【大澤真幸が語る】 ヤニス・バルファキス『テクノ封建制』〜資本主義の終わりとその後の世界  | ☆Dancing the Dream ☆

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【大澤真幸が語る】資本主義の終わりとその後の世界 2025/05/16

 
高名なギリシャの経済学者 ヤニス・バルファキス氏が、『テクノ封建制 デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する とんでもなく醜くて、不公平な経済の話。』(集英社)を上梓した。
私たちの世界はいつの間にか、新しい社会と経済のステージに突入していると本書は語る。
どんな世界が始まっているのか。社会学者の大澤真幸氏に、本のポイントと議論すべき点について聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
 
 
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大澤真幸さんが、元ギリシャ財務大臣ヤニス・バルファキスの最新刊『Technofeudalism』を語る。

 

バルファキスは2015年でしたっけね。ギリシャがデフォルトになった時の急進左翼内閣の財務大臣みたいなことをやって政治の世界に出てきた人なんですけど。

日本で言うとね、マルクス経済学にちょっと近いとこがあるんですけど。本人もちょっとマルクスっぽい言葉を使ってるけど、日本の一般的なというか、きっちりとしたマルクス経済学者からするとだいぶ

マルクス主義ともちょっと違うぞ、みたいな。あるいはマルクスに近い言葉も使うんですけどそれを自分にアレンジしてるので完全にマルク主義とも言えないんですけど。とにかくかなり異端的な経済学者なんですけど。〜

 

〜それでライターとして、文筆家として非常に工夫ある人というか才能のある人で、今までもかなりつも本が出てますね。翻訳もたくさんなされてはいるんですよ。

いちばん有名なのは、娘に資本主義について、小さな幼い娘に語り聞かすみたいなそういうやつもでてるんですけど。今回は、お父さんに答えるっていう形になってるところがちょっと面白いとこですよね。このお父さんて人がなかなか立派な人だったことも分かるんですけど。どうも鉄鋼関係のエンジニアだったらしいってことは分かります。それから左翼でマルクス主義者で労働運動に熱心に関わってた人で、その上で歴史なんかの造詣も深いかなり教養のある方だったってこともよく分かるわけですけど。1993年なんですが、我が家に初めてインターネットにつながっているコンピューター、モデムがそれを当時のまだアナログロっぽいような電話を使って接続した時に、お父さんが出した疑問があって。それに自分は答えられなかったが、今やっと、それに十分に答えることができると。〜

 

〜このバルファキスのテクノフューダリズムってのはですね。「実は資本主義すでに終わっている」と。ほぼ終わっている。あるいは、終わりかけている。原著のタイトルはWhat Killed Capitalismですから、資本主義はもう終わってるってし、殺されたっていうことになってるんですね。いや、どういう風に終わったかって言うと、これがまた驚くような主張なんですね。つまり、例えば先ほどのお父さんが「資本主義はこれでアキレス腱になって終わるのか?」っていう時に、「資本主義が終わって社会主義のようなものがやがて登場するんだろうか?」っていうのを暗にそういう含みで聞いてるわけですけれども。「資本主義の終わり方は社会主義とか共産主義の方に向かって終わるのではなくって、元に戻るような形で終わる」と。つまり具体的に言うと、資本主義っていうのは教科書的にっていうか事実としてもそうですけれども、「ヨーロッパで封建制っていうのがあって、封建制に取って変わるような形で資本主義ってのが生まれてきたんだ」とそういう風になってるわけです。だから資本は封建制の後に出てきた新しいシステムだったわけですけども。客観的に見てこのシステムの作動の仕方というか、どういう風にこのシステムが支えられてるかって、基本のメカニズムを見るとこれはもはや資本主義のメカニズムではなくって、じゃあ何に近いか?と言えば実はこれは「かつての封建制のメカニズムが、インターネットというかクラウドって言葉を使ってるわけですけど、サイバー空間で展開する方向性になっているんだ」ということを説明していて。これがね、色々反論も出てくるとこだと思うけど、私は非常に説得力もあるし、非常に洞察溢れるっていう風に思います。〜

 

