かつて、福田赳夫総理大臣は、
「人一人の生命は地球より重い」と述べて、
身代金600万ドルの支払い、
超法規的措置として獄中の新左翼メンバーの引き渡しを決断した。
1977年のダッカ日航機ハイジャック事件のこの決断は、
私たちにとって、いかにも日本人らしい、と
晴天に旗が翻るような嬉しさを感じさせるものだった。
それに比べ、今はどうだろう。
国家権力に従わぬものは、死んでも自業自得なのだそうだ。
今に、「生きて虜囚の辱を受けず」と言いだしそうだ。
改めて、湯川遥菜さん、後藤健二さんのISシリア人質殺害事件、
そして、シリアでヌスラに拘束されている安田純平さんの事件に
至る現在までに、何があったのか?
政府は何を言い、何を行ったのか?
検証してみたい。
終始一貫して、
アメリカ国務省は、非公式に日本政府に、
「テロリストと交渉しない」よう圧力をかけていた。
アメリカ国務省は、非公式に日本政府に対し、
ISが身代金支払いを要求して、
ネット上に動画を出した時(1/20)から、
「テロリストと交渉することは、米市民に危険をもたらす」という理由で、
「アメリカは一切、ISと交渉しない」
「譲歩しない」という基本方針を伝えていた。
サキ報道官はブリーフィング(1/21)で、
このことをはっきりと述べている。
これは、圧力であり命令だ。
日本は、「身代金支払い」の交渉は一切せず、
タイムアウトになった段階で湯川さんが殺害され、
ISは、人質交換に要求を転じた。
日本が、対策本部(交渉窓口)をどこに置くかについても、
アメリカの圧力下にあった。
対策本部の設置は、トルコに置くのが最良だった。
日本側の人質交渉に当たった緊急対策本部は、
岸田外相を本部長、中山外務副大臣をヨルダンの現地対策本部長にしたが、
中山氏は単なるスポークスマン、実質の交渉を担ったのは、
外務省の中東アフリカ局、局長の上村司氏。
ヨルダンが主に欧米インテリジェンス情報に頼るのに比べ、
トルコは、欧米インテリジェンスの情報に加え、
豊富な現地情報も集まる。
そして、トルコは、2014年ISに囚われた49人の人質解放交渉に
成功した実績をもっていた。
にもかかわらず、選んだのはヨルダンだった。
トルコは、アメリカから強い要請があった中、
ISへの攻撃参加を拒否し攻撃のための基地も貸していない。
ISに対して独自外交を行っていた国だ。
一方、ヨルダンは、IS空爆の有志連合に参加し、
ISとは激しく対立する親米国だった。
ニホンとヨルダンは、
アメリカから「交渉するな」という圧力を受けながら、
後藤さん&自国のパイロットと、リシャウィ死刑囚の
2対1の人質交換に失敗した。
交渉せずして、救出が成功するはずがない。
これは、当然の結果だ。
米主日従の「テロリストと交渉しない」という方針は、
すなわち、あらかじめ想定された
"残忍なISによる人質の殺害"だったのであり、
結果的に、彼らの死は、"脅威のIS"のPRに利用されたのである。
◆米主日従・人質殺しのシナリオ
日本は、アメリカの言いつけをよく守った。
アメリカ政府は、米国市民に危険をもたらす、身代金支払いはしない。
・・建前上は。
▼ISによるシリア湯川氏・後藤氏拉致殺害事件
2015/1/21 菅義偉官房長官記者会見
「身代金について事案の性質上答えることは差し控える」
2015/1/22 Daily Press Briefing: Jen Psaki
*(注目)1/21 サキ国務省報道官によるブリーフィング
(41:00~)
QUESTION: Yeah. Did you have any advice for them about regarding the ransom that they were (inaudible) to pay?
問:身代金要求について日本への何か助言をお持ちですか?
MS. PSAKI: Well, I think you’re all familiar with what the view of the United States is on ransom payments – that it puts citizens at risk, and it certainly is not a policy that we here in the United States implement or we support. So that certainly is something I think Japan knows our longstanding position on that issue.
