~私立探偵コジマ&検察官マイコのシリーズ~
Vol.4‐①
2階〈和モダン部屋〉の扉を開けて入室して来た、麻衣子。
その瞬間は真っ赤な形相で息せき切って、警視庁鑑識課の京極清次からのリークを喋り始め、小嶋雅哉の蔵王ゲレンデ・エリア情報に、驚愕したばかりだ。
だいたい表現が大げさな麻衣子ではあるが、自分が難事件の被害者みたいに慌てているので、とりあえず、落ち着かせてやろうと雅哉は考える。
「真希ちゃん。すまないが、そのコーヒーカップ片付けついでに、オレのお代わりと麻衣子のあったかいミルクティー、頼んでおいて❔
それで、政之叔父に運んでもらって。真希ちゃんは3階で、さっきまでの議事録をまとめて来てよ。頼むよ❔」
「わかりました。お二人にしときます」
「悪いな。ありがとう」
察しの良い経理の真希ちゃんが、ヒカルこと輝美や河隅美咲らのコーヒーカップをまとめ、階下のカフェへ降りて行った。
麻衣子が、ソファに座るや否や、話題の続きを切り出した。
「あの『凶器がない武道館傷害事件』の新展開
宮城でも山形でもない蔵王エリアで、血液の飛沫が飛び散ったメンズのスキーウエアが見つかったの
〈白石蔵王〉に新幹線の〈やまびこ〉が停まるって、本当」
「本当だ」
「その白石蔵王駅のコインロッカーで、ブツが見つかったの」
「、、、なるほど。どこから情報❔」
「鉄道公安警察から、警視庁の鑑識課の京極さんに連絡が入ったの。別件で。福島県」
そこまで一気にしゃべり、まだ肩で大きな息をしている。
「ちょっと落ち着け、麻衣子」
「あ、ハイ。ありがと。これね、この件ね、事故扱いでネットでも武道館が4月末まで使えないってね、バズってる件やけど、これね、アレよ。この被害者、傷害で訴訟出来るの。京都の子」
「今わかったよ。なんでめっちゃ焦ってるか。
事故処理の示談じゃなくって、傷害で訴えられるんけ❔」
「そうそう。その子、来てたんでしょ❓ここに」
「そうや」
「納得してる❓本人は」
「いや。意識が無いうちに京都の病院に運ばれてたらしい。
んでも。ボードのメーカーの手配らしいし、ちょっと話せない事情もあったんだ。確かめないとね」
「何を確かめるの❓」
「加害者の事や。調査依頼に切り替わるから、あとで話すよ」
「わかった」
ようやくひと息入れて、麻衣子は自分でミルクティーとコーヒーお代わりを取りに、階下へ降りて行った。
喉が渇くほど、息せき切って伝えてしまいたかったのか。
「この件の捜査、まだ諦めてない人がいるんだ。警視庁の谷警部。警部から受注したんだが、オレ達は被害者のフォローの方が大事だし、そっちで受けるつもりだ」
「私も、被害者が訴えれば、起訴で裁判できる立場よ❓
その谷警部とは別で、鑑識課の京極さんが、私んちの大家さんの息子なんだけど、訴訟が来てないか?って。勝てるよって。
3日前に届いて、今鑑識で検査中なんだけど、それが被害者の血痕とは判明してるけど、加害者の血液はまだ、収集出来てない。決定的な物的証拠には成るけど、逮捕状出ないとね」
「スキーウエアのサイズは❔」
「メンズのXL。身長は175cmから185cmくらい。横幅はOサイズ対応のダボダボに余裕はあるって」
「メンズのXLなら、めちゃめちゃでっかい奴や」
「あ、でもスノボは”ガボッとめ”に着るらしいよ?
京極さんもスノボ初級者なんだって。171cmだけど太ってるからXL着て大丈夫って」
「へえ」
「それにそれに。しかも黒一色のレンタルスキーウエアだった」
「どこのレンタルショップ❔」
「白石蔵王ゲレンデの。一番下のレストハウスのレンタル・コーナーの」
「そこからアシが付いたんけ❔」
「そうみたい。1週間も返却が無かったから、鉄道公安に駅のコインロッカー管理部署へ問い合わせたんだって」
「それでか。で❔1週間以上ロックされてる番号を解除して、発見。なんだね❔」
「そう。そのとおり。事件性があるって事で、警視庁に連絡」
「なるほどね。まあ飲めよ、紅茶」
「ありがと」
「麻衣子。こちらも新事実発覚だ」
「どんな❓」
「被害者の河隅さんと、黒田玲苑の関係だ。
夕方まで、河隅美咲さんがヒカル君と来てたんだ」
「それで❓」
「まあ、待て。
ちなみに、河隅美咲さんには『GENTO』っていう名の恋人がいるんだ。『フランドル』ってバンド知ってるか❓」
「ぁ、、、っと。聞いたことある。『フランドル』ってヴォーカルが俳優も演ってるヒトでしょ❓」
「らしいね。知らんけど。
そのバンドのギタリストだそうだ。デビュー前からの昔馴染みで、付き合ってるそうだ。だから、黒田玲苑は彼氏じゃない」
「そっかぁ。。。あっ待ってちょっと」
「なんや❔」
「その『フランドル』ってね、たしかYouTubeとか生配信で人気出て、今度武道館で演るんだよねライヴハウスから地道に活動しててね、とうとう武道館まで辿り着いちゃったのよ」
「いつ演るの❓」
「4月のゴールデンウイーク最初」
「えっ、、、てことは。。。」
「それよ中止になっちゃうのよ
四月末まで武道館使えないもん」
オレはCOUFUSIONして来た。オレの頭ん中グルグル。
これは、ひょっとしてめっちゃ大きな組織も動いた事後処理なのか。。。ヤバイ。ヤバい一件や、これ。
オレもとりあえずもう一杯のコーヒーを口にしたが、麻衣子も顔色が真っ青だ。赤く成ったり青く成ったり忙しい奴だが、麻衣子はいつも、こうやってデカイやばい一件を引き当ててしまうのだった。
ひとつ言える事は、、、黒田玲苑の所属するエージェントはめっちゃデカい組織で、GENTO君とやらと美咲ちゃんは、めっちゃ弱い立場なのだ。
どうする探偵引き受けて大丈夫か❔
オレの頭の中も珍しくガチャガチャ動き始めた。
待て待て。あの二人の経緯を話してみては❔
検察官マイコ君が頼りなのだ☆彡
ーーー to be continued.