~私立探偵コジマ&検察官マイコのシリーズ~
Vol.4‐②
検察官である麻衣子と私立探偵のオレが、それぞれの情報をシェアするのは、完了までに膨大な時間を要する。
それでも今夜は、最重要状況証拠からの推理だけに留めたので、2時間余りで一旦終了し、麻衣子とオレは二人で食事に出かけた。久しぶりの外食デイト。
麻衣子の作る地中海料理は、ポルトガルの家庭の匂いがして、古民家改造和モダン戸建ての内装とのミスマッチが、オレは密かにお気に入りの時間なのだが。さしずめ、南蛮の御馳走に舌鼓を打つ高山右近か大友宗麟みたいではないか🎵
【カルパッチョとパエリアの南蛮料理専門店】という長ったらしい名前のカフェレストラン。個室が1つだけ開いていた。
オレはセルフでクラフトビールを2杯運んだ。イカ墨で真っ黒けな、アルゼンチン赤海老とムール貝のパエリアを、麻衣子の平皿にも取り分けてやった。
麻衣子はにっこりして『ありがと』とは言ったが、あまり頓着せずにまた、仕事の調査内容の続きを始めた。
「黒田玲苑のデビューは1999年。16歳の時。事務所は大手〈たなべカンパニー〉。作詞・作曲・編曲もしているが、時々single曲でも他人に提供してもらってる」
「麻衣子。けど黒田玲苑は、噂レベルでゴーストライターが居るって話だぞ❔ヒカル君が言ってた。
それに『緑山塾』研究生から俳優としてが、デビューの最初なんだ」
「知らんかった。あ、けど彼はよく、5ちゃんねるやヤフコメとかSNSで、良からぬ噂で時々炎上してるみたい」
「らしいな。とっくの昔に入籍した相手が居るはずなんだが、定期的に同じグラドルと結婚か破局の記事が出てるんだ」
「報道らしからぬ、ニュースの曖昧さ、だよね❓
本当の真実とデタラメが、混在している。
しかもラジオでは、いかにも独身みたいなコンビニ唐揚げやカットキャベツ袋ごと食べてる話、わざと侘しそうな感じ出してるって、私の友達が言ってた」
「とにかくな、直接確かめてもウソかホントか分からんレベルの隠し事、あの黒田って男はいっぱい有りすぎや。
BL(ボーイズラヴ)の疑惑だけは、被害者追っかけまわしてる事実で払拭されたけどな」
「そやけど、なんか嫉妬深すぎる感じ。
なんか、思い詰めてヤッチマいそう。あたし苦手」
( ̄∇ ̄;)ハッハッハ。
「かもな。麻衣子はチョーゼツ切り替え速ええ女だし」
「忘れた頃に、昔くれた花束とかの経費請求されそう。。。」
「、、、オイオイ。黒田玲苑は、あれで超人気シンガーソングライターなんだぞ❔ファンに激おこされるZO」
「うわっ妄想彼女のファン。
友達に成れへんタイプぅ~」
「麻衣子はキライなタイプには、人気があってもケチョンケチョンに貶してくれるんやなぁ。。。」
「そう❓【Out Of 眼中】ってそういう事よ」
「被害者の美咲さんも、似たような事言ったよ。
キライではなくってもスノボ中心の生活に、眼中にない男性のアプローチなんて必要ないし。つれなく映ってもしかたないって」
「なんかさあ、ああいう万人受けするルックスのイケメンって、個性が分かんなくって、興味持てないな」
「魅惑のイケボでも❔」
「うんうん。ヘヴィメタルでもないのにあんなにKEYの高い声。しかも鼻声。TVでは好感度高いらしいけど。私、あかんわ」
「そっか。河隅美咲さんも『あかんわ』らしいよ。
彼氏のGENTO君ってのが、無口で、地を這うほど低い声で、仕事上はしゃべるけど、ふたりで居ると口数少なくって受け身なリアクションなんだって。
笑顔だけど、聞き取れないくらいにボソッとモノ言うらしいんだ。それが心地好いんだって。
女に積極的な黒田玲苑は【パリピ系】に観えて深入りしたくないって、ハッキリ告げたよ、ここで」
「あらそう」
「とにかくな。芸能界やTV業界で永く生き残って来た感強いシンガーだし、知名度も高い分だけ色んな疑惑も蔓延ってるよ。
人気の高い分だけなぁ、誹謗中傷もあるんだろう、ね」
「そうみたいね」
「けどな。信憑性高い疑惑の噂もあるぞ♪」
「どんな❓」
「あ、ありえないくらいに現実問題信じられない話。
だけど、これが本当の真実ならば、全て解決できそうだし、オレも腑に落ちる推理が成立するんだ」
「えっ❓どんなどんな❓」
麻衣子がテーブル越しに身を乗り出して尋ねる。
オレは少し得意げにひと息入れて、ゆっくりと告げる。
「黒田玲苑は一卵性の双子で、全くソックリな片割れがもうひとり、日本のどこかに生きてるんだよ」
麻衣子は絶句して、カルパッチョのカンパチ一切れを、箸から皿に落としてしまった。
「黒田紫苑(クロダシオン)って名前なんだ」
ーーー to be continued.