サキ氏:あなた方は、身代金支払いは米国市民に危険をもたらす-という我々の考え方をよく知っていると思います。身代金支払いは我々が支持する政策ではありません。日本は我々の姿勢を理解していると考えています。
QUESTION: Do you know, though, if you’ve had contact with the Japanese to tell them of your position or to suggest to them that it might not be a wise idea to pay a ransom?
問:身代金を支払うのは望ましくないことを告げるために、日本側と接触をもってきましたか。
MS. PSAKI: We have conveyed privately our position and they’re familiar, certainly publicly, of course, with our position as well.
サキ氏:我々は非公式に我々の姿勢を伝えてきています。そして、彼らは私たちの姿勢をもちろん間違いなく公式に良く理解を示しています。
アメリカは、テロリストと交渉しない?
アメリカは、2枚舌を使っていた。
実は、アメリカも人質交換の交渉をしていた。
前記事に紹介した、「ボウ・バーグダール米陸軍軍曹」のケースがそうだ。
しかし、アメリカは、アメリカ市民を守るために
バーグダール軍曹を帰還させたのではない。
この若者の命は、
オバマの「アフガン戦争終結」の花道を
飾るための道具に使われたのだ。
湯川氏、後藤氏の場合は、
どうだっただろう。
2015/1/22 菅義偉官房長官記者会見
5:30~「日本は(身代金)交渉はしない 人命最優先と矛盾しない」
2015/1/27 Daily Press Briefing: Jen Psaki
*(注目)1/27 サキ国務省報道官によるブリーフィング
(1:05~)
QUESTION: On this point, the Turks exchanged prisoners, their diplomats for some ISIS prisoners, some time back. So there is precedent if Jordan does the same.
問:その点においてですが、過去に、トルコは彼らの外交官とISISの囚人と交換しています。もしヨルダンが同じことをするならば、前例はあるのでしょうか?
MS. PSAKI: Well, I’d encourage you to ask Turkey about that question. I don’t speak on their behalf.
サキ氏:その質問についてはトルコにお尋ねになることをお勧めします。私が代わって述べることはできません。
QUESTION: Yeah, I know. But I’m saying that – yeah, but Jordan is your ally, as Turkey was your ally. Would you counsel the Jordanians not to do a deal or to go ahead and pursue a deal, an exchange?
問:はい、解っています。しかし、私が言っているのは、ヨルダンはあなた方の仲間であり、トルコもあなた方の仲間だということです。あなた方はヨルダンに交換の取引しないように、あるいは、取引を進めないように、取引を追求しないように助言するつもりですか?
MS. PSAKI: Our position is well known. We don’t make concessions to terrorists. That’s a well-known position by countries around the world.
サキ氏:我々の姿勢はよく知られています。我々はテロリストに譲歩はしません。それは、世界中の国々に非常によく知られた姿勢です。
QUESTION: And the exchange --
問:それから人質交換は--
MS. PSAKI: I’m not going to get into diplomatic discussions beyond that, Said. That’s our position.
サキ氏:これ以上外交的な議論に言及するつもりはありません。申しましたように、これが我々の姿勢です。
QUESTION: How about your --
問:ではどうなんですか--
MS. PSAKI: Go ahead.
サキ氏:どうぞ続けて。
MS. PSAKI: Go ahead.QUESTION: How about your deal with Taliban last year?
問:去年のあなた方のタリバンとの交渉はどうなんですか?
MS. PSAKI: I spoke about this yesterday. I think one of your colleagues with the red scarf on over here, right to your left, asked this particular question.
サキ氏:すでにこれは昨日お伝えしました。あなたの左隣にいる赤いスカーフのあなたの同僚だと思いますが特にこの質問をお尋ねになりました。
QUESTION: I wasn’t here. Sorry.
私はいませんでした。すいません。
MS. PSAKI: And I conveyed that that is – was a case where Sergeant Bowe Bergdahl was a member of the United States military, he was a prisoner of war, and that is a different circumstance, as we’ve said in the past.
私がお伝えしたのは、ボウ・バーグダール軍曹はアメリカ軍のメンバーであったケースで、捕虜でした。以前も申しあげたように状況が異なります。
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つづく・・・