2019年10月に、ISUへの嘆願書「すべてのスケーターに正義を:ジャッジシステムの向上」に署名したことがあります。1万件以上の署名が集まって、代表者がISUに提出したけれど、回答は何もなかったとのことです。

 

 

だから、ISUに何を言っても無駄だよね、と諦めていたのですが、99.9%無駄であるにしても、残りの0.1%を獲得するためには、動かないとダメなんだね。。。と思い、今回重いお尻を上げました。

ツイッター上でのクレームを受けて、2022世界選手権のISUライスト解説の首をあっという間にすげ替えた素早さに、びっくりしたこともあります。

 

来シーズンに向けて、ルール変更の動きもあるだろうし、メッセージを送るだけは送ろうと思いました。

 

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ISU様

 

近年、フィギュアスケートの採点について、何故こんな点がつくのかわからないと思うことがとても増えました。

採点について疑問を持ち続けることは、ファンにとっては非常に強い苦しみです。

そこで以下のことをお願いしたく思います。

 

・GOEについて、どのプラス項目、どのマイナス項目が適用されたのかが、わかるようにしてください。

 

・PCSについて、シリアスエラーが適用されたのかということと、適用されたとしたら、どのエレメンツに対して何故適用されたのかが、わかるようにしてください。

 

・ルールの変更で解決するよりも、ルールを正しく運用することを心がけて欲しいです。

 

・ルールを改定したとき、以前のルール(Communication)も見られるようにしてください。以前のルールというアーカイブを作って頂けるとありがたいです。

 

よろしくお願い申し上げます。

 

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英文

 

Dear ISU

 

In recent years, there has been a great increase in the number of times I have wondered about figure skating scoring, wondering why such scores are given.

It is a very strong pain for fans to keep questioning about the scoring.

Therefore, I would like to ask the following

 

Please let us know which positive and negative items (bullets) were applied to GOE.

 

For PCS, please let us know if a serious error was applied, and if so, to which elements and why.

 

Please make sure that the rules are applied correctly, rather than just solving the problem by changing the rules.

 

When you revise the rules, please make the previous rules (Communication) also available. We would appreciate it if you could create an archive of previous rules.

 

Thank you very much.

 

これを次のフォームに書き入れました。

 

https://www.isu.org/inside-isu/about/contact-us

 

もっと丁寧に、感謝しているとか、書くべきかとも思ったのですが、正直感謝よりも怒りの方が大きいので、取り繕うのは止めました。文章力がないこともありますが。

 

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PCSについて

 

もともとフィギュアスケートは、「芸術的スケート」と解釈されて来たと思います。フランス語では、「patinage artistique」(artは芸術の意)

イタリア語では「pattinaggio artistico」(artは芸術の意)

ドイツ語では「Eiskunstlauf」(Kunstは芸術の意)

スウェーデン語では「konståkning」(konstaは芸術の意)

 

フランス、イタリア、ドイツ、スウェーデンなどでは、フィギュアスケートと言うたびに、芸術的スケートと言葉にしているのですから、その概念は染みついていると思います。私もずっとフィギュアスケートは芸術的スケートだと思っていました。

 

でも、今採点ガイドによると、芸術性を直接評価する項目は、PCSの「インタープリテーション」と「パフォーマンス」だけです。

間接的には、技術が完成の域まで高められていれば、自ずと芸術に通じる、と言う意味合いで、GOEやPCSの他の項目も関係していると言えないこともないですが、それはほぼ無視されているように思います。実際、その領域まで技術を高めているのは、羽生さんしか思いつきません。

 

 

それで、何故、羽生さんのPCSが2015年のGPFから今に向けて下がる一方なのか、政治的なこととか、意図された得点・順位操作であるとかそういうことを置いておいて、考えてみました。

 

ひいき目でなく(と言っても、説得力はないですが)、羽生さんの作品の芸術性は抜きん出ていると思います。それなのに何故評価されないのか。何故PCSで10.00が並ばないのか。

それは、身も蓋もない言い方ですが、ジャッジに評価する能力がないからだと思います。

 

200mlの計量カップでは、200mlまでしか測れません。500mlの液体を注げば溢れてこぼれてしまいます。

つまり、今のISUのジャッジは、ネイサン・チェンのレベルまでしか芸術性を理解することが出来ない、ということなのだと思います。

それ以上の芸術を目撃しても、理解が及ばず、採点に誤動作が生じるのだと思います。

 

それならせめて、最高の10.00に振り切れて評価すればいいではないかと思います。

でも、たとえば、200mlの計量カップに、どどどどっと大量の水を(たとえば水道からシャワー栓最大解放で)勢いよく注ぎ込むとどうなるか。注ぎ終わったあと、計量カップの中を見ると200mlまで水は入っていません。190mlくらいしか入っていません。残りは飛び散ってしまうのです。

 

