大学院時代のご縁で、某大学病院の泌尿器外科の教授と親しくさせていただいています。
私よりだいぶ年上ですが、いまだに長時間の手術をこなす、まさに「現役バリッバリ」の先生です。
しかし、会っても、話の9割はたわいもない話。
いや、正確に言うと「女性の話」やら「昔の武勇伝」やら下世話な話が大半です。笑
まるで昭和のスナックのカウンターで隣になったおじさまみたいなノリです。
でも、そんな先生がふと語った“セカンドキャリア”の話には、ぐっと引き込まれました。
「医療にビジネスの力を掛け合わせて、予防医学をもっと実用化させたい」
つまり、健康診断の精度を高めて(たとえばCTやエコーを標準化するなど)、病気を早期発見できれば、結果として医療費も治療の頻度も減らせるというわけです。
うん、これは意外と本気の話。
医療における“攻め”の一手かもしれません。
ところで最近、「消化器外科医が減っていて、このままではまともな手術が受けられなくなるかもしれない」というニュースが流れました。
これはちょっと笑えない話。
内視鏡やロボット支援手術など、技術の進歩はめざましいとはいえ、執刀する人がいなければ手術はできません。AI診断の進化などがあっても、“なり手がいない”という問題は着実に表面化しています。
ただし、ここが不思議なところですが、医師の総数は足りているんですよね。
むしろ厚労省は今後、医学部の定員削減を進める方針さえ打ち出しています。
私はあえて極論を言います。
医学部生の進める進路・診療科は「成績順で決める」方式にすればいい。
司法試験でも、検察官・裁判官になれるのは合格者の上位数割で、残りは弁護士になりますよね?
あれと同じ方式を、医師の分野選択にも応用できないでしょうか。
たとえば、医師国家試験や研修医時代に客観的な成績をつけ、診療科ごとに総枠を設定。あとは成績順に割り当てていく。
これなら、診療科の偏在は一気に解消できるはずです。
もちろん、「選択の自由が…」という声が上がるのも分かります。
でも、私はこうも思います。その制度が嫌ならそもそも医師を目指さなくてもいい。地域枠と同じ考え方です。
本気で志がある人は、それでも目指すでしょう。
そして、そういう人が分野を支える。結果的にバランスも取れてくるはずです。
もう一つのアプローチは報酬制度の大胆な見直しです。
たとえば、外科・産婦人科・小児科といった“不人気だけど超重要”な診療科の報酬を思い切って引き上げる。その一方で、比較的安定していて人気のある内科などは報酬を抑える。
ただしこれにも穴があります。
どんなに報酬が高くても、最終的に開業してクリニック勤務になれば手術はできません。
だからこそ大学病院や市中病院における外科勤務に別格の待遇やインセンティブを用意する必要があります。
たとえば、住宅手当、時短制度、学会参加補助、子育て支援・・・そういった「生活の質」に直結する優遇もセットで整えるべきです。
結局、「医師が足りない」のではなく、「必要な場所に必要な医師がいない」というのが、日本の医療の本質的な課題です。
これは患者だけでなく、現場で働く医師にとっても不幸な構造。
そして、その構造を変えるのは、教育制度、報酬制度、社会全体の“覚悟”です。
「医療は崇高な志だけでは回らない」
でも、「崇高な志を支える制度は作れる」
そんな未来に向けて、小さな提言でした。