家電量販店に行くと
気がついたら 鍵盤の前に立っている
エレクトーンやテクニトーンじゃなくって
カシオだっだりするけど
電源つないであったら
シロクロの鍵盤を触ってしまう
幼い頃 YAMAHAで覚えた
課題曲は
勝手に 両手が動くのに
大人になって 覚えたPOPSは
音程を 拾って
おぼつかない
でも TEENAGERの頃歌った
あのヒット曲は
コード進行を覚えていて
その場で弾き語りは
はずかしいけど
頭の中で その演奏が鳴っている
勝手に バンドアレンジして
ついでに タイコやベイスも鳴っている
LIVEのワンシーンが
瞳に映っている
いつのまにか 自分が
J・D・Souther や Jackson Browne に
成っていて
時には Janis Ian や尾崎亜美さんに
成りきっていて
その頭の中の音で
別世界へ ワープしている
でも 私が
100人以上の人前で
鍵盤楽器を弾いたのは
小学校の 合唱コンクールの時だけだ
「スケーター’s ワルツ」だった
グランドピアノだった
鍵盤が重くって
へたくそで 顔赤くなって
楽しむどころじゃない
楽譜どおりに弾くのが
せいいっぱいだった
手元を見ないでください
と、願った
私は オルガンしか弾けない
カッコ悪い手元
見ないで、と願った
最後に 私の合図で
発表曲の全てが終わった時
一瞬何にも音がしなくって
静か過ぎて怖かった
数秒後 拍手が来て
他のクラスと同じだけ拍手来て
ホッとした
そんな事があったのに
TVでYAMAHAのポプコンは
毎回 観ていた
優勝した歌は
いつかヒット曲に 成って行った
若い時にしか出来ない事
今優先してやりたい事
20代は没頭していた
スキーの大会で
たった一人で観客の前で
ゲレンデを独り占めして
3分間の演技を披露する
全日本では 3分間を4種目滑る
ピアノ弾くのと同じ
3分間だけど
あのコンクールみたいに
カッコ悪い「せいいっぱい」じゃなかった
観客も3万人 観ている
次の選手が 目当てだろうけど
同じ3分間
なのに ドキドキしなくって
怖くなくって
楽しかった3分間だった
音楽では
何者にも成っていない
けど 音楽が
私をSKIERにしてくれた
コブコブだらけの急斜面に行けば
シンコペーションや
スタッカートばかりの 細かい楽譜の歌が
私の心を沸き立たせる
ゆったりリズムの平らなゲレンデでは
バラードが鳴っていて
なぜだか いつも
FENDERのローズの音だ
私のBPMは速くって
苦手な大回りパラレルターンを
助けてくれた
FENDERのROSEの音
手にしたモノは違うけど
何者かに成った自分は それがいい
だけど 鍵盤楽器さわると
その事を思い出す
だから なのか
なのに なのか
眼の前のシロクロの鍵盤は
カシオのキーボード
電気屋さんの鍵盤なのに
コード進行を奏でると
FENDERのROSEが鳴っている
頭の中で
あの音が鳴っている
ときどき鍵盤触ると
気分が落ち着く
心地好い疲れといっしょに
公休のぼんやり時間
FENDERのROSEが 鳴っている
ブロンド・テリーでも
ブラックのストラトでも なくって
FENDERのROSEが鳴っている
おぼつかないけど
頭の中は 鳴っている