【藤原辰史】アブグレイブ収容所…ここはイラクの「国立種子貯蔵庫」があった場所 | ☆Dancing the Dream ☆

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あのショッキングな写真は脳裏に焼き付いている。
米兵のイラク人捕虜に対する拷問があったアブグレイブ収容所。

正しくは、イラク戦争後、アブグレイブは、バグダード中央勾留センター(Baghdad Central Detention Center;略称BCCF)と呼ばれ、連合軍の統合尋問・聴取センター(Joint Interrogation and Debriefing Center、略称:JIDC)の管理下にあった。

驚いたことに、そのイラクのアブグレイブ収容所は、元はイラクの「国立種子貯蔵庫」があった場所なのだという。
チグリス・ユーフラテス川流域のメソポタミア文明の時代からの多種の種子を貯蔵していた場所だったのだということと考え合わせれば、この罪深い野蛮な行為が野放しにされていたことは、西洋のオリエントに対する尋常ではない禍々しい嫉妬の感情が滲みでていると感じさせられてならない。

マーティン・バナール『ブラック・アテナ』
『ブラック・アテナ 第1巻:古代ギリシャの捏造』日本
語版刊行記念シンポジアムに寄せて
マーティン・バナール
http://www.gn21.net/ex/bernal_key_note.pdf

グローバルネットワーク21『ブラック・アテナ』出版記念シンポジウム 
京都タワーホテル 2007年5月8日
板垣雄三(東京大学名誉教授)
http://www.gn21.net/ex/black_athena_itagaki.html



藤原辰史 客員研究員Web講演会「コロナ新時代の食と農の思想」  
2020/10/28


53:25〜 

私が今日申し上げたいのは、まさにこの新自由主義に乗っからない 農業のあり方をどういうふうなものなのかということになるわけです。
私はすぐ雑談をする悪い癖があるんですけど、今日面白い本を持ってきました。
『 ユートピアと食生活』という田村真八郎さんという方がお書きになった本なんですね。
私これ大好きな本なんですね。
将来農業とはどうあるべきか?ということを考えるたびに、これまでのユートピア本をひたすら読んで、例えばプラトンの「国家」それから、テレフォン(ケニアには、野菜栽培に従事する“テレフォンファーマー”と呼ばれる兼業農家)とか、それからトーマス・マンの「ユートピア」とか。その他諸々のものを読んでですね。ものすごい数の小説を読んでるんですよ。
 この方は、どういう方かというと、昭和5年に生まれた1930年に生まれて、東大農学部農芸科学を卒業したあと、農林省の測量研究所の入省されて、食品流通研究室長やそういうものを経て、現在、企画連絡室長という風に書いてある。
昭和56年ですから1981年の本です。

僕がすごく感動したのは、今の農林省の方でもおられますけれども、めっちゃ本読んで、しかも現実に関係ないこんなユートピアの本を読んで、いったい将来の食がどうなるのかということを検討しているんです。
で、これが大変、私今びっくりしている、私も講義でよく使うんですけども、今、食の新しい未来ということを描くときに、どんなことを想像されますか ?
何が目標かといったときに、今起こっているのは、一つはバイオニックですよね。
牛を殺さない方がベジタリアンとっていいので、牛は殺さないで牛の細胞を培養して、それを肉にする技術が今も革命的にへ進んでいます。
それから植物工場ですね。
ていう形の農業の未来が私たちのこの未来像という、ものをすごくこう作り上げて来ているってことを田村さんもすでにこの時点で言ってるわけですね 。
でも、彼女彼が、田村さんが農林省に務めながら、おっしゃっているのは、「でもそれでいいんだろうか?」「食べ物と農業ってそういう未来だったっけ?」「私たちが望んでいた未来ってそうやったっけ?」ということを、小説を読んで考えているということですが、私は、とてもあの勇気づけられます。

