政治的圧力をかける新自由主義政権と
それに屈するNHK上層部。
この腐敗したメディアの構造と、
NHKの良質なドキュメンタリー制作者との
闘いの歴史は長く、因縁は深い。
イラクへの自衛隊派遣が行われた
小泉政権時代、
2003年5月放送予定だった
NHKの「クローズアップ現代」の「終わらない戦争」が潰された。
「終わらない戦争」は、
元・NHK名プロデューサー、テレビドキュメンタリーの生みの親とも言われた
永田浩三氏が、担当し、
あの人質事件被害者のフリージャーナリスト、後藤健二氏が、撮影した作品である。
イラクへの「米軍の空爆」によって脅かされる
罪のない市民、傷つき死んでいく普通の人々を、
子連れの父親にまで銃を向けるアメリカ兵、
市民の遺体を庭に埋めるしかない病院、
それを掘り起こして行方不明の家族を探す人々
などの映像が収められていた。
また、今尚、大きな問題とし横たわる、
『慰安婦問題』を取り上げた
2001年『ETV2001』のシリーズ
『戦争をどう裁くか―問われる戦時性暴力』の
NHK側の統括プロデューサーを担当したのも永田氏である。
『戦争をどう裁くか―問われる戦時性暴力<』は、
安倍・中川による政治的圧力によって番組改変が行われ、
この不正に抗議しNHKのコンプライアンス委員会に訴え、
長井暁デスクは、異例とも言える実名を明かしての
内部告発会見まで行った。
2011年5月より放送されている「ETV特集」の
「ネットワークでつくる放射能汚染地図」シリーズは、
原発事故による放射能汚染の実態と、
被害を受けた人びとの悲劇を、地を這うような調査取材で伝え続け、
わが国原発事故報道の高い峰を形成してきた。
シリーズ第一回の5月15日の番組は、
文化庁芸術祭大賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞している。
ところが、2012年4月、
NHKで、この優れた番組群を主導した
ETV特集班のプロデューサーとディレクターが口頭での「厳重注意」、
もう1人のディレクターが「注意」を受けていたことが明らかになった。
問題とされたのは、取材班が番組の制作記録として刊行した
単行本「ホットスポット」(講談社)の内容である。
この「厳重注意」については、
NHKの公式サイトで見当たらず、
当事者も沈黙しているので、詳細はよくわからない。
局内で伝えられているところを総合すると、
「厳重注意」の理由は、前記の書籍の中で、
執筆者が、NHKが禁じていた30キロ圏内の取材を行った事実を
公表したこと、原発報道についてNHKの他部局を批判したこと、
などだったとされる。
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さて、
現在、問題となっている
クローズアップ現代「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」
この番組が放映されたのは、
2014年5月14日(水)のこと。
週刊文春の
『NHK「クローズアップ現代」 やらせ報道を告発する』と題された
2015年3月26日号 2015年3月18日に発売され、
やらせ問題が広くメディアの話題に登ったのは、
2015年4月初め頃のことである。
なぜ、一年も前のドキュメンタリー番組が
新たに糾弾されているのだろう?
ちょうど、文春の記事が出た直後(2015/4/2)に
「クローズアップ現代」では、
沖縄戦から70年、
辺野古問題の移設に反対する市民と政権が激しくぶつかる沖縄から、
安部政権の「軍事化」を危惧する
「ひめゆり学徒隊」の生存者からの
強い反戦の声を届けていた。
4/2のクローズアップ現代は、
「最後の同期会 沖縄戦・“ひめゆり”たちの70年」
ひめゆり部隊の語り部の島袋淑子さんが
ここ4-5年の政治の動きは、
戦争に近づいているのではないかと懸念され、
今一度叫び続けなければならないと訴えられた。
島袋淑子さん曰く、
「知らないことは恐ろしい。
戦争中、いつも戦況優位が伝えられたがウソだった。
戦争ほど恐ろしいものはない。戦争を起こす人を憎む。
どんなことがあっても戦争は駄目だ。
戦争は人災であり、人間が起こすものだから止めることができる。
ここ4~5年また戦争を始める準備があるのではという不安を感じる。
今が一番大事なとき。」
この痛切な訴えは、
極右傾向を露わにし、
軍事化を推し進める安倍政権にとって、
非常に不都合であり、
視聴者の注目をそらしたい内容であったに違いない。
「クローズアップ現代」 やらせ問題は、
安倍政権の「ここぞの時」を狙って
不都合な報道を行うドキュメンタリー番組潰しの
隠しネタだったのではないだろうか?
裏取りの甘い低級誌の
週刊文春を使ったこの一撃で、
視聴者の信用を失墜させ、
政権に反逆する番組制作を委縮させるのを
狙ったように思われる。
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「クローズアップ現代」報道に関する調査委員会の
NHKの詳しい調査の中間報告書がネット上でも読むことができる。
↓
検証のポイント(弁護士立会いのもとでの聞き取り)
●記者は演技を依頼したか?
