壁の時計は9時を指していた。

保志は客用の椅子にどさりと腰を下ろして椅子ごとくるりと聖也に体を向けた。ロココ調の驕奢な鏡が保志の後ろ姿と聖也の困惑した顔を映し出していた。

おまえも座れ、と促され聖也は隣の椅子に静かに腰かけた。

保志は背もたれに体を預け足を組む。

「聖也。お客さんはお前に髪やってもらうために遠くからやってきてくれてはる。それも安くない値段で」

「それはなんでやと思う?お前との時間を楽しみたいからやぞ。もちろんお前の技術とな。美容師は職人でもありサービス業でもあるからや。どちらか片方だけでは成り立たんやっかいな商売やねん。髪切るだけでも愛想ようするだけでもあかん。どっちも最高のものを提供してこその『CIEL』や。『石坂聖也』や。今のおまえはその両方の名を汚そうとしてるのがわかるか」

「お前が遊ぶのはかまわん。せやけどこないに仕事で腑抜けになってまうんなら俺は黙ってはおれん。その遊びがお前をいつか滅ぼして」

「遊びじゃありません」聖也が遮って口を開いた。

「彼女は俺を変えてくれたんです。俺は今まで人の評価ばかりを気にしていたんです。それを」

「人の目なんか気にすんな、て言われたんか」今度は保志が聖也を遮った。

「そうです…」

「それからこうも言うたやろ。『客と私とどっちが大切なの』」

「言いました…」

「『明日はどうしても会いたいから仕事はさっさと終わらせて部屋に来てよ』」

「はい…」

「『客の目を気にして自分を殺して、それがアーティストって言えるの』」

俯いたまま聖也はもう返事をしなかった。

 

沈黙が流れた。

 

「保志さん」静寂を破ったのは聖也だった。

「保志さんのおっしゃることはわかりました。俺も浮かれていたことは認めます。でも彼女は可愛いんですよ。テレビではあんな気の強そうなイメージなのに、俺の前でだけは本当に猫のように甘えてきて…」

「誰がノロけろ言うたんや」思わず保志は笑い声を上げた。苦々しい笑いだった。

「俺はな、付き合うことをとやかく言うてるんと違うぞ。お前は今、自分の仕事を見失ってる、て言うてんねん。客が不満を抱く変化を起こす恋愛はお前の首を絞めることになる。それだけやねん」

「おまえは頑張ってきたんやろ?ここまで来るのに今までどんな苦労をしてきたんや。それを支えるどころかあの女優は」

「やめてくださいッ!」聖也は立ち上がった。

「とにかく今後は気を付けます。今まで以上の成果を出して、それを認めさせる。それでいいんでしょう。俺はこれで失礼します。お疲れさまでした」

聖也の乱暴な足音は遠ざかり、ドアが閉まる音と同時に聞こえなくなった。

 

一人残された保志は再びくるりと椅子を回転させ鏡に向き合った。

前に居る自分の顔は不思議なほど落ち着いている。

しばらく腕組みをして考え込んだ後、肘かけを両手でボン!と叩いた勢いで立ち上がると

「俺も帰るか!」保志は精いっぱいの伸びをした。

店の灯が完全に消えたのはそれからすぐ。夜の11時だった。

 

 

                        つづく

 

「聖也。ちょっとこい」

その日最後の客を見送り店のドアを施錠した途端、保志がぶっきらぼうな声を出した。

彼がここまで乱暴に人を呼びつけたことはかつてない。

不穏な空気を感じ取った二人の見習いは突然用事を思い出したようにあわてて店の奥に引っ込んでしまった。その背中を不思議そうに見たあと聖也は改めて保志に向き直った。

 

保志の目は冷たい光を放っていた。

「おまえ最近たるんどるんちゃうか」

突き刺すような声に聖也はハッとなる。

「…何かありましたか…」

「何かやない。最近のおまえはどうかしてる。ハサミ持っとる間もぼーっとして。さっきのお客さんのカット、あれはなんやねん。おまえはもう何年美容師やってんねん。注文通りにセットされんかったってクレームも一つや二つやない。手抜きされたって怒ってはるお客さんもおるねんぞ」

聖也は言葉もなくうなだれている。

保志の目が再び厳しく光った。

「あの女優か」

聖也が急にそわそわと落ち着かぬ様子になったのを見て

「やっぱりそうなんやな」

保志は腕組みをしたまま聖也の顔をじろりと見上げた。

「感じの悪い女やなかったんか」

「いや…それは初対面の時の話で…あのCMのヘアメイクが好評だったんで…二度目の仕事で会ったときは…」

「一転して気に入られて仲良くしてもらえた、ゆうことか」

聖也は黙りこくってしまった。

「もう付きおうてるんか」

低く静かな声に聖也は無言でうなずいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

課内にメールが回ってきた。

 