 そういうふうな田村さんへの敬意も表しながら、もう一度、私のような宙に浮いた文系的な観点からもう一度考え直してみたいと思います。

3番ですがじゃあこの新自由主義の最も典型的な事例を一つ挙げたいと思います。
一つは、イラクで起こった、ブッシュ大統領のイラク戦争ですね。
で、これもあの歴史化しなきゃいけないんですけど、日本では本当に語られなくなりました。
私はこれはあのとても重要だったと思います。
なぜかというと8年続いてますし、泥沼化して、しかももともと戦争の大義名分だった「大規模破壊兵器というものが見つからなかった」ということです。
この戦争のときに、日本はあの小泉純一郎内閣第1次内閣でした。
で、竹中さんもその時いましたが、その時、小泉さんイラク戦争を支持したわけですね。
で、支持して、これに「全面的に協力する」と言ったんですが、結局、兵器が見つからなくて小泉首相は国会で答弁不能になります。
これさっき言いましたけど、首相が国会で喋られなくなるっていう事は、本来なかったんですけど、この頃から国会で答弁できなくても、とりあえず「首相がOK出したんだからOKです〜」みたいな感じになって、批判力が弱まるだけじゃなくて、上の方もグイグイ行くようになってしまったということです。

で、このイラク戦争についても結局、外務省もすごい短いペーパーを出して反省しただけで、結局、日本は、イラク戦争に対して総括を全くほとんどしていないわけですが。
反省ないまま、日本が「以下のようなイラクの農業政策を推進することに賛成するのか、あるいは反対するのか?」というのは、やっぱり「私たちの食と農の思想」が問われているわけです。

アブグレイブ収容所というのが非常にひどい拷問がなされたということで、世界的に記事になりましたが、実はここは、元「国立種子貯蔵庫」があった場所です。
イラクでは非常に多くのたくさんの種子が、チグリス・ユーフラテス川の文明のメソポタミア文明の時代からですね、非常に多くの種子があった場所で。
なんとか種子を「種子貯蔵庫」に置いておいたんですが、空爆によって破壊されています。
意図的かどうかは分かりませんが、破壊されています。

破壊されて種子がないという状況の中で、大企業が救いの手を差し伸べます。
モンサントやデュポンが遺伝子組み換えの趣旨を無料で配布しました。
これによって、種子は無料だったので、「撒いてください」ということでしたんですが、
この時、「ブレーマー法」という占領地イラクの法律ができます。
「ブレーマー法第81条」というのは、「特許 産業デザイン、秘密情報、集積回路及び種苗法」で
「保護品種作物の再利用の禁止」というふうなことが書いてあったわけです。

これ、何を意味しているかと言うと、
これまで97%のイラクの農家が、品種の栽培、多様化と貯蔵を自治的に行っていて、さらに国家としても種子を集めて、その多様性を担保しようとしていたのですが、ここに企業が入ってきていて、
「ほら無料で差し上げますよ」って形で、とりあえずの飢えを救うということをした。

しかし、その後、ブラウン(ウェンディ・ブラウン)が『いかにして民主主義は失われていくのか』で書いているのは、生活に絶望したシングルマザーにヘロインを差し出すような形で、種子を配布した後、その結果、イラクの側ではずっとこの種子を使い続けなければならなくなる。
当然、デュポンもモンサントも、農薬を使わなきゃいけないわけですから、その企業の農薬がセットとして売られるわけで。
そんな中で、新しい市場が作られていく。
で、イラク人が食べない「小麦パスタ」「パスタ用小麦」っていうものも、ここに導入されてしまうという状況になりました。

これは何を意味しているかといいますと。
これは、ブラウンさんが言っているんですね。これは別に「ブレーマー法」がこういうことを目指して、この法律ができたわけではないと。
できる限りあらゆる状況を考えて、最適に現状を解決できるという経済モデル的な思考が働くと、それが必然的に、当時最も資金を持っていて、最も物を持っている団体がその場所を統治した方が一番スムーズに進行できるという”解”が出てくる。
その”最適解”を求めるということをやってる本人、あるいは、受け取る側の意図と関係なく、”解”が出てきてしまって、それに従っていくという状況が、まさに「新自由主義」なんだということを ウエンディ・ブラウンさんは言ってるわけですね。