・撮影当日の4月19日午後、記者はB氏(多重債務者)とともに
タクシーでA氏(ブローカー)を自宅まで迎えに行き、
大阪市内ホテルのカフェに立ち寄って15分ほど打ち合わせをした。
・A氏によれば、この場で記者から
「A氏がブローカー役を、B氏が多重債務者役を演じるよう
依頼された」という。
・一方、記者は、撮影の事前説明として、
音声を変えて映像も加工することなどを説明したもので、
「演技の依頼はしていない」と一貫して否定している。
・また、B氏も「記者が演技を依頼したことはない」と話している。
・A氏の話と、記者及びB氏の話は大きく食い違っている。
●自民党がテレビ番組の内容に介入し弾圧を加えている
自民党は、4月17日に開催する情報通信戦略調査会
(会長・川崎二郎元厚生労働相)に、
報道番組で「やらせ」などが指摘された
①NHKと、②テレビ朝日の関係者を呼び、
事情を聴くことを 党幹部が14日、明らかにした。
番組内容をめぐり、
与党がテレビ局に直接説明を求めるのは異例で、
報道機関への圧力と受け取られる可能性がある。
NHKは「クローズアップ現代」でやらせがあったとの指摘があり、
同局の調査委員会は「裏付けが不十分だった」とする中間報告を発表した。
自民党幹部は関係者を呼ぶことについて
「報道機関に圧力をかけるつもりはない」と語った。
●クロ現・番組のストーリー
「クローズアップ現代」
追跡 “出家詐欺” ~狙われる宗教法人~2014年5月14日(水)放送
出家のための儀式「得度」を悪用した新たな犯罪「出家詐欺」の実態が、NHKの取材で明らかになった。多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額の住宅ローンを騙し取る手口だ。京都府警は組織的に融資を騙し取ったとして、住職やヤミ金融業者らを全国で初めて摘発。さらに取材を進めると、ブローカーが暗躍し、「出家詐欺」が水面下で広がっている実態もわかってきた。背景には、檀家の減少や後継者がいないことで厳しい経営を強いられる宗教法人の存在があるとみられている。「出家詐欺」の実態と背景に迫り、その対策を探る。
※出家詐欺まとめ・・詐欺の舞台となった大津市の寺、「定光坊」の背景の詳細
●クロ現・やらせを文春が指摘した内容とNHKの対応
※追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人
~NHK「やらせ疑惑」調査委の中間報告で示された8つの「検証ポイント」
こちら(↑)に詳細が掲載されている。
2015年04月9日
報道番組「クローズアップ現代」でやらせが指摘された問題で、NHK調査委員会が9日の中間報告で一部の誤りを認定したことを受け、国谷裕子キャスターが同日の番組内で「視聴者の皆さまなどにおわびいたします」と謝罪した。中間報告では、問題となっている昨年5月放送の「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」で、ビルの一室を詐欺の「活動拠点」としたことを誤りだったと認定。国谷キャスターは「取材が不十分だった」と述べた。調査委は、やらせや不適切な演出の有無を調べて報告書を近くまとめ、外部委員の「見解」と併せて公表する方針。
取材した記者は「出演男性に(やらせの)演技を依頼はしていない」と証言しているという。一方、男性は「ブローカ-役を演じるよう依頼された」と話していることを明らかにした。ただ、番組では記者が取材をすすめるうちにブローカーの存在を突き止めたという構成になっているが、実際は知人の仲介で接触しており、調査委員会は「演出が過剰ではなかったかという観点からさらに検証を進める」としている。
「出家詐欺」とは、お寺で得度(出家の儀式)を受ければ戸籍上も法名への変更が可能となる制度を悪用したもので、宗教法人と結託して多重債務者を別人に仕立て上げ、ローンや融資を騙し取る詐欺の手口のこと。
番組は、滋賀県の寺を舞台に実際に起きた詐欺事件の概要を報じた後に、出家詐欺が社会に蔓延している現状をリポートした。大阪社会部の記者が出家詐欺のブローカーの事務所を突き止めてインタビューを行い、事務所を訪れた多重債務者とブローカーの会話を隠し撮りしたシーンも放送された。記者は、事務所を後にする多重債務者を追いかけ、路上で直撃インタビューも試みている。
だが、番組でブローカーとして登場した人物はこう証言した。
「私はブローカーでもありませんし、出家詐欺に携わったことも一度もありません。番組に登場するブローカーは架空の人物で、NHKの記者に依頼されて私が演技したものです」
この人物と多重債務者として番組に登場した人物は古くからの知人で、その知人からNHKの記者を紹介されて撮影に協力したという。NHKの記者と多重債務者として登場した人物も元々の知り合いだった。
NHK広報局は、週刊文春の取材に対してこう回答した。
「今回の番組は、十分取材を尽くして制作したものであり、やらせやねつ造があったとは考えていません」