そういうことなんだと思います。

 

だから、羽生さんのスケートの芸術性を評価するには、芸術を極めている人であることが必要なのだと思います。つまり計量カップで言えば、1000ml(あるいはそれ以上)が計量できるカップが必要ということ。

 

実際、羽生さんを高く評価する人には、芸術家の方が多いです。

あるいは、その道を究めている方。

ピアニスト、指揮者、ヴァイオリニスト、声楽家、画家、写真家、クラシックバレエダンサー、作曲家、脳科学者、哲学者、文学者。

美しき4A@hjsxR7Dm7bxXz36 さんが作成した表を見てもそのことがわかります。

 

 

 

 

さて、私はISUに「GOEについて、どのプラス項目、どのマイナス項目が適用されたのかが、わかるようにしてください」と要求しましたが、多分無理だろうと思っています。

なぜなら、「自分が、どのプラス項目、どのマイナス項目を適用してGOEを決めたか自覚して」採点しているジャッジはほとんどいないだろうと思うからです。

もちろん、ガンディさんやまぽんさん始め、ファンの中にも、あるいはOBOGの中にもしっかりとGOEを見極める力のある方はいらっしゃいますから、ジャッジにそれが出来ないはずはないだろうと考えられるかもしれません。

 

でも、おそらく、(私の推測なので間違っているかも知れませんが)ガンディさんもやまぽんさんも、試合の演技のリアルタイムでは評価しておられないのではないかと思います。(違っていたらごめんなさい。土下座して謝ります)

 

考えて見て下さい。ジャンプに要する時間は、1秒未満。その前後を入れても10秒以内。羽生さんなど、『天と地と』で、18秒間の間に4つのジャンプを跳んでいるんです。

そして、ジャンプのGOEプラス項目は6つ、マイナス項目は20あってそれぞれ減点数が違います。18秒の間に100以上の項目をチェックして計算するなんてこと人間に出来るでしょうか。

そして、評価パネルに視線を落としている間にも演技は進み、宝石のようなトランジションをちりばめて行く人がいます(羽生さんです)。

どうやって評価したらいいんですか。

もう自分の直観を信じ、頼むからこの直観から出た点数が、ルールブックと齟齬がありませんようにと祈るしかないのではないかと思います。

 

GOEプラス項目も、マイナス項目もあまり考慮していないなと思う採点のジャンプは私などでもいくらでも見つけることができます。

多いのは、高さがないのに、+4以上が付いているケース。

着氷で素晴らしい流れのあるジャンプには、反射的に+5を付けるケース。

着氷で流れないと、着氷が非常に繊細で音楽に合い優れていてかつ他項目を満たしていても+5をつけないケース。

(ロンカプの4T+3Tのことを言っています)

稚拙な踏み切り(ひどいプレロテ)で減点を忘れるケース。

 

GOEプラス項目6個、マイナス項目20個それぞれに該当するボタンが付いているボードを、演技の最中にババババッと押して操作することで、明確にすることはできるかもしれない。でも体力的、運動能力的にお年寄りのジャッジには無理な気がする。

演技が終わった後に、それぞれのエレメンツに対して改めてチェックしていくという方法も考えられるけど、演技後まで記憶していられるかどうかあやしい。

さらに、ステップ、スピン、コリオでもほぼ同数の項目があるのです。

 

AIというか、ロボット技術を使えば、可能であると思う。コンピューターは判断に時間を使わないから。18秒間に100回の判断なんてお茶の子さいさいです。

ただし、その場合は、ロボットがYesかNoか明確に判断できるアルゴリズムが必要です。「高さおよび幅が非常によい」とはどういうことなのか。に始まり、全ての項目が、ロボットが迷うこと無くYesかNoの回答が出せるアルゴリズムが。

 

いわゆるディープラーニングによるAIは使えません。ディープラーニングAIは、何故その答を出したのか、説明することが出来ないからです。ブラックボックスです。つまり今のジャッジたちと同じです。

 

だから、もしISUがジャッジやテクニカルに関して、コンピューター支援を考える場合は、どのようなアルゴリズムで運用しているのかを公開して欲しいと強く願います。

そうでないと、ブラックボックスのままですから。

 

テクニカルは比較的アルゴリズムに落とし込み易いと思うのです(角度とか、回転の数とかが多いので)。羽生さんのモーションキャプチャについての論文もありますし。でも、GOEをアルゴリズム化するのは結構大変だと思います。

頑張ってほしいなと思います。

 

ジャンプのGOEプラス項目(ISU 2020-2021 GOE採点ガイドラインよりp.8)

 

ジャンプのGOE減点項目(同上よりp.10)

 

ISU 2020-2021 GOE採点ガイドライン:ISUコミュニケーション第2334号(和訳)

(2020〜2021シーズンにおける難度レベル(LOD)およびGOE採点のガイドライン)