「今年の夏の思い出の画像をコメントと共に提出してください」とのこと。

 

課内新聞を作成して皆で楽しむんだってさ。

 

盆明けの職場には様々なお土産のお菓子が持ち込まれていて

 

伊勢のいといんせんべい

 

沖縄の雪塩ちんすこう

 

静岡のこっこ

 

伊豆のみかんクッキー

 

福岡の通りもん

 

果てはイタリアのなんとかっていうクッキー(イタリア語が読めなかった)

 

ベルギーのなんとかっていうチョコ(もはや何語かもわからない)

 

全部いっぺんに平らげた。まあそれは良いんだけど。

 

つまりこれはどういうことかと言うと

 

上記の旅行を楽しんだ人々にとってはいとも容易にこの夏の思い出を語ることはできると思う。

 

ってか語りたいだろうと思う。わたしだったら自慢したくてしたくてウズウズする。

 

でも

 

わたし

 

この夏はどこへも出かけなかった。思い出なんて一つもない(キリッ

 

だからこの夏撮った画像フォルダーを開いても

 

猫が土下座しながら爆睡する姿と

image

しかしよくもこんな器用な格好で寝られるな…

 

あとは例の宮崎マンゴーくらいだ。

 

しかれども

 

ここで猫の写真を載せるほどわたしは猫煩悩ではなく

 

宮崎マンゴーは所詮もらい物である。

 

考えた末

 

image

この画像にしようと思い立った。

 

こればっかり聴いてたっていうのも夏の思い出としてアリでしょう?

 

と隣のデスクのカナコ姐さんに言うと

 

「それはやめたほうが良いんじゃないですか」とのこと。

 

「なんかえり湖さんの落ち着きの無さを宣伝しているようですし」

 

「もう少し落ち着いたCDはないのですか」

 

「ここの職員は皆さん落ち着いた方々ばかりですしね」

 

って……。

 

 

 

わたし

 

 

 

そんなふうに思われてるのかあ。。。(´・ω・`)ショボーン

 

 

 

 

 

 

前回の記事でわたしは

 

高額の酵素のおかげでやれ体温が上がっただの

 

便秘が改善されただの

 

元気百倍がどうのこうのと

 

夢中になってプレゼンをしてしまった。まったくの無報酬なのに。

 

ここでお断りをしておきますがわたしが称賛していたあれは

 

けっこう純度の高い製品であって(だって傑山がそう言ってたモン!)

 

ネットでよく売られている酵素ドリンクやカプセル酵素ではないの。

 

だってお高いんですのよぉ?

 

半額にしてもらってもなおわたしはマジで躊躇した。

 

そりゃあもちろんわけもなく払える方もおられるだろうし

 

現に、過呼吸になりそうだったわたしの隣で、顔色ひとつ変えず福沢諭吉ユニットをさくっと取り出す人もいた。

 

でもこのブログをお読みの方々は

 

裕福つってもたかが知れてるだろうし(←大失礼)

 

第一、以前のわたしほど不定愁訴に悩んでおられるわけでもないでしょうから

 

酵素なら何でも解決してくれる。だってえり湖が太鼓判押してたもの   などとは決してお考えにはならぬよう

 

あらためてお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

BREAKERZはアルバムを出すらしい。

 

10周年記念の「X(クロス)」

 

前もってアンケートを取ったというファンリクエストのラインナップを見てみると

 

納得がいかなかった。

 

やっぱりわたしBRZファンの方々とは意見が合わないんだな。つくづく実感。

 

残念なので『えり湖版BREAKERZセレクション』を勝手に考えてみた。

 

「FAKE LOVE」

 

「SUGAR BABY」

 

「REAL LOVE」

 

「Bird man」

 

「バンビーノ」

 

「激情」

 

「JOKER」

 

「NO SEX NO LIFE」

 

「EMILY」

 

「SECRET GIRL」

 

「DEAR LIAR」

 

「Re:born」

 

「灼熱」なんかも良かったと思う。

 

以上のラインアップを見ると

 

どうもわたしの好きな曲はメロディが覚えやすくてシンプルで力強い作品が多い感じ。

 

さすがに「0-ZEROー」の収録曲は買ってないからわかんないなあと思いながら見てみると

 

アハッ!

