森林を人間が使わなくなったので、森林が動物の住みやすい環境になり、
鹿もイノシシもサルもクマも、増えてきて獣害が激しくなってきている。
一方で、分布がなぜ拡大するのか。
その要因も、生息数が増えてきているからである。
「熊の生息域である山が荒らされたから熊が里に出没するようになった」というのは、150年前の話。
人間が森林伐採しハゲ山だらけにしたというのは明治期の話。
日本は森林資源をオーバーユースしてきた。炭鉱開発など、豊富な鉱物資源を生成、運搬するために
木材資源を大量に使っている。郡部の方が荒れていた。
『もののけ姫』のたたらで鉄を生成して鉄砲をつくるという場面は、鳥取県が舞台と言われている。
特に西日本は山をあらしてきた。しかしそれは150年前の話。
第二次世界大戦以降は、燃料革命が起こり、人間が山に行かなくても日常生活が送れるようになった。
それ以前は人間は山に行かないと生活できなかった。
日本は「資源がない国」なのではなく、資源を使い過ぎていたから、資源を求めて国土拡大するために
戦争に向かったのではないか。
現在は増えた野生動物が山を使っている。
これを人間がコントロールしない限り、野生動物が増え過ぎると山も荒れてしまう。
生態系は、食う・食われるのメカニズムで成り立っている。
縄文、弥生の頃から野生動物を食べてきたのは人間。
オオカミが他の野生動物を食べていたのはごくわずかで、人間がコントロールしてきた。
大正・昭和初期は毛皮が海外で外貨の獲得のために獲られ輸出された。
その時に乱獲が起こり、絶滅寸前に陥っている。狩猟を制限しても山が荒れているので増えなかった。
人間が山を使わなくなり動物が増えてきて農業ができなくなるので、鹿・イノシシは捕獲をすることは、世界的なコンセンサスが得られている。
柵を作るなど対策はとられているが、柵を壊して侵入してきてしまう。動物が多いと維持管理が成り立たないので、ある程度、動物の数をある程度コントロールし低密度にし、柵を設置するという方策を取ることになっている。
これはクマにも当てはまる。
環境省が各都道府県のクマの個体数の増減を調査している。
精度は荒いがおおまかに、ほとんどの都道府県が増えている。
青森がデータがない(現在調査中)。九州はほとんど絶滅している。四国も数十頭という状況。
増えているのは、北海道と本州。特に東北地方が凄まじい勢いで増えている。
人口は減り、山は使わないので野生動物の楽園になり、山に入るとクマの痕跡だらけという状況。
かつては東北地方ではクマを一頭の獲ると高額で売れたので獲り過ぎ、戦後まもなくはクマがいなくなり、保護するようになったのが、役30年前。法律で保護政策を始めたのは20年前。
遅きに失した政策で、保護しなくてよくなってから保護政策ができた。
山の状態が良くなってきているのでクマの繁殖サイクルも良くなってきている。
山のドングリも豊富なのに、数が増え過ぎているから、春から里へ下りてきている。
クマは幾何級数的に増えている。
一旦、管理可能な数まで減らさないと、人間が対応できなくなってしまう状況。
クマは、体の割に目が小さく、非常に視力が弱い。色はモノクロにしか見えていない。
嗅覚と聴覚が発達している。
周波数の高く、短い音を警戒する。(鹿の「pya! 鳥の「chi chi chi」という鳴き声)
「熊よけの鈴」や、ホイッスルの「pi 」という音は、クマを回避したいときは効果的。
甘いもの、肉、とくに腐ったものが好きなので、クマの出没地では「コンポスト」は危険。
車に衝突するのと同じで、クマに遭遇したら、なす術はない。
渓流釣りや山菜採りの方が襲われている。まず、クマがいるところには行かないこと。
クマの誘引物は、果樹、圧倒的に「柿」。戦後の食糧難から柿の木を植えられ、柿の木が多い。
横山教授による9歳のメスのツキノワグマにGPSを付けた「クマの行動観察」によると、クマは山と里を広範囲に動き回り、人間の住む集落のごく近くにいる。
しかし、集落の人々はクマに気づいていない。
クマの増加のフェーズに入ってしまっているので、対策が非常に難しくなっている。
・まず個体数を減らす。個体数管理をする。
・防護策はクマの場合は電気柵(クマは鼻を使って探索をする。8000ボルトの電圧で学習をする)
でなければ防げない。
・クマの好きな誘引物(柿の木)は取り除く。
・鬱蒼とした森を明るい森にするなど出没しにくい環境整備(公共事業)をする。
これらはセットで行わなければ全く効果はない。
とくに、個体数を減らすことは、市役所などでは不可能で、猟友会も80代と老齢化しているので、
自衛隊の力が要る。
ただし通常の射撃の能力があっても動物には命中しない。動物のことを勉強し、行動を読んで捕獲する技術を身につける「鳥獣対策員」を仕事として中山間地域に配備することが必要。
政策転換を図らなければ、農作物、農地を守れない。人の暮らしを守れない段階に入っている。
中山間地域に対策が図られなかれば、都会に広がることは必至。
安易に観光地でツキノワグマに餌を与えたり、対策に反対して攻撃するようなことは間違っているので止めるべき。
伊吹山の土砂災害は、鹿が大繁殖して植物を食べ尽くし裸地化したことが原因になっている。
このような小規模な災害は沢山起こっている。
現代社会で、自然環境と人間が共存していくことが課題。
クマ研究者、兵庫県立大学横山真弓教授に聞く!日本列島は熊が支配しつつある?!安冨歩東京大学名誉教授。一月万冊
環境省
クマ類の生息状況、被害状況等について
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/kuma-situation.pdf
横山教授のGPSによるクマの行動観察
9歳のメスのクマにGPSをつけて、行動を観測。
黄色い囲いの中にずっといたメスのツキノワグマ。
黄色の囲いを拡大したものが右。人間の住む集落を伝って動き回っている。
2024年は西日本は14年ぶりの大凶作で、このメスのクマは隣山ではなく隣町の都会に行った。
住民の人間は誰も気づいてない。(横山教授だけがGPSでウオッチしていた)
🔻2025年の春先のクマの動き。里の人間の町のすぐそこまで来ている。
クマは山に閉じこもっているのではなく、兵庫県の4つほどの市町を動き回っている。
いつも人の生活圏と山とをグルグルと行き来している。
こちらも住民は誰も気づいていない。
集落に定着するようであれば集落に知らせねばならないが、動き回っている状況。
横山教授のGPSは1日のタイムラグで位置情報が分かる。「昨日どこにいたかは分かる」状況。
環境省
クマ類の保護管理をめぐる現状と特定計画の考え方と効果的な進め方
横山 真弓(兵庫県立大学自然・環境科学研究所/兵庫県森林動物研究センター)
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort5/effort5-3c/kiso_fukuoka/kuma.pdf
実践野生動物管理学 – 2021/9/18




