演奏での呼吸、ブレスについて、レッスンで生徒さんから相談を受けることが多いのですが、
こう指導されました、とよく伺う言葉があります。
「ブレスの度に毎回たくさん息を吸いなさい」
「その時、肩を上げてはいけない」
なので生徒さんたちは、「肩を上げないように毎回たくさん吸うことを心がけている」とおっしゃいます。
私がフルートを始めたのは10歳です。
当時、細っぴだった小さな女の子が大人と同じサイズのフルートを吹くのは、たぶん大変です。
本人は意識せずとも、毎回のブレスは一生懸命にたくさん息を吸おうとしていたと思います。
ところが、私は「たくさん息を吸うように」も「肩を上げてはいけない」も、恩師に言われた記憶が無いのです。
いつも気をつけなさいと指導されたポイントは、次のような内容です。
「次の音はどんなふうな音色を出すか」
「次のフレーズの雰囲気はどうしたいか」
「和声を感じてその中に音を馴染ませたり、自分がその和声の展開を明示するように」
「ひとつ目の音よりも、その先に続く音楽の流れを先取りしながら吹くように」
今思えば、演奏にとって本当に大切なことです。
子供でも理解できるように伝えられたからこそ、記憶に強く残っているのだと思います。
（ほんとに、恩師には感謝です！）
さて、このように音楽的にとても大切なことを意識していたので、
肩が上がるのがどうのこうのと気にしている暇は無かったのかもしれません。
曲によっては、
「このフレーズでは可能ならばひと息で吹ききるために、ブレスは大きく取りましょう。」
という場面もありましたが、
毎回のブレスをめいっぱい吸わなければならない、とは教わりませんでした。
それよりも、フレーズの最後の音の処理や次のフレーズの音の乗せ方に気を配りました。
もちろん、いろんなケースがあるので一概には言えませんが、
ブレスの時に身体の動きに制限を加えるような意識をするよりも、
ブレスを音楽的な文脈から捉えて練習した方が、自然な音楽、自然なブレスになるのではないでしょうか。
少し前に演奏会で私の演奏を聴いてくれた管楽器奏者の友人が感想を伝えてくれました。
その中で、私がブレスの時に肩が上がらないことに感心したと言ったのです。
ちょっとそれが気になって、いま改めて振り返っているわけです。
「私は肩を上げないように」とは意識していなかった。
では、身体の使い方では何を意識していたのかなと振り返ってみると、おそらく次のようなことです。
・肋骨全体を柔軟に動くように
・腹筋も柔軟に動かして肋骨の動きを促す
・腕は効率的に空中に持ち上げ続ける
・腕のサポートは背中から
・身体の支えは体幹で
動きの解剖学を学び、息の動きは胴体の動きがカギを握っていることを理解しています。
息を吸うために肩を上げる必要がないことも知っています。
また肺活量には個々に限界値があるので、ただ満タンに吸うことを目指すより、フレーズに必要な息の量を考えます。
それにより、音色や音量と相談しながら息を吸い、息を使います。
私は、
音楽的な文脈でのブレスを優先することで、音楽に沿った身体の動きが生まれる
と考えています。
その時、肩の上げ下げを気にして身体を固めてしまったらどうなるか。。。
「肩を上げない」を意識する呼吸ではなく、
音楽に沿って身体を動かし、
最も柔軟に動いて欲しい肋骨の動きを意識する。
このほうがきっと、その次のフレーズが思い通りのものになると思います。
「肩を上げない」よりも「音楽的であること」を大切にしながら呼吸の探究をしたいなと思います。
次の記事は、ブレスと音色の関係について書いてみます。
〜こんな景色と澄んだ空気の中にいたら、
身体も柔らかくダイナミックに動いて、深々とブレスできそうですね〜
（6月上旬の上高地）
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嶋村順子
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