これ、なにを言ってるかということを、もうちょっと簡単に言いますけど。
70年代から生まれた「新自由主義」というのは、できるだけ「話し合いではなくて、トップダウン、リーダーシップによって、この通り行きます」と。
議論はあんまり(しなくて)いいという風な考え方だし。
それは何かというと、独裁者が生まれて、「独裁者が、独裁しやすいようにする」という意味ではなくて。
「今、世界で物と人の流れを担っているような大企業がスムーズに任務を達成できるような”最適解”が自動的に生まれていって、それに従っていく」っていう風な状況になってしまう。
誰もがコントロールのできないようなものが新自由主義のユニークなところだというふうに言っているわけです。

で、これは、ナオミ・クラインの『ショックドクトリン』という、これも大変全世界で読まれた本ですが、クラインが言っていることとつながるわけです。
チリのアジェンデ政権が、CIAが入って、弾圧された後。
常に… 、  天安門事件の後。それから台風のカテリーナがきてそれからアメリカ南部が壊滅的な打撃を受けた後。 福島の第1原子力発電所の爆発の後。
常にこうやってこの経済改革が自然に導入されていって、そこで、アメリカ式の新自由主義的な経済システムが常に導入されて。
このイラクのように導入されていくということが進められてきました。

で、それを「惨事便乗型資本主義」。
「 Disaster Capitalism」というふうにクラインは呼んでますけれども。

それには、当然、「農業」も含まれて、「食」も含まれているわけです。
そんな中で、私たちは、どういう風な農業を…、この狭い東ユーラシア大陸の端っこの方にある列島の小さな島国で、どういうふうな農業を考えるべきか?

この新自由主義に乗っかるというのも一つの選択肢だと思います。
それによってできるかぎり規模拡大して、競争力経済成長のある農業を求めて行く。そのためには農村からの人口を減らして、特化専門家集団を農村に貼り付けて、それに膨大な資金を投入して、国際社会で勝っていける農業へ行くと。
これは、まさにこの「イラクモデル」を支持するやり方であって、それを選ぶのであれば、それは、そういう思想に基づいてなされたんだということになると思います。

で、今日申し上げたいのは、その道筋というのは、しかし非常にリスクを伴う。
「新型コロナウイルスでは弱点を晒しまくった」そう思うので。
それじゃない、「新自由主義ではない農業」というものを考えることも、日本でもし実験がなされていて、その実験が日本モデルとして後世の歴史に残るのであれば、それは大変面白いんじゃないかという気がします。

で、大体こういうことを言うと、いつも、「また戯言を」と。「人文学者はこういうふうにいつも夢ばっかり見て、データを抑えない」「エビデンスはどこへ行った」っていう風に言われます。
しかし、エビデンスを出す前に、「あなたは一体どういう思想と信条を持っていますか?」が問われなければならないわけです。

田村さんは農林省に勤めていて、まさにそのエビデンスを調査しながら、ユートピアを語っていたわけです。
で、それと同じ意味で、私も田村さんの顰に倣って、本を読んで研究してきたことをお伝えしたいと思います。

(以下文字起こし略。動画のパネルを参照しつつ、お話を聞きます)



「わら一本の革命」とその後 福岡正信自然農園 After The One Straw Revolution   Masanobu Fukuoka Natural Farm

田を耕さず、肥料をやらず、農薬などまったく使わず、草もとらず……それでいて豊かな収穫をもたらす、驚異の〈自然農法〉
――1975年に出版され世界に大きな一石を投じたロングセラー「わら一本の革命」、著者・福岡正信。
世界各国で翻訳され、数々の農学者・文化人・行政官に強い影響を与えた正信氏を祖父にもつ『福岡正信自然農園』三代目園主・福岡大樹さん。
「どう育てるのがより自然に近いか。自然に近い状態になれば、農薬も必要なくなってくる」
祖父の想いを受け継ぎ、日々自然と対話しながらその想いを体現し続けている大樹さんに、 正信氏とのエピソードや、農園のこれからを、お話していただきました。
2021年4月撮影

 福岡正信自然農園
https://f-masanobu.jp


福岡正信 自然農法実践家 VHS(TV録画)







https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/12/7/12_7_499/_article/-char/ja