〜それ(封建制)とそっくりそのままのことが起きてるんだってことを言ってるわけです。

じゃ、どこで起きてるかって言うと、封建領主に当たるのがクラウド領主という風に訳してますけどね。これね本当はね、クラウド領主っていうのはね、英訳の原典ではですね、cloudalistクラウダリストってなってるんですよ。プラットフォームを持ってるような、よく言うGAFAM(ガーファム)みたいな人たちですね。いちばん典型として使われてるのはAmazonですけれども。Amazonじゃなくてももちろん GoogleでもFacebookでもね。ま、メタって言うんですかね。メタでも、X Twitterでもみんなそういう大きなプラットフォームを持っている人たちの彼らのプラットフォームが封建領主の領地に当たるんだと。〜

 

〜Amazonで考えるのが一番分かりやすいんですけれども。いろんな事業者っていうかそれが 家臣にあたるというか、ここでは「封臣(ふうしん/ほうしん」って書いてあって。封臣、つまり事実上の家来になってるわけです。これ具体的に言うとAmazonでいろんなものを売りたいと思っている事業者のことを言うわけです。で、彼らはAmazonのプラットフォームを使わせてもらって、そこでAmazonに載るので、本も売れる。この『テクノ封建制』って本でもそうだし、本じゃなくても何でも 売れるわけです。そして、その代わり使わせてもらった分に当たる賃貸を払うわけですよね。これがRent レント

この本の中で最も重要な概念の1つですけど。Rent 、家賃とか地代だとかそういうもののことを一般にRent というわけです。これRent の概念がちょっと経済学的にはかなり独特で広く解釈されるんですけど。ともかくとして、賃料を払って、その「上前を跳ねる」って感じですよね。Amazonの使っているプラットフォームが言えば領地なわけですよね。その領地を使いたいと思っている、つまりあなたの家臣になりたいと思っている様々な業種たちがいるわけです。ということは、そのAmazonの使っている土地ってのは皆が使いたくてしょうがなくなるような非常に豊かな土地なわけですよ。どうしてそこが肥沃な土地になってくれるかって言うと、それは日頃から「農奴たち」がですね、そこをいつも耕してきて非常に豊かな肥沃な土地にしているので。それで家臣たちはそこで何かをしたい、儲けたい、というわけです。じゃ、その「農奴」っての は何かっていうと、ここのとこは、この本の中で最も重要なとこですけど、農奴とは我々ユーザーのことなんだということですよね。つまり僕らがあのAmazonで買い物をする、あるいはレビューを書く、そういういろんなことをするおかげでAmazonのプラットフォームの価値がものすごく高くなっているわけですよ。〜

 

〜僕らはそこでしかも個人情報、購買履歴を残している、「大澤はバルファキスの新刊が出ればきっと買うだろう」っていうのが大体予想 がされてるとか。そういうような状況ですよね。ユーザーはですねAmazonを使う時にAmazon自身に金を払ってるわけじゃないので、「Amazonって気前が いいね!僕らにこういうところを使せてくれて!」(笑)僕らすごく気前がいいと思っているんですが、実は儲けてるのはAmazonの方であって、僕らはAmazonにを使うことでAmazonのプラットフォームの価値を ものすごく上げているわけですよね。これは実は「農奴である」と。

っていうのはどういうことかっていうと、普通の資本主義であれば、価値を増やすための仕事をすればそれは労働なんですよね。労働に対しては賃金を支払らなくてはいけないだけど僕らは1銭もAmazonからもらわないんですよ。プラットフォームによっては 若干の使用料って取る場合もありますけど。

大抵無料か無償。もうこれ以上安くはないってぐらいの安さにしかならないですね。大抵はね。だから「Amazonさんって僕らのために気前よくやっている」と思っているが、実は我々はAmazonのプラットフォームつまり領地を非常に価値あるものにしている。〜

 

〜実は我々はAmazonの プラットフォームつま領地を非常に価値 あるものにしている。しかもそこに

対する対価は1銭ももらっていないので、「あなたのは結果的には封建農奴と同じですよ」という形になっていると。これはなぜ封建制であって資本主義なのじゃないのかっていうことが一番重要で、ちょっと、ここがきっとね、専門家も含めて、今一なかなか納得いかないぞ。みたいなことになりやすい部分で、バルファキス自身もここで納得しないかもしれない人がいるだろうと思って、父親に「お父さんよく分からないかもしれないが、実はそうだ。」ということを一生懸命説明してるんです。

