” 計算社会科学の手法でSNSを分析する東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫(とりうみ・ふじお)教授は次のように語る。
「兵庫県知事選はマスメディアがあまり情報を発信しておらず、斎藤氏に関する情報は主にネット上に上がっていました。
その情報を参考にして投票に行った人が多くいると考えられます。
特に動画サイトの影響力が強く、立花孝志氏のような影響力のある人が動画を発信し、後追いで切り抜き動画を作る人たちも現れた。
視聴者が増えると収入が増えるので、どんどん切り抜きが作られていきました。
ただしネット動画に真偽判定はいらないので、結果として偽・誤情報も含めて広く情報が拡散されました」”
”「『財務省解体』が含まれるポストをしたインフルエンサーの上位100人中52人が、過去のポストにコミュニティノートを付与されています。
コミュニティノートとは、誤解を招く可能性があるポストに別のユーザーが背景情報を追加できるものです。
つまり、5割以上のアカウントが、誤解を招く恐れのあるポストをした経験があるものと考えられます。
ちなみに一般的な炎上やバズでは、この割合が10%程度なので、かなり高いほうだと言えます。
なお、財務省解体に関する情報拡散の4分の3が、この100アカウント発というデータも出ています」”
”「偽・誤情報は社会との連動性が非常に強いのが特徴です。
財務省解体デモが象徴的で、自分の生活が苦しいと『財務省の職員ばかりが得をしているのではないか』と疑ってしまいます。
排外主義もそうですが、お金がたっぷりあって心の余裕があればそんなことは思わないでしょう。
しかし、自分が苦しい立場にあると、他人を思いやることができなくなるんです。
偽・誤情報の噴出は、生活の不安や不満の裏返しと言えます」”
”どうすれば偽・誤情報と距離を取ることができるのか。鳥海氏が続けて語る。
「重要なのは、自分にとって都合のいい情報もそうじゃない情報も確認することです。また、情報発信者のバックグラウンドについて考えることも大切です。 前提として、世の中には信頼を裏切ることが許される立場と、許されない立場が存在します。ネットのインフルエンサーは前者ですが、マスメディアはどちらかといえば後者。そう考えると、ネットのインフルエンサーよりはマスメディアのほうが信じるに値すると考えられます」
一方で、昨今はマスメディアよりもネットに真実を求める人が増えている。
それについて、鳥海氏はマスメディア側の責任を指摘する。
「この現象は、マスメディアが信頼を積み重ねてこられなかった結果です。
テレビ局はニュースとワイドショーを明確に分けずに放送していたりするので、『テレビは適当だ』という印象を視聴者に与えてしまう。これはマスメディアの努力不足と言えるでしょう」”