 

やっぱりこの直近アルバムからは一つもエントリーされてないのね。

 

音源化されずライブで歌っただけの「心をつないで」まで入ってるのに。

 

あの「心をつないで」は伸びやかな声で歌い上げるDAIGOの背中が寂しげでとても愛しかったし実際わたしはもう何回も再生し続けて聴いたんだけど

 

あれはBRZが活動休止するタイミングで歌われたからこそ意味があり心を打たれたわけで

 

 

あらためてCDで聴いた場合はどうなのかなとは思う。いや良いんだろうとは思いますけどもね。間違いなく名曲でしたし。大好きでしたよ。

 

 

って過去形で話さなきゃならん自分が悲しい。

 

 

 

 

 

若大将からメールがきた。

 

ホレあの

 

学生時代からずっと超一流の男であり続け

 

三十年近く前に

 

「俺と付き合うか…」と

 

情にほだされついポロっと失言してしまったばっかりに

 

今の今までそれを忘れもせず

 

「あの時そう言ったよね?三十年前にそう言ったよね?」とこうやってわたしにブログで未練たらしく書かれてしまっている、あのイイ男だ。

 

今回の若大将のメールの内容は

 

前にちらっと誘ってくれていた「OB演奏会を機にみんなでランチしよう」という約束の、日時や場所などの詳細だった。

 

あの時

 

ランチのためにわざわざ横浜から大阪まで出かけないでしょうよ~と思いつつも「前向きに検討します」と答えてしまっていたのはなぜかと言うと

 

他でもないあの若大将からのお誘いをあっさりと断るのはなんかもったいないような気がしたからだ。

 

だけど

 

当日の参加メンバーの中には今も会いにくい間柄の人もいたので

 

「ばーちゃんが死にかけで目が離せないので今回は無理のようです」と返信した。

 

ちなみに実際のばーちゃんは今食卓でフリスビー大の菓子パンモリモリ食べてますけど…。

 

それでまたメールのやり取りをするうち

 

ここのところわたしを悩ませている深刻な問題を彼に打ち明けてしまった。

 

これは他人様に聞いてもらったところで仕方ないことであるし

 

聞かされたほうだって答えようのない問題であることは百も承知であるのだけど

 

自分一人で抱えこむのがどうしてもどうしてもしんどくて

 

「答はいらない。聞いてくださるだけでいい」と前置きして。

 

長いメールを読んだ若大将は

 

「大変だったんだな」と返事をくれた後、自分なりの感想を述べて

 

「俺で良ければ気兼ねせず電話して来いよ。いつでも構わないから」と電話番号を書き送ってくれた。

 

最後に

 

「これ以上頑張るなよ」とのひと言を添えて・・・。

 

こんなメールを受け取って

 

誰が泣かずにいられますか…。

 

 

 

泣かなかったけど・・・。

 

 

 

もちろん、だからといって実際に電話などはしない。

 

こんな温かいお言葉を頂戴しただけで十分幸せだ。感謝です。

 

と!ここまで書いて

 

スマホをいじっているうち、じゃがいものようなわたしの指が画面のどこかにうっかり触れたらしく

 

いきなり通話の画面になった!

 

それもビデオチャット画面!!

 

?これどうなっちゃったの?

 

慌てて電源切ったりボタンを何回も押したりしたんだけど

 

呼び出し音は数十秒間鳴り続け

 

どこを押したおかげかもわかんないままやっと送信が止まって電話は切れた。

 

良かった・・・汗

 

これが平日の昼間だったから良かったものの

 

夜だったらきっと若大将は電話を取ってくれていただろう。

 

焦った…

 

これだから最新機器はキライだ。。。

 

(追記)

「うっかりチャットのボタンを押してしまったようです。ごめんなさい!」とすぐにメッセージを送ったら

 

 

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 どこまでも爽やかないいオトコだ。。。感涙

 

 

 

 

 

 

 

明日は朝から上野恩賜公園まで出かける予定。

 

それは東京芸大の学祭があるからで

 

名物のお神輿も披露され観光客を喜ばせてくれるというのと

 

販売テントでは、わたしの大好きなアクセサリー作家さんが出店なさるというので

 

わたしは本当に前々から楽しみにしていて、このためにわざわざ有休まで取ったという執拗さ。

 

お昼を過ぎたら東京で長男と会う約束をしてあって

 

その後はクーさまの講義に出席予定。それが終われば恒例の懇親会。夜中まで飲む。

 

そう考えるとわたし

 

朝から夜まで遊びっぱなしだ・・・。