いちばん重要な概念は先ほど少し出てきましたけど「Rent レント」っていう考えなんです。〜

 

〜特に決定的な転換点になったのは2008年の金融危機の時だったっていうようなことがかなり書かれてますけども。いちばん儲けてる奴って、いちばん中心に儲けてる人は誰か?って考えたら、ジェフ・ベソスさんですとか、あるいはイーロン・マスクさんみたいな感じの人たちで、要は「グラウド領主」たちなんですよ。彼らは主として実は”レント”で儲けているんですよと。〜

 

〜トヨタ売上の中で大半を従業員のための賃金に使うわけです。多分8割以上ぐらい使っちゃうわけですよ。(略)企業家にとって1番大変なのは何と言っても賃金なんですよね。(略)Amazonだってたくさんの人を雇ってるじゃないかって僕ら思うわけです。実際雇っているでしょう。(略)しかし Amazonは実は人件費に使ってる、賃金に使ってる部分は1%ぐらいしかないのですよと。企業の形式が全然違うからです。(略)Amazonが持っている封建領地が価値があるのは、そこで労働してる人たちが一生懸命働いているからではないんですよね。僕らがタダ働らきをしているから。つまり簡単にいえば僕らが例えばGoogleでしょっちゅうを検索するとかそういうことをしているからに過ぎないわけです。そこからの利益なんですね。〜

 

〜このテクノフューダリズムのね。1番何かおぞましいっていう印象を与えているのはですね。

AIの アルゴリズムみたいなものとセットになっているということが非常に実は大きいですよね。〜

 

〜テクノ封建制ではね。

簡単に言うと、伝統的な意味での労働とか仕事ってものの価値がどんどん下がっていくですよ。

だって稼ぎどころは、さっきも言ったように、主にテクノ農奴たちが使ってるってるところでは儲かってるわけだから、もちろんその農奴たちに少し注目されなきゃいけないけど。

でももうね、一旦入っ てしまったら僕らはね、もう永遠にAmazonで買い物するのやめるぞとか、

あるいはAmazonにもう出品するのやめるぞっていかないわけじゃないですか。〜

 

〜いちばん最後にバルファキスはどうやってテクノ封建制をこう乗り越えるかっていうか、そこから逃れるかみたいな話をしていくつかの提案した。なかなか面白い提案はいっぱいあるんだけど、究極的にテクノ封建性とは関係ない提案がいっぱいあるわけですよ。

 先ほど言った企業の管理の仕方とか、それは面白いけれど、テクノ封建制とは必ずしも関係ない。

テクノ封建制にストレートに関係してるのは、いちばん最後に言った僕らが一致団結してAmazonを

1日使わないみたいな「クラウド反乱」ってのをやったらどうかっていう。結論的に言うとね。

 いやそれはなかなか大変ですよねっていうようなことだけじゃなくて、もっと原理的な意味でですね。「クラウド反乱」っていうのはね、原理的に非常に難しい問題を含んでると思うんですよ。

クラウド オブ農奴たちは客観的に見れば、「お前はAmazonのアルゴリズムが指定したものを買ってるだけだから自由がない等しい」けれども、本人は「思いっきり自由だと思ってる」んですよね。

思いっきり自由を享受してると思ってる人たちに、「実はその自由はまやかしであって本当の自由が欲しいんだ」と思わせること自体が難しいわけ。そこに1番難しさがあるわけよ。

 例えばね、昔、労働者を社会主義運動を起こす時は、労働者は何か「すごく苦しい。あまりにも賃金

が少ない」とか「あまりにもたくさん労働させられてる」とか、抑圧されてることに対する自覚があるわけです。だからそれをバネにしていく。

 この場合、自由じゃないことについての自覚がない人に、しかし、動員して動かさなければテクノ封建制は崩壊しないんですよね。対抗へのね、モチベーションや意志ってものはどうするのか?

そこに1番の問題があって。

「対抗しなきゃいけない」ってみんなが思ってれば、「明日みんなAmazonをとっちめてやろう」っ て言ったら、でもみんな「Amazonとっちめて何かいいことある?」って思うだけじゃないですか。

このままだとね。

ある意味で史上最悪の自由の抑圧が起きてるわけですよ。〜