEL』の保志さんだって言うじゃありませんか。私もう驚いてしまって」

秀希も楽しそうな笑い声を上げた。

「彼はプライベートなことは話しませんからまったく知らなかったですね」

「そうでしょう。最初はここのお客さんだったそうよ。でも交際が始まってからはもうお店には行かないって決めたんですって。『美容師の保志はお客様のものですから、私が出ていっては彼の仕事の迷惑になります』って…。感心な方よね」

秀希は思わず保志を振り返った。

奥の席で保志は客の長い髪にロットを巻き付けているところだった。

「風呂のあとはちゃんと毛先にクリームつけるんやぞ。面倒くさがるなよ?彼氏がベッドで早う早う言うてもガッツくなよ。夜は長いねんから」

20代の女性はキャハハと大きな笑い声を立てている。

「保志はそんな人と付き合ってるんですか…」

 

その時、店内のざわめきが一転シーンと静まり返った。

秀希が振り返ると、注目の先には目の覚めるような美女が立っていた。背中までたっぷりと流れるストレートなブラウンの髪。肩も腰も驚くほどほっそりとしている。帽子とサングラスをゆっくりと外したその女はまぎれもない、女優の南沢